
スポーツと音楽をスタイリッシュに楽しめる専用アームバンド
市川:デザインを統括する立場として私がSシリーズに求めたのは、もう一度、ソニーらしさをストイックに見直すことでした。しかし、「どうすればソニーらしくなるか」「何が“ウォークマン”らしさなのか」を教えてくれるガイドブックはありません。その点、“ウォークマン”の象徴であるスティック・コントローラーの造形を活かしたスポーツモデルは、まさに王道といえるでしょうね。一方のNW-S700F/S600シリーズは曲面が美しい。裏も表も、あらゆるところにストーリーが隠されているというか。シンプルだけど密度感があります。
私は、どちらも非常に“ウォークマン”らしいと思うんです。“ウォークマン”は歴史のあるブランドだけに、数多くのモデルを生んできました。しかし、デザイン的に目指してきたものは、ひとつのような気がします。ひと言でいえば、アイコン性です。Sシリーズも、ひと目でフォルムを覚え、そのまま誰でもパッと画に描けますよね。
普通、こういう歴史のあるブランドの場合、商品カテゴリーが成熟するにつれて、当初あったオリジナリティが崩れたり、希釈されてしまいがちです。新しさを求めて装飾しすぎた結果、本来あったアイコン的な部分が弱まってしまうんですね。そこに陥ることなく、よりオリジナリティの高いアイコン性を生み出してきたのが“ウォークマン”。Sシリーズは、その伝統をうまく継承、進化させられたと思います。

志水:いくらデザインにオリジナリティやアイコン性があっても、実際にカタチにできなければ意味がありません。もともとバッテリーもオーディオ回路も、箱状、板状のもの。それをスティック型の筐体に実装するのは、設計側の熱意があってはじめて実現できることです。
ジョグシャトルにしても、そう。このデザインでなければ、防滴仕様にするのは易しかったんです。なのに、私のデザインではジョグシャトルの内側にレバーを出してスティック内部の構造と直結させ、メカニカルに動きを伝えることになります。これでは防滴性が確保できませんよね。その問題を設計者はどう解決したかというと、わざわざ新規で磁気センサーを開発してくれたんです。ジョグシャトルの動きを磁気で検知して本体を制御するため、メカニカルに直結させる必要がありません。ジョグシャトルをはずしても、スティックに穴はなく、シャトルの保持とクリック感のためのスプリングが付いているだけです。こういう新しいデバイスは効果や信頼性も検証が欠かせず、設計側には大きな負荷になります。それを押して私のデザインを実現してくれたのは、デザイナー冥利に尽きますね。