機能だけでなく、デザインでも、これからのデジタル一眼レフカメラのあり方に一石を投じた、“α”Aマウント。新しいフォルムを生み出したデザイナーの意思と言葉に触れることは、“α”ブランドの未来を知ることです。




高橋:α77とα65は、フル電子化という、一眼レフカメラの新しいあり方を世に問うプロダクトです。これは「トランスルーセントミラー・テクノロジー」をはじめとする、ソニーの独自技術を集積して初めて実現できたシステム。一眼レフカメラの機械的・光学的な制約を、一挙に乗り越えられます。このような設計思想を持つカメラは、過去に例がありませんでした。
ソニーの技術力と独創性を示す、強い意志を込めたカメラです。それだけに、プロダクトデザインにおいても、新しい文脈を開拓したい。また、そうでなければならない。私たちデザインチームは、新津のディレクションのもと、新世代の“α”の姿を検討しはじめました。
新津:一眼レフカメラの構成要素は、レンズを除くと、本体、グリップ、ペンタプリズム部に大別できます。極端に抽象化するなら、大きさも形も違う3つの矩形の組み合わせです。それらを、いかに違和感なく関連づけ、ひとつのスタイルにまとめあげるか。これが、一眼レフカメラのデザインにおける、伝統的なアプローチでした。
しかし、そのハードルは想像以上に高いもの。組み合わせる要素が多いうえ、それぞれに求められる機能や、内部構造の都合も異なるからです。それらをいかに曲面でつなげたところで、恣意や作為が垣間見えてしまいます。
これは、デザインのアプローチそのものから変えないと、新しいデザインの文脈、次世代の“α”の姿は見えてこないということです。では、そのアプローチとは何か。私には、閃くものがありました。私たちデザイナーが「テンサイルスキン」と名付けた、独自の表現手法です。
新津:「テンサイルスキン」は、文字通り、「引張力のかかった表面」という意味です。例えば、タープテントをイメージしてください。天幕を見ると、ポールの部分に強い張力がかかり、シャープなラインが浮き出ています。そのラインを凹形状の曲面が結びますが、曲率は応力に則したもので、人が勝手に描けるものではありません。だから緊張感があり、かつナチュラルです。
外に張り出そうとする稜線。内に引き絞られるような曲面。力の方向がバラバラなのにも関わらず、それらが拮抗して生まれる姿は、モノフォルムであり、力学的な調和が感じられます。私の眼には、それが美しく見えました。この佇まいを一眼レフカメラに展開すれば、従来のデザインの文脈から離れられるかも知れません。「異なる要素をどうつなげるか」ではなく、「異なる要素を内包するモノフォルムを見つける」という、新しいアプローチなのですから。
このアイデアを検証するため、用意したのがストッキングです。さっそく構造検討段階のモックアップに被せてみると、その瞬間、凸凹だった「矩形の集合体」が、彫刻のようなモノフォルムに姿を変えました。内側から張り出すシャープなラインと、なめらかな曲面が響き合い、新鮮です。モノフォルムといっても、決して単純な塊ではなく、緊張感があります。この手法を突き詰めていけば、新しい“α”のカタチになる。そう私は確信しました。