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Feature Design High Definition "Handycam" HDR-TG1
[ 2008.4.30 up ]

メッセージにあふれた、シンプル・デザイン

これまでの"ハンディカム"とは一線を画す風格。しかし、見る目のある人にとっては、明らかにソニーのプロダクト。ポケットに入るハイビジョン"ハンディカム"、「HDR-TG1」の第一印象です。シンプルでありながら、見つめるほどに発見があり、手にするだけで喜びが湧いてきます。デザインが機能を伝えるだけでなく、それ以上の価値を生むことがある。そんなソニーデザインの、新しい象徴の誕生です。

新津 琢也氏
新津 琢也
ソニー(株)
クリエイティブセンター
チーフアートディレクター
高木 紀明氏
高木 紀明
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー
市村 武士氏
市村 武士
ソニークリエイティブワークス(株)
デザイナー

時代が、デザイナーの夢に追いついた

新津:私はこれまで、主にテレビのデザインを手掛けてきました。でも、カムコーダーを担当したこともあるんですよ。もう17年ほど前の話ですが。当時から「ポケットに入るカムコーダー」は私の夢。それをついに実現させる、しかもハイビジョン"ハンディカム"と聞いて、高揚した気持ちでプロジェクトに参加しました。

そのときすでに、「HDR-TG1」には原点といえるデザインがあったんです。それが、高木がつくっていたイメージモックでした。当時のことだけに「"サイバーショット"の動画機能を切りだした」レベルの内容でしたが、ポケッタブルで、佇まいがいかにも"ハンディカム"らしい。さっそく、今回のプロジェクトでも高木に担当してもらいました。もちろん、私も黙って指をくわえて見ているわけにはいきません。「一緒にやらせて。」と、相当な世話焼きおじさんになってしまいました(笑)。

高木:オリジナルモックにこだわらず、基本的な形からデザインを検討し直しました。結果として縦型に決めたものの、当初はレンズの存在感を強調するために、鏡筒部分は円筒形だったんです。ところが、新津は「鏡筒の側面を削いでしまえ。」という。私も、"ハンディカム"のベテランデザイナーたちも、「円筒形の方がカメラらしい。」と主張したのですが…。

新津:逆に私は、それで「削ぐのが正しい。」と思ったんです。ベテランの感性と違うということは、「新しい考え方」ということですから。カメラを担当しているデザイナーが、レンズに価値観を見出すのは理解できます。しかし今回はポケッタブルで、薄く見せることが最優先。実は、私がずっとテレビ担当で、鏡筒を円筒で表現することにこだわりがなかった、ということもあったのでしょう。

スリムなボディの細部に、物語は宿る

高木 紀明氏

高木:これほどコンパクトなプロダクトだと、ただストロボやレンズをレイアウトしただけでは、"ハンディカム"の単なるミニチュア、玩具にしか見えないんじゃないか。そうではなく、精緻な光学系のオーラをしっかり醸し出したい。その想いをレンズ部に凝縮させました。

鏡筒が円筒形でないからこそ、正面から見たとき、レンズは絶対に丸く見せたいと思いました。ところが、このサイズで何の工夫もしないと、画面の四隅が露出不足になって暗くなってしまうんです(ケラレ現象)。実物を見ていただければわかりますが、一眼レフカメラの花弁型フードのような造形になっていますよね。円形の部分に切りこみを入れ、さらに内側へと絞り込むように傾斜させ、レンズの直前にレンズカバーをレイアウトする。レンズ部を丸にすることにこだわらなければ、これほど複雑な造形はいりません。ここは、私もギリギリまで粘ったところですね。"Carl Zeiss"などのロゴプリントも半端じゃありません。設計者が「この傾斜にプリントするのはアルペン級の厳しさだ。」と頭を抱えていましたから。

一方で、ストロボの処理にも気を配っています。鏡筒の横にコブのようにレイアウトするのではなく、レンズと一体感のあるデザインが今回の私のテーマ。試作を重ねた結果、ストロボのフレネルレンズもデザイン要素と考え、レンズの全周にあしらうことにしました。最近の高級車のヘッドランプも仰々しいデザインでラグジュアリーな雰囲気を演出していますが、ちょうど同じ発想ですね。

シンプルで高品位な佇まいを実現するため、液晶モニターのヒンジにも工夫しました。普通なら固定部と可動部のあいだに"切り欠き"みたいなラインが見えます。それをどうしても消したくて、新しい保持の仕方を考え、いくつものデザインと試作を行いました。設計的にもかなり頑張ってくれたところです。

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