マグを思わせる形状から、驚くほどエネルギー感と立体感のあるサウンドがあふれ出る。“サウンドマグ”は、ホームオーディオとカーオーディオの垣根を超える、ニューコンセプトのプロダクトです。次世代のパーソナルエンターテインメントのあり方を、ここに予感することができます。



服部:“サウンドマグ”RDP-NWV500 / SRS-V500IPは、自宅でもクルマでもロケーションフリーで使えるドックスピーカーです。パーソナルオーディオと車載機器、ふたつのチームが製品カテゴリーや事業部の壁を超えてコラボレーションし、企画からデザイン、設計までを手がけました。
実をいうと、今回のプロジェクトは「このコラボレーションありき」でスタートしたもの。カテゴリーの枠を取り払ったとき、どのような新しい発想が生まれるか。見逃してきたユーザーセグメンテーションやニーズを発見できないか。ふたつのチームがブレストした結果として、“サウンドマグ”という企画が見えてきました。「商品企画ありき」で開発がスタートするのが当たり前の当世、私たちにとっても実験的、挑戦的なアプローチだったといえます。
内心、私もこのプロジェクトに期待するところは大でした。というのも、車載機器のデザインを手がける中で、近年のユーザーニーズは従来の製品カテゴリーに収まらないと実感していたからです。ひと昔前は、自宅とクルマ、それぞれの場所に応じたライフスタイルがあったもの。しかし、“ウォークマン”をはじめとするデジタルメモリープレーヤー、いわゆるDMPが普及すると、ユーザーはどんな場所にもDMPごと行き来するようになりました。ところが、自宅で使うオーディオ機器とカーオーディオでは、設計の思想も基準も、まるでちがいます。同じオーディオといいながら、似て非なる存在。それが、私たちが日常の業務でぶつかる壁となってきたのです。
今回のコラボレーションで気づいたのは、「DMP世代が求めるような、自宅でもクルマでもシームレスに使える、手軽で高音質なサウンドシステムがない」ということでした。それは、まさに「カテゴリーの交錯点」、ひとつのカテゴリーの中からは見えない盲点だったのです。
服部:かつてカーオーディオの世界では、手間とコストをかけてクルマを改造、あるいはインストレーションを行うのが前提でした。しかし、DMP世代が求めるのは簡便に使えるサウンドシステムです。FMトランスミッターでDMPの音を飛ばし、ラジオで再生することもできますが、それでは音質がチープになってしまいます。
そこで、ターゲットにより近い価値観を持つパーソナルオーディオのチームが企画をリードすることになりました。一方、車載機器のチームには、彼らが持っていない設計ノウハウがあります。たとえば音をフロントガラスに反響させて音場を定位させる、操作性や耐久性などの車載基準をクリアするといった技術です。両者が得意とするところを発揮し、商品企画をカタチにしていくという流れで、プロジェクトは進行していきました。
最初から明らかだったのは、クルマで使うとなると、推奨設置場所が限られるといことでした。ダッシュボードはすでに重要な機器で占領されています。唯一、すべての車種に用意されており、サウンドシステムの設置場所として推奨できるのがカップホルダーです。このような小さなフットプリントのドックスピーカーは、実はあまり例がありません。しかし、もし実現できれば、カーシェアリングやレンタカーでも自分の聴きたいものをすぐに楽しめるようになり、需要が期待されます。
さらに私たちは、限られたスペースとサイズでも、それを感じさせないくらい高音質を実現したい、ソニー独自の設計思想を盛り込みたいと考えました。そこでデジタルアンプS Masterや、“サウンティーナ”と同様、ディフューザーによる360度の音場などを、効率的にパッケージングするというプロダクトの概要を固めていったのです。