
多くの人がサステナブルデザインは非常に複雑、あるいは曖昧なものだと思っているようです。いいえ、全然そんなことはないんですよ。私の定義では、サステナブルデザインとは「シグナル」。「すべての生物種とその子孫を常に愛する」という意思のあらわれなのです。
そうはいっても「では、具体的にどうデザインすればよいのか?」と疑問に思われるかもしれないですね。答えはとても簡単。「これは『Cradle to CradleSM』的製品かそうでないか」と考えるだけでよいのです。
たとえば、デジタルカメラを例にしてみましょう。カメラの中に、小さなバッグが装備されていると想像してみてください。グリーンのボタンを押すと、そのバッグが出てきます。あとは使用済みのカメラを入れ、「ソニーに返却」と書いて郵便ボックスに入れるだけ。カメラはメーカーに送り返されるというストーリーです。返却されたカメラは、次の製品を生産するために再利用できます。そう、メーカーがつくるものはすべて最終成果物であると同時に、次の製品を生み出す栄養素でもあるのです。カメラはもちろん梱包材もそのような栄養素としてデザインし、確実に産業や土に戻すこと。これが『Cradle to CradleSM』という考え方です。どうです?そんなに難しいことではありませんね。
私は日本で生まれ6歳まで暮らしたのですが、当時、夜になると近所に牛車がやってきて汚水を収集し、農家に持って行っていました。汚水でさえも無駄にはならず、肥料として使われるからです。そして、朝には野菜、豆腐、肉、タンパク質を含む食材が家に届けられました。夜には汚水でも、朝には食べ物になるというわけです。このことは、私がサステナビリティに興味を抱くようになった原点であり、また、私の考え方に対して大きな影響を及ぼしています。
コンシューマー向けの製品をつくる世界のメーカーを見渡してみると、これまで同様、デザインがサステナビリティというテーマを牽引していることが分かります。私は、ハードウェアのデザインにおいて最初に『Cradle to CradleSM』を実現する能力のあるメーカーは、ソニーだと思っています。
ソニーは全社的な戦略として『Cradle to CradleSM』を採用することもできるのではないでしょうか。それは地球の住民であり続けようとする意志のあらわれであり、地球に価値ある遺産を提供することです。その戦略は製品やサービスに昇華され、21世紀初めのインテリジェンスの象徴となるでしょう。
先の例でいえば、すべてのソニー製品にグリーンのボタンをつければよいのです。これはソニーだからできること。いえ、ソニーだけができることといった方がよいのかもしれません。なぜなら、ソニーには売り上げやシェアにおいて世界のトップを目指すだけでなく、これまでもそうであったように、自分たちにしかできない何かに挑戦し続けるカルチャーがあると思うからです。コンシューマー製品におけるサステナビリティのグローバルな追求。素晴らしいことです。これはとても意義のあるチャレンジであり、チャンスであると思います。