薄さわずか9.9mm。"ブラビア"「KDL-40ZX1」は、世界最薄(※)の液晶テレビです。しかし、実際のプロダクトを目にすると、そのようなスペックやファクトを忘れさせる、純粋な驚きがあります。それがデザインの力。「KDL-40ZX1」を前に、これからのテレビは、もう数値で薄さを誇ることの意味を失うかもしれません。
※民生用液晶テレビとして。最薄部のみ。2008年8月28日プレスリリース時点


松岡:「KDL-40ZX1」は、「もっと薄い液晶テレビを」というニーズへの、決定的な回答です。最薄部はわずか9.9mm。これは新開発の「エッジライトLED」システムによって実現されました。このシステムは白色LEDをパネルの周囲に配置するもので、パネルの背面にバックライトがありません。そのため、従来にない薄型化を実現できるのです。
また、これまでの液晶テレビは、パネルを金属のシャーシで支え、さらにモールドの外装をかぶせるのが普通です。これだと、ベゼルとパネルの面を揃えることができません。目立たないようデザイン処理しているものもありますが、よく見るとベゼルとパネルに6mmくらいは段差があるもの。それに対して「KDL-40ZX1」は、パネルとフレームが、ほぼフラットな面に収まっています。これは、フレーム部分がシャーシと外装も兼ね備えているおかげです。
このように技術的なタネも仕掛けもあるテレビですから、誰がデザインしても薄くはできます。しかし、だからこそ、その薄さを「どう表現するか」が問われることになるのです。どうすれば、より強いメッセージを放てるか。ソニーらしさを表現することができるのか。私は、最も信頼するデザイナーのひとり、久保田にこの難問を託すことにしました。
久保田:開発者が用意したデモ機を、はじめて目にしたときは驚きました。非常に薄くて、正直「これが本当に映るのか」と思ったくらいです。そこにパッと映像が浮かびあがったときの驚き。常識を超えたものに出会った感動。それを素直に、いちばんシンプルな形で表現したいと考えました。
久保田:デモ機を目にした第一印象は、「光る板」。私は、それをさらに薄い「光る紙」のように表現できたら面白いと考えました。フレームのエッジを鋭角にデザインしたのは、このためです。こうすると、プロダクトを斜めから見たとき、厚みがまったく感じられなくなる瞬間が生まれるんですよ。まさに、「紙が浮かんでいる」ように。
このアイデアの成否は、フレームのエッジの切れ味にかかっています。しかし、通常の絞り加工では、どうしてもエッジがだれてしまい、狙い通りのシャープさが表現できません。そこで採用したのが、アルミの押し出し材です。
このフレームは、プロダクトを見ても分からないのですが、実はかなり複雑な断面になっています。まず厚さが均一ではありません。薄いところでは約1mm厚で、ここはデバイスのベースとなる部分です。その他の部分は剛性に配慮して厚みをもたせています。エッジの部分はさらに肉厚です。普通、これだけ薄くて大きいプロダクトであれば、よほどシャーシの剛性が高くないと「しなり」や「ゆがみ」が出てしまうもの。あくまで結果論ですが、エッジを立てることでその問題を解消しているんです。薄いアルミを単純に直角に曲げただけでは、これだけの剛性は得られません。テレビのプロダクトデザインを数多く経験していると、このように意匠上のアイデアと設計上の必然性が、期せずとも一致することがよくあります。
特に大変だったのは、フレームどうしの合わせ目でした。この形状の押し出し材を斜めに裁ち落とすと、どうしても四隅にカドが立ってしまいます。ここの処理は、加工メーカーに何度も断られながらも、三次元的にかなり神経を使った形状を設計とデザインが一丸となって提案し続け、最終的にNC旋盤で削ることで、理想的な形状をつくることができました。