薄くて大画面というデジタルコンパクトカメラをリードする、サイバーショットTシリーズ。「DSC-T700」と「DSC-T77」は、その真骨頂とも呼べるモデルです。スライド式のレンズカバーを含めても薄さは15mmほど。デザイナーたちは、その薄さをミニマムなデザインで語りきってみせました。




政光:サイバーショットTシリーズの歴史は、2003年にリリースした「DSC-T1」にはじまります。大変なヒット商品で、デジタルカメラ市場におけるソニーブランドの技術力と存在感を強くアピールしたモデルでした。
人気の理由のひとつは、最薄部で17.3mmというボディの薄さにありました。しかし、スライド式のレンズカバーを含めると、実際の外形寸法は奥行き約21mm。レンズカバーの裏側にスライド機構を備えているため、それだけの厚みがどうしても必要だったわけです。
デザイン上のアイデンティティであり、使いやすさのポイントでもあるスライド式レンズカバーを継承する。そのうえで、セット全体の厚みを20mm以下にそぎ落としたい。これが、当時からTシリーズ開発者にとっての悲願でした。
それだけに、今回のプロジェクトは「満を持して」のスタートです。新開発の光学防振レンズユニットは非常に薄く、内部構成にまったく無理やムダがありません。これなら「いかにして薄く見せるか」という難題に煩わされることなく、より純粋な気持ちでデザインと向き合えます。久しぶりにソニーらしいプロダクトが生まれるという確かな予感がありました。
隅井:元々、「側面に巻き込むレンズカバー」というアイデアは、数年前からデザイン側から提案してきたカタチの佇まいです。それを設計者がこつこつと実現に向けてスタディーしてくれたお蔭で、今回このモデルの完成に至りました。当初はサイドの巻き込み部分にスライド機構を持たせることで薄型化を狙っていました。
しかし、薄型化にも功罪があって、これだけ小さく薄いと逆にセット全体がチープに見えてしまうのです。そこで、内部構成の薄さを素直に活かしつつ、プロダクトの価値観を高めるため、細部の作り様に注力しました。
ポイントは、「精度」です。たとえばボディ上部に見られる、外装の合わせ目。トップのカバーと前後のキャビネットが、同じ面のなかに違和感なく収まっています。これにより、セットとしての緻密さや密度感を表現しているのです。話は簡単ですが、実現するのは容易ではありません。キャビネットはステンレスで、剛性が高いぶん加工精度の確保が難しいですから。普通なら、精度のバラつきを見込んで、面を揃えずにデザインするところでしょう。ここは設計者が非常に苦労して実現できたところです。
懸案だったレンズカバーは、わずか0.8mmという薄さです。さらに、その裏側、レンズ部の突起に干渉する部分などを切削し、本体とのクリアランスをギリギリまで切り詰めています。これは、セットとしての一体感を表現するため。剛性が気になるところですが、カバーの左右に曲げ加工を施し、エッジを立てることで強度を高めているのです。