「人のやらないことをやる」「つねに一歩先んずる」といった創業当初からの企業理念は、ソニーのデザインフィロソフィーに共通するものでした。ここから、常に「高性能で、使いやすく、かつ美しく、そしてソニーらしい製品を形づくる」というデザインフィロソフィーが生まれました。
前例のないデザインを先駆けてつくることで、それが世の中の標準になっていく。ソニーデザインは、このような「原型」のデザインを数多く生み出してきました。本物の価値を追求したデザインだけが、これからの「原型」になりえると思います。そして、人間の潜在的欲求を満たす、完成度の高い「原型をつくる」ことこそ、ソニーの真のオリジナリティーです。
ウォークマンは、“音楽をいい音で、いつでもどこでも楽しめる”という新しいライフスタイルをつくったと、よくいわれます。しかし、実は音楽といつも一緒にいたいという人々の欲求こそが、ウォークマンを発明したのです。「ライフスタイルをつくる」ということは、言い換えると、こうした人々の心の琴線に触れる商品を作り出すことにほかなりません。
1961年のデザイン室発足当時、共通のデザインテーマとして掲げたのがブラック&シルバーでした。それは余分な装飾をやめ、商品の持つ高機能、プロらしさ、精悍さなどを増幅する、シンプルさとクールな色使い、新しい素材を特徴とし、ソニーのブランドイメージをさらに際立たせるデザインコンセプトです。
すべては、それを使うユーザーのニーズに耳を傾けること。細かいツマミひとつひとつの形、スイッチの配置、インターフェースの作法に至るまで、使われている状況を細かく観察し、そこから多くのデザインのヒントを探り出しました。ユーザーと正面から対話して、積極的に改良していく。しかし、使う側が戸惑わない様に操作系はあまり変えない。これが「使いやすさをつくる」上で重要なことなのです。