
デザイナーとデザインには、サステナブル分野をリードするために必要なものがあります。それが5つのE。すなわち、Equality(平等)、Economy(経済性)、Ecology(環境保護)、Elegance(優雅さ)、そしてEnjoyment(喜び)です。
興味深いことに、これまでサステナブルデザインの運動は、産業デザイナーではなく主に建築家によって推進されてきました。おそらく、私たち建築家が「風景」に携わってきたことや、手がける仕事がより恒久的なものだからでしょう。建築家が発信するシグナルは、建築物を通して長い歳月のあいだ風景や人々に影響を及ぼします。必然的に5Eへの関心も高まろうというものです。
一方、産業デザインの世界は違います。短期間で新しい製品が登場します。次の製品はもっとよくなっていると期待もできます。そのためか、サステナビリティへの取り組みが十分でなかったと思うのです。もちろん、従来のデザイン基準でも、みんなが平等に楽しめる優雅で低価格な製品をつくることはできます。しかし、その製品にはエコロジー・インテリジェンスが欠けているのです。
『Cradle to CradleSM』のコンセプトを取り入れることで、これからの製品は5つのEを満たせるようになります。ここで大切なのは、Ecologyを楽しむためには他の4つのEも必要だということ。多くの人は一つひとつのEを分けて考えてしまっていますが、そうではなく、すべてのEをひとつに融合させなければならないのです。
デザインにおけるエコロジー・インテリジェンスの話をもう少し続けましょう。デザインの素晴らしい点は、それが人間の意志の発露であることです。意志やアイデアの閃きに、時間や空間といったスケールの制限はありません。
たとえばミクロのスケールなら「安全かつ健全で、地球にとってよいものを、どう分子レベルでデザインするか?」と考えることができます。より視野を拡大するなら「この製品をすべての世代にとって安全で健全なものとするために、何ができるか?」。さらにスケールを拡大することもできますよ。そこには地球があり、太陽があります。太陽には、人間のシステムを稼働させるために必要なエネルギーの、5,000倍の力があります。『Cradle to CradleSM』コンセプトは、このサステナブルな自然エネルギーを利用し、生命の成長とモノの再生に関わるすべてを、あらゆるスケールでデザインすることにつながっていくのです。
もちろん、明日にでもすべての製品をソーラーエネルギーに変えなさいというのではありません。『Cradle to CradleSM』は、むしろ"移行"の概念を重視します。ただ、そのためには自分たちが何を目指すのか、確かな方向性を持つことが大切だといいたいのです。それを戦略として持つか否かで、メーカーとそのデザインの未来は大きく変わっていくと思います。
デザインの最終的な問題は、「それによって世界は良くなるか?」ということです。これは単に「この形状因子で自分の世界が良くなったのか?」ということではありません。「実際に生活の質が上がったか?」ということです。