

高橋: グリップにしてもそうなのですが、GUIはもちろん、ボタン位置や操作性まで「触ってこそ」「使ってこそ」価値が伝わるという部分をいかに盛り込むかは、私たちが背面液晶モニターに「クイックナビ」という機能を搭載しました。これはカメラの撮影機能がどう設定されているか、モニター上でひと目で確認・変更できるものです。
これまでのデジタル一眼レフカメラでは、液晶モニターは、画像確認、つまりアフタービューが主な役目でした。モデルによってはカメラ設定状況を表示できるものもありますが、しかし、このクイックナビがひと味違うのは、ファンクションボタンを押すと、ジョイスティックで意図した機能をダイレクトに選択し、ダイヤルでスムーズに設定を変えられるところにあります。これまでの一般的な一眼レフカメラのように、何かひとつ設定を変えるために、わざわざメニューを経由して操作する必要がありません。カメラの状態の確認から、撮影した映像、各種設定まで、同じ画面上でシームレスに、それも同じ操作感でできるわけです。カメラを縦位置に構えれば自動的に回転表示しますし、ファインダーを覗けば自動消灯します。
中級機では、操作のスピード感や応答性が重要です。クイックナビのように、表現者の意図をダイナミックに反映できるインターフェースこそ、使う人の気持ちに届くのではないかと期待しています。

林: 一般に、このクラスのデジタル一眼レフカメラでは、これまでの銀塩一眼レフカメラの流れを汲み、上面に液晶表示パネルを装備しているものが多いと思います。しかし、実際の撮影シーンではファインダーを覗きながら操作することが多いし、三脚を使ってアイレベルでカメラを構えた場合も、上面表示パネルは見にくく、実用性に欠ける場合もあります。それより、大型の液晶モニターを装備するデジタル一眼レフカメラの在り方を考えれば、設定から撮影した画像の確認まで全ての情報を背面液晶モニターでできた方が操作の流れとしても自然という考え方もあります。ならば、上面表示パネルを廃し、よく使うボタンを、いちばん使いやすい場所にレイアウトした方が合理的です。造形としてオーセンティックでも、こういう発想がソニーらしいところかもしれません。もちろん、これは「α700」の場合であって、ターゲットやボディサイズによって最適化することはあるでしょう。ただし、基本的な操作の概念やボタン配置は継承していきたいと考えています。

高橋: 画像確認についても、ひと工夫あります。通常は表示画像の大きさを重視た全画面表示、あるいは各種データ表示とヒストグラムの表示になり、前後の画像との比較はインデックス表示でないとできない仕様です。せっかく連続撮影やブラケティング撮影ができるのですから、より直観的に前後の画像と比較できた方が便利なはずです。そこで、メイン画面と複数のサムネイルを一度に表示できるようにしました。
ユーザーインターフェースをここまで煮詰めるまで、相当な議論がありました。何せスタッフが皆、カメラファンですから。マニュアルフォーカスの二眼レフを愛用する人とか、それぞれ一家言ある者同士が集まって「自分たちで一眼レフカメラを開発できる」となれば、どんな議論になるか、容易に想像できますよね。たとえば、モードダイヤルをどこに置くか、レリーズボタンやジョイスティックの位置や感触の微調整、ダイレクトに押せるボタンはどれにするか、というレベルの話までカスタマーの立場に立ってシナリオを作り、整理していくわけですからね。議論が百出した中から見えてきた結果が、この「α700」に集約されています。ヘヴィな議論の連続でしたが、それが実際に使ったときに実感できる価値や愛着に置き換わってくれればうれしいですね。