

佐々木:“XEL-1”では、クロスメディアバーなどの背景に専用の壁紙が表示されます。これがGUI上、“ブラビア”などのそれとは違う一番大きな特徴です。
この壁紙は、何よりも「オーガニックパネル」の薄さや軽さにふさわしいデザインであることが大切。方向性を探るためさまざまなサンプルを表示させているうちに、「オーガニックパネル」は液晶パネルとまるで表現力が違うことに気がつきました。非常に高精細なうえに、黒がとても引き締まって見えるんです。それを活かした表現ができないものかと考えました。
また、階調の豊かさにも驚かされました。明るい環境で見ると気がつかないほどの淡い色、細いラインも表示できるんです。その表現力を利用すれば、明るい書斎と暗いベッドサイドでは見える世界が違うという、面白いデザインができるのではないかと思いつきました。
最終的にたどり着いたのは、黒い背景に無数のラインが波打つデザイン。オーナーになった方は、部屋の照明を消すと黒い画面がベゼルに溶け込み、ラインだけが浮いて見える不思議な感覚に気がつくことと思います。しかも、それまで見えなかった細く淡いラインのおかげで奥行き感が増して感じられるはずです。それを実現するため、生け花をするかのように一本一本のラインの濃淡や太さを微妙に調整したり、ライン一本の配置や有無にこだわったり。シンプルなアイデアですが、簡単にデザインできたものではありません。その緻密な調整に一番時間がかかりましたね。
実際にデザイン作業をするのはPCの液晶モニター上です。ですが、幅広い表現力を持つ「オーガニックパネル」上での見え方と液晶モニター上での見え方とはだいぶ違います。ですので、PC上で作成したものを実機上で何度も確認するという地道な作業の繰り返しでした。

佐々木: ラインのデザインキーワードは「オーガニック」。有機ELパネルからの発想です。イメージしたのは月明かりに照らされた草原や海原のような空間表現です。そこで色についてもちょっとした仕掛けを施しました。実は、時間とともに色が変化するのです。朝は活力を感じさせるグリーン。それが徐々にイエローに変化し、夕方には夕焼けを思わせるオレンジへと到ります。これも「オーガニックパネル」だから表現できたこと。従来のデバイスでは、これだけ広い色相、デリケートな階調の表現は不可能に近いでしょう。その表現力をさりげない形でオーナーの方に楽しんでいただこうというわけです。
また、クロスメディアバーを操作するたびに、ラインの稜線の高さやバランスが微妙に変化するようになっています。使っているうちにその変化に気づき、また新鮮な印象でプロダクトと関われる。そんな願いを込めた、ちょっとした仕掛けですね。
“XEL-1”の画質や操作性については、基本的にきっとご満足いただけると思います。しかし、それだけでなく、人が集まったとき、いつも話題の中心になってくれるのが私の願い。ラインの色や柄が微妙に変わることを発見した方は、それを新しい話題にすることができます。そんな満足、プラス喜びのようなものを提供できたらうれしいですね。