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深松:一眼レフカメラらしい色というと、どうしても「シックなブラック」のイメージがあります。しかし、それは「ジャーナリズムの道具は目立つべきではない」という、暗黙の了解があってのこと。エントリーモデルでは、もっとユーザーのライフスタイルを仕上げに反映させてよいはずです。
今回は、新規ユーザー層である女性を意識しつつ、男性にもマッチする色や質感を求めています。ゴールドやシルバーといったアクセサリー、携帯電話といったアイテムの質感にマッチすること。女性が好むバッグや服装などのファッションに対して、遜色のないこと。さまざまな観点で検討、市場調査による検証を行い、結果としてどんなファッションにもマッチするブラック、さらにプレミアム感のあるブラウンというカラーバリエーションを用意することになりました。
とはいえ、ボディ全体を単純に同色で塗り込んでしまっては、まったく面白みがありません。一方、コントラストの強いツートーンでは、個性がきつすぎます。適度な高級感を得るため、"α380"と"α330"は、カラーデザインの世界の言葉でいう「トーン・オン・トーン」、色に色を重ねるイメージで配色しました。ブラックも、メタリックなトップカバーと漆黒のシボ地を合わせることで、スタイリッシュな印象に生まれ変わります。ブラウンはさらにメタリック感を強調し、キットレンズも同色にすることで、よりラグジュアリーな雰囲気を演出しました。
カメラというと、撮影するシーンばかりを想定しがちです。しかし、実際には使わないときの方が、圧倒的に多いもの。カメラは、撮らないときも目に入ればうれしく、手を伸ばしたくなる存在であるべきですし、また、そうであってほしいと思います。そのための色と質感も、私たちはこれからの"α"エントリーモデルの提供価値と考えています。
高橋:一眼レフカメラの世界は奥が深く、プロ機材に精通したデザイナーがエントリーモデルもデザインするのが普通です。誰もが、初心者と知識のあるカメラ愛好家のニーズを両立させようと、工夫と苦労を重ねています。もちろん、そのようなアプローチは非常に重要だと私も考えていますが、一方で、今日のエントリーユーザーの気持ちや撮り方に寄り添った、新しい発想のデザインは生まれにくいのではないかとも思うのです。そこで今回は、あえて一眼レフカメラに詳しくないメンバーもデザインチームに迎え、客観的な視点から議論とマーケット調査を重ね、デザインの方向性や操作性のあり方を模索してきました。
こうして生まれた新しい"α"エントリーモデルは、確かに、これまでの一眼レフカメラのデザインとは違う方向性を示しているかもしれません。カメラに熟知した手には、物足りなく感じられる部分もあるでしょう。しかし、それは一眼レフカメラを手にするのを躊躇していた人々のことを考えた結果のひとつ。これからのユーザーと写真文化のために、必要なことなのだと考えています。
見た目にも小さく、シンプルにしたことで、誰もが身構えることなく"α"を手にとり、たくさんシャッターを切るようになる。偶然、想像もできなかった傑作をモノにし、「自分だけの傑作を、もっと狙って撮れるようになりたい」「そのためにも、カメラを理解しよう」というモチベーションがわいてくる。私たちが今回のデザインを通じて提供したかったのは、そういう「喜びの連鎖」です。もともとソニーには、プロダクトの先にある体験をデザインする、という基本ポリシーがあります。その意味でも、今回のモデルは、ソニーの"α"らしい提案と価値観にあふれたものだと自負しています。