

新津:最初にフローティングデザインの着想を得たのは、2000年だったと思います。ガラスのスタンドにプラズマテレビを載せてみたことがあるんです。すると、思いがけないほど浮遊感のある、新しいテレビの姿があらわれたんですね。それがとても印象的で、「この軽やかさをスタンドなしでも表現できないか」と考えるようになりました。
ただ、その頃はいろいろな常識にとらわれていましてね。大画面なだけに、セットとしては小さくしないといけないのではないか…そんな先入観にとらわれていたんです。本体だけでフローティングデザイン、しかも小さく。その矛盾をどう整理しても、なかなか自分で納得できるアイデアが湧いてきませんでした。コンピュータの画面上でスケッチをいじっては、アレコレ試行錯誤したものです。ところが、あるとき、何気なく画面周りの枠線をヒュッと外側に広げてみたら、「なんだ、できたじゃないか!」(笑)。まさに一瞬ですよ。つまり、ベゼル周りに透明なエリアができあがり、画面が浮きあがったんです。「壁掛けなんだから小さい必要はないんじゃないか?」・・・このちょっとした発想の転換がキーだったんですね。まさに一瞬でフローティングデザインができあがりました。
今回の<ブラビア>は、「このフローティングデザインをどう進化させるか」というテーマへの、私なりの回答です。これからも、このコンセプトを変えるつもりはありません。その必要がない。もちろん、もっと魅力的なデザインが出てくるまで、の話ですが。


土屋:私たちのような仕事をしていると、「今のデザインに飽きちゃったから変えてください」とオーダーされることも多いのですが、そのたびに「そうじゃないだろう」と心の中で思っていたりするんです。人間の生活がコロコロ変わるわけじゃないし、普遍的な部分もあるはず。本音を言えば、私たちは、ひとたび確立したデザイン・アイデンティティを変えたくありません。それを守りながら進化させたい。その意味では、今回のフローティングデザインはソニーにとっての王道でした。さまざまな可能性を探るためのコンペが、それを証明する結果になったわけです。
トップのお墨付きがなければ、X2500シリーズも普通ならここまでできません。リモコンの受光部は、「透明部に受光デバイスが見えるのは許せない」という新津のひと言で、特殊な光学系の処理をしています。アクリルパネルの縁取りは、アルミニウムを押し出し加工したもの。こんなに大きいパーツをゆがみや隙間なく仕上げるのは、実は大変なことなんです。交換可能なベゼルは全面にエンボス加工が施してあります。これはスピーカー部だけが目立たないようにする配慮なのですが、成型品だけに、金型のトラブルを考えると本当は避けたいデザインです。
しかし、「コストがかかるから」「ライン生産が難しいから」、そんな話は一切ありませんでした。ここまでデザイン側の無理難題を解決してしまう設計も、すごいんですけどね(笑)。