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Feature Design VAIO P Series
[ 2010.5.27 up ]

ビビッドな存在感

登場と同時に大きな話題を集めた“VAIO”Pシリーズが、驚くほどのイメージチェンジを果たしました。触りたくなる。見られたくなる。そんなオーナー心をくすぐる、マット仕上げと鮮烈な色。“VAIO”ブランドの可能性が、ここから広がりはじめます。

柘植 隆弘
柘植 隆弘
ソニー(株)
クリエイティブセンター
統括課長
田中 聡一
田中 聡一
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー

Pシリーズの世界を拡大したい

柘植:今回の“VAIO”Pシリーズは、私たちデザイナーにとってプレッシャーの大きい案件でした。昨年、大変な話題を集め、デザインの完成度も高かったモデルの後継機です。下手には変えられません。そのうえ「超」が付くほどの高密度実装で、デザインできる部分も限られているので、とても難易度の高い案件です。

しかし、それでも登場感は必要です。また、私たちはPシリーズの世界をもっと広げたいとも考えていました。ウルトラモバイルマシンだからこそ、「ラフに使いたい」という人は多いはず。今回のモデルチェンジは、そんな行動派にアプローチするチャンスです。

そのためのキーワードが“ビビッド”でした。ビビッドなカラーにはアクティブ、バイタリティといったイメージがあります。また、個性的な造形や機能という意味でも、“VAIO”はビビッドな存在を目指すべきだと思うのです。漠然とした私のイメージに対し、田中は従来とまるで違う方向性のインダストリアルデザインを提案してきました。

主流の反対を歩く勇気

田中:本来であれば、特徴的な機構や機能をデザインの糸口にしたいところです。しかし、今回は外形にあらわれるようなそれがありません。では、何ができるか。私はいつもとは逆に、外装の仕上げから表現のテーマを考えることにしました。

これまでのPシリーズは高級感のある光沢仕上げ。とてもエレガントな印象を作り上げることができる一方、指紋や手の脂が気になります。しかも今回は、モバイルグリップ・スタイルやジェスチャー操作を採用するため、ますます「手で触り続ける」ことが予想できました。ならば、指紋が目立たないマット仕上げの方が安心なはず。これとビビッドなカラーを合わせれば、パソコンの表現としても斬新です。

しかし、これは相当に勇気がいるチャレンジでした。いまやパソコンは光沢仕上げが主流。まして“VAIO”はその先駆けであり、色の深みというものを追求してきています。「マット仕上げ+ビビッドカラー」は、そんな流れと正反対の提案だけに、社内的にも「バリュー感がなくなった」、「もっと高級感がほしい」といわれることが容易に想像できました。私のアイデアを実現するためには、マット仕上げというテーマから必然的に生まれるデザインを見せ、目にした瞬間に「こうでなければならない」と納得させるしかありません。

マット仕上げをスタートラインとして、素直に発想を進めていったらどうなるか。私の結論は、「黒くてソリッドなディスプレー本体を、柔らかなシートで巻く」ことでした。金属的な印象の光沢仕上げに対し、マット仕上げはゴムや布、革などの柔らかな手触りを連想させます。そんな柔らかい素材からイメージできる仕草といえば、「何かを巻く」「包んで保護する」こと。実は私も、“VAIO”のモックアップを持ち歩くとき、大きなシートをまずキーボードと液晶パネルの間に挟み込み、そのまま全体をクルッと巻いて保護しています。いわば、身体にしみついた自然な動作を、そのままデザインの切り口にしたわけです。

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