
石井: 私たちデザイナーは、一本のライン、ひとつの面にもメッセージを込めて、プロダクトを世に送り出しています。それがマーケットにきちんと届いているかは、デザイナー自身が責任をもって本来もっとも注力すべきポイントです。ところが、現実的には情報のリレーをしていくうちに、デザインや その商品性の本来の意図とは違った方向性のプロモーションになってしまうケースもままにみられます。そこで、実際にモノをつくっている現場からマーケットまでの橋渡しを強化したいと考えていました。
そこで、プロダクトのデザイナーがプロモーションにも積極的に携われる体制が用意され、私がその任にあたることになったのです。今回のプロジェクトであれば、我々のデザインチームが生み出したプロダクトデザインの造形のポイントになるような部分をきちんと表現したり、カラーのコンセプトを正確に伝えること。それがブランド力の源泉になるはずだと信じて、イメージカラーやカタログの構成、ビジュアルの表現を一つひとつ決定していきました。
また、テレビCMや電車などの交通広告などのダイレクションの現場に深く関与できたのは幸いでした。今回のTシリーズの国内プロモーションでは、タレントを起用しています。しかし、タレントに依存することでモノの魅力が正確に伝わらなくなってしまうと、本末転倒かと思います。うまくタレントの個性を引き出し、効果的に、かつ正確に商品のデザイン性やカラーの魅力と結びつけることが大切です。そういった形で商品の魅力を確実に伝えることで、さらに商品性を高めたり、「ソニー=カメラブランド」というポジションの確立にも結びつくと思うのです。
また、ケースや防水パックなども、新しいTシリーズに合わせて刷新しています。本体だけでなく、アクセサリー群も含めて今回の新サイバーショットTシリーズの魅力が深まったと考えています。


政光:今回は、久しぶりにソニーらしいプロダクトをリリースできたと思います。ソニーらしさとは、プロダクトそのものに強さがあること。尖っていないプロダクトデザインや説得力のないプロモーションは、プロダクトへの自信のなさを吐露するようなものです。
「DSC-T700」も「DSC-T77」も、その点をきちんとクリアしています。「DSC-T1」以降、高画素や大画面、コンパクトさを標榜するカメラは少なくありません。薄くないのに薄く見せるためだけの造形や加飾にのみ走ったモデルもよく見かけます。おかげで量販店のカメラコーナーは、独特のにぎやかさです。しかし、Tシリーズは一線を画したい。余計な線や面を加えるのではなく、技術的なバックボーンに裏付けられたシンプルなデザインで、存在感をアピールするべきもの。これからも、そんなカメラであり続けたいですね。
また、今回の薄型化で、Tシリーズは本来の価値を取り戻すことができました。ソニーには、他にもWシリーズのデジタルスチルカメラやαブランドの一眼レフカメラなどもありますが、「薄いから持っていける場所」があると思うのです。そうなれば、当然、撮れる写真もちがうでしょう。そんなTシリーズの楽しさや使命を、これからも追求していきたいと考えています。