

曽我部:私は「PRS-505」のプロダクトデザインを担当しました。実はPRSシリーズには前モデルの「PRS-500」があって、内部の構成は基本的に変わっていません。しかし、より薄く、使いやすくするというのが私に課せられたテーマでした。
同じ内部構成で本体を薄くするのは、普通は簡単な話ではありません。しかし、今回は非常にスムーズに作業を進められました。というのも、エンジニア側から「外装にアルミの押し出し材を使いたい」という提案があったからです。
通常なら正面と背面、2枚のアルミ板をそれぞれプレスして、基板をサンドイッチするところですが、強度の確保や組み立て効率などの都合で、どうしても厚みが増してしまうんですね。それに対して「PRS-505」は、正面から側面、背面まで、外装の継ぎ目がありません。アルミ板が扁平な筒状をした、モノコック構造になっています。これが押し出し材の特徴で、非常に強度が高く、その恩恵で本体を6mm近く薄型化できたのです。
何より、継ぎ目がないことで生まれる美しさは、押し出し材ならではのもの。当初、押し出し材の見本をエンジニアに見せられたとき、「もうデザインの7割〜8割はできた」と直観したほどです。後は、素材の良いネタをどう味付けをほどこすか。ここが工夫のしどころとなりました。
曽我部:あくまで本ですから、ボタンなどが煩雑に見えては興ざめです。可能な限りシンプルにレイアウトしたいと考えました。まず数字ボタンは、電子ペーパー上の表示とダイレクトに対応するよう、ディスプレイの横に配置。本としての象徴である円形のページ送りボタンは、左下部に大きくレイアウトしています。このボタンもアルミにこだわり、さらに円周にはダイヤカットで高級感のある光沢を演出しました。
もうひとつのページ送りボタンは本体右側です。アメリカでは、結構な厚さの本でも背表紙を折り、右手だけで本を支えて読む方がいらっしゃいます。そんな方の本の持ち方をボタンのレイアウトにも反映させたわけです。しかし、フラットな外装にただ丸いボタンを置いても、まったく味気がありません。ここは苦労したところで、ボタンの形状をいろいろ試したのですが、どうにも唐突に見えて納得できませんでした。何より、ここに何もなければシンプルで端正に見えていた佇まいが、ボタンを置くことで逆に無個性でつまらないものに感じられてしまう気がして、頭を抱えたのです。
本体の右側にわざわざエッジをたて、独特な曲面を加えたのは、そんな私の違和感を解消するため。こうすることでデザインに表情が生まれます。シンプルな中にも、陰影の面白さが加わるというと、説明しすぎでしょうか。さらに、本を読むとき小口が親指にあたる感覚も反映でき、合理的な造形になったと思っています。