いよいよ本格的なブルーレイディスク時代が幕を開ける。そう宣言するのがブルーレイディスクレコーダー「BDZ-V9」です。ありふれたはずのオーソドックスなAVデッキサイズでありながら、これまでにない新しさと高級感が伝わります。ソニーに受け継がれる「引き算のデザイン」の好例を、きっとこのモデルに見ることができるはずです。


大田:これまでブルーレイディスクレコーダーというと、2003年にリリースされた「BDZ-S77」が世界初であり、唯一のプロダクトでした。その「BDZ-S77」と今回のモデル、どちらも私がデザインを担当しています。「BDZ-V9」のデザインに着手した瞬間、前回、初めてハイビジョン映像を目にして受けた衝撃と感動が鮮やかに甦りました。「あの奥行きのある透明感や高精細さ、リアルな素材感を外観デザインでも何とか表現できないか」。そんな強い思いから、デザイナーとしても新しいチャレンジをいくつも試みています。
そのひとつが、ガラス材へのブルー蒸着処理です。このブルーは「ブルーレイディスクという新しいメディアの先進性や可能性の象徴」、そして「BDZシリーズのアイデンティティ」でもあります。それだけに、深みのある高級感や透明感がほしいと思いました。しかし、よく使われるブルー着色のアクリル材やブルーメタリックの塗装では、そこまでの表現力がありません。また、どんな設置のされ方をしても、その環境の中でつねに「機能的な色彩表現」ができる仕上げを探し、蒸着処理にたどり着いたんです。
「機能的な色彩表現」とは、たとえば「周囲の照明によって色が最適な表情に変化する」ということです。蒸着処理は、メガネやカメラのレンズなどの光学機器に使われてきた技術。素材そのものに着色するのではなく、透明素材の表面にコーティングを施し、光の反射色をコントロールするのが特徴です。ですから、明るいリビングでは「インテリアのアクセントになる鮮やかなブルー」、暗いシアタールームなどでは「映像鑑賞の妨げにならない控えめなブルー」というように、環境にあわせて色のニュアンスが変わる、私の求めたとおりの効果が得られました。また、いくら反射を強くしてもリモコンの赤外線はなんなく透過するという、優れた面もあります。
中村:私はビデオデッキなどのホームプロダクツのデザイン統括として、いろいろなAV機器を見てきました。それでも、これほど美しくて機能的なブルーは目にしたことがありません。蒸着処理の不思議な効果に加え、ベースにガラス材を採用したおかげで、アクリルよりはるかに透明感と平滑性のある仕上がりになっています。調色も難しいのですが、何十種類も試作して、デザイナーのイメージする色合いに近づけました。おかげで、ミニマルなボックスの中に、伝統的でオーソドックスなブラックとシルバー、それに新しいメディアを象徴するブルーがうまく調和しています。
これほど大きなパーツの蒸着処理は決してカンタンではありませんが、苦労しただけの効果はあります。映画『007 カジノ・ロワイヤル』をご覧になりましたか?主人公のジェームズ・ボンドがホテルの警備室に忍び込み、監視カメラのアーカイブ映像を盗み見るシーンがあるんですが、薄暗い部屋の中でブルーレイのデッキが何とも神秘的な輝きを放っているのに、気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんね。