宇津木:従来の電機メーカーは、ハードウェアの機能を実現するため、特定用途のアプリケーションを開発し、デザイナーはそれを「いかに使いやすくするか」だけを考えていればよかったわけです。しかし、現在のようにプロダクトが多機能になると、ユーザーが「何を」「どう」楽しみたいかを定義しないと、GUIもデザインできません。これは、私たちデザイナーにとって頭の痛いところです。
アプリケーションは、この問題を解決する切り口になると思うんです。ユーザーが選んだモードから「このユーザーは何をしたいのか」を判断し、適切なGUIでそのユーザーなりの使い方に導いていく。そうすることで、プロダクトとユーザーを最適にインタラクトさせてあげる。これは、多機能で何でもできてしまうようになったプロダクトが「何ものなのか」、また、その操作が「何を楽しむための使い方なのか」ということを、おなかいっぱいになっているユーザーへ伝えることに結びつきます。『x-アプリ』は、そのためのヒントを潤沢に用意するという意味でも、私たちにとって価値のあるものだと思います。
反畑:『x-アプリ』は、実は私たちの通常業務の外から生まれたんです。契機となったのは、3年ほど前に行われた自主的なワークショップでした。組織の枠をあえて超えてみようと、デザイナー、マーケティング、商品企画、エンジニアといった有志が50名ほど集まり、「ユーザーにどんな体験を届けたいか」「それを実現するためには何が必要か」というテーマでアイデアを出し合いました。考えたことを一分で説明しろとか、他のグループのアイデアを違うグループにもませたりするなどの作業を経て、企画がコンセプトをとりまとめ、その内容からデザインとしてはアプリケーションの切り口で参画することがベストだということになりました。
椋:これまでも「業務以外から生まれたアイデアをどう拾い上げていくか」は私たちにとって大きな関心事でした。実際、エンジニアが個人的な遊びでつくったプログラムがたまたまデザイナーの目に入り、みんなを動かして正式に開発がスタートしたという話もよくあります。しかし、デザイナーが思いついたアイデアは、どんなにグラフィックで表現してもただの“お絵かき”でしかありません。エンジニアを巻き込んでプロクラムしてもらい、ハードウェアに乗せて動かすところまでやらないと、本当に面白いかどうかは評価できない。ワークショップはこの問題を解決するのに非常に有効でした。
実は、このときに生まれた『x-アプリ』のアイデアはまだたくさんストックされているんですよ。それをどう開発しプロダクトに反映させていくか。無償リリースなどさまざまな手段を用い、ユーザーの皆さんといろいろな「面白い体験」や「新しい感動」を一緒に楽しみながら、ソニーのインタラクションデザインを進化させていきたいと考えています。