1977年秋のオーディオフェアに、ソニーはデジタルオーディオディスクを参考出品し、話題を呼んだ。技術者たちはさらに開発を進めていった。そうこうしているある日、当時副社長の大賀はオランダの電機メーカー、フィリップスの幹部オッテンス氏からテレックスを受け取った。ヨーロッパに来ることがあればぜひ立ち寄ってほしいという内容である。フィリップスのオッテンス氏といえば、1960年代半ば、オーディオの「コンパクトカセット」の世界規格化をともに進めた時からの付き合いだ。以来ソニーの大賀、フィリップスのデッカー氏、オッテンス氏など、両社の幹部の間には確かな信頼関係が生まれていた。(
第2部第5章第1話を参照)
1978年6月、大賀がオランダのアイントホーフェンにあるフィリップス本社を訪れると、オッテンス氏はあるものを見せてくれた。それは、中島(なかじま へいたろう)や土井(どい としただ)たちが開発を進めているものと同様の、オーディオ専用の光ディスクだった。「オーディオ・ロング・プレイ」(ALP)と彼らは呼んでいた。彼らは、70年代にレーザー光を使用した「光方式」のビデオディスクを世界に先駆けて開発したメーカーであり、ALPはその技術を生かした副産物であった。この頃、いろいろなメーカーがデジタルオーディオディスクの開発競争にしのぎを削っていたのだ。
「この直径11.5cmのディスクに1時間の音楽が入ります」。デモンストレーションをしながら、こう説明があった。そのディスクは大賀の目にはかなり小さく映った。