
久保田:私は、テレビとは、あくまでユーザーが「映像を見る」という行為のためにお求めになるものだと考えています。テレビというプロダクトそのものが欲しいわけではない、というスタンスです。ですから、なるべく軽やかで、リビングに溶け込むデザインが望ましいと心がけてきました。
そのため、「KDL-40ZX1」ではイルミネーションにも配慮しています。画面下のボタン表示は操作した時にだけ一時的にブルーの光を表示しますが、それ以外は映像に集中できるよう自動的に消灯します。このイルミネーションには透過光を採用しており、消灯時には「どこに表示部があるか」さえわからないでしょう。
さらに今回は、もうひとつの新しい試みとしてユニークなカラーバリエーションも用意しています。これは設計グループの発案によるもので、漆塗りで仕上げるものです。漆塗りの色は、カラーチップなどでは色指定できないもの。複雑な模様も、職人が手作業でつくるもので、同じものがひとつとしてない一品ものです。先進システムを採用したテレビと伝統工芸が、どのようなコラボレーションを生み出すか。結果は、私の想像した以上にうまくなじんでくれました。日本の家屋や伝統的な家具、漆器などとの相性もいいですね。
ソニーらしい黒とシルバー、そして漆仕上げのブルーとレッド。使う環境に合わせて選べることで、リビングとの親和性がいっそう高められたと思います。
松岡:今、液晶テレビの世界では「薄型化」が重要なキーワードになっています。各社薄型をキーワードにした商品展開を加速すると思いますが、今回の表現方法であれば、オーナーも数ミリの違いは気になさらずに、ご満足いただけることができると思います。
私は、ここにソニーらしさを感じています。ソニーでなければ、もっと違う薄さの表現を考えたかもしれません。あくまで想像ですが、「薄い側面を、フレーム厚でストレートに見せよう」「せっかく薄いテレビなのだから、ベゼルの幅も削ぎ落とし、より軽快に仕立てよう」という具合に。実際、「KDL-40ZX1」も、フレームのエッジを立てなければ、そうできたんです。ところが久保田は「斜めから見たとき、紙のように薄く見せる」がために、そうはしませんでした。セット全体が少し大きくなるのを承知で、メッセージを伝えきりました。だから、いつまでも見飽きることがないし、より薄いプロダクトに見劣りすることもありません。「薄型化」競争など問題にしない、普遍的な価値や魅力が宿っているのです。
こうして生まれたテレビをリビングに置けば、それを目にする人の暮らしにも変化があるのではないかと期待しています。たとえば、テレビに合わせて、インテリアを模様替えしよう、せめて椅子でも変えてみよう、というように。そんな暮らしやライフスタイルを想起させるくらいのデザインが私たちの目標で、「KDL-40ZX1」は、それにいちばん近づくことができたプロダクトのひとつだと思っています。
※民生用液晶テレビとして。最薄部のみ。2008年8月28日プレスリリース時点