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2016年05月18日

ソニー、米国Cogitai社に資本参加
次世代の人工知能(AI)に関する研究開発を共同で推進


ソニー株式会社は、米国子会社であるソニー・コーポレーション・オブ・アメリカを通じ、人工知能(AI)に特化したスタートアップである、米国Cogitai(コジタイ)社に資本参加し、同社と、ディープ・リインフォースメント・ラーニング(深層強化学習)技術に予測・検知技術を応用して、次世代の人工知能に関するアプリケーションや製品群の基礎となる、新たな人工知能技術を共同で開発します。

コジタイ社は、人工知能領域の開発を牽引する三名の研究者により2015年9月に設立されました。
強化学習の先駆者であるマーク・リング氏と、テキサス大学オースティン校で強化学習を含む人工知能や複数エージェントシステム、ロボット研究を推進する教授ピーター・ストーン氏に、ミシガン大学教授で深層強化学習の先導者であるサティンダー・シン・バベイジャ氏により設立された同社は、実世界とインタラクションをしながら継続的に学習をしていく人工知能の開発を目指しています。この人工知能は、日々の様々な場面において、センサーから得られたデータと、それに基づき起こしたアクションによる経験から学習し、継続的に知識と能力を向上させ、賢くなっていくものです。
さらに、これらの卓越した創業者に加え、同社は人工知能で世界トップレベルの研究者で構成されるブレイン・トラストというグループを形成しており、このメンバーもソニーとコジタイ社の共同研究開発に積極的に携わっていきます。

人工知能の進化には約60年の歴史があります。初期においては、従来人間の知性が必要であった特定の仕事を予め機械にプログラムして実行するという方法がとられました。しかし、機械が知的に機能するようプログラムするには、その知識の背景にある複雑な文脈やコンセプトをもプログラムする必要があり、これが、極めて難しい問題として立ちはだかりました。そして、この課題を克服するアプローチとして、機械学習という手法がとられました。機械学習においては、特定のプログラムからではなく、サンプルとなるデータをもとに機械がルールや知識を学習します。この方法は高品位なサンプルデータが大量に存在する場合には非常に効果的でした。2010年頃に現れたディープ・ラーニング(深層学習)は、機械学習が強化された形態で、データ内の微妙な差異を認識する能力があり、人間並みの識別力があります。
しかし、この手法では人間がサンプルとなるデータに正解のラベル情報を付ける必要がありました。
一方で、1980年代に出現したリインフォースメント・ラーニング(強化学習)は、行動心理学の成果を組み込み、機械の行動の結果に応じて報酬やペナルティを与えることで、より人間の知的な行動に近いシステム開発を可能としました。これは大きなブレークスルーとなりましたが、知識や(機械が活動する)世界は依然人間が作り出す必要があり、極めて限定した領域への適用に限られていました。
しかし、強化学習と深層学習を組み合わせたディープ・リインフォースメント・ラーニング(深層強化学習)は、これらの問題点を解決する有望な技術であると期待されています。実際に、この方式の有効性が、最近のグーグル・ディープマインド社によるアルファ碁で実証されました。この方法は、明確に定義されている課題に関して、人間を上回る能力を発揮することが明らかになってきています。

ソニーとコジタイ社は、AI開発における次の領域は、自らが経験から自律的かつ継続的に学び、より広範の領域に適応可能な人工知能の開発と考えています。この新たな人工知能により、機械は実世界での経験から自律的に知識やスキルを学習し、さらにそれらの知識・技能・理解を他の機械とも分かち合い、発展させることができるようになります。

ソニーは人工知能の研究開発で長い歴史を有しています。1999年に完全自律型ロボットであるエンターテインメントロボット、アイボを開発しました。アイボには顔認識や音声認識など多くの最先端の人工知能技術が搭載されていました。その後、これらの技術はデジタルカメラやテレビ番組推薦サービスなどソニーの製品・サービスに展開されました。また、2004年にはソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所を設立し、自律型知的システムの開発に向けた研究を行ってきました。インテリジェンス・ダイナミクスは、予測に基づく学習と、内発的動機付けによる自己開発を技術的特長としており、機械が技能を制限なく自律的に開発していく能力を目指していました。これらの活動は2006年にソニー本社R&Dグループに移管され、深層学習や強化学習を含めた人工知能技術の研究を継続してきました。

これまでにソニー R&Dプラットフォーム システム研究開発本部が開発した人工知能技術に基づく製品やサービスには、スマートフォン「Xperia™」シリーズに搭載されている統合型拡張現実感技術(SmartAR)を用いたカメラアプリ「ARエフェクト」や行動認識技術を採用したLifelogアプリ、「プレイステーション® 4」の顔認識ログインなどがあります。本年2月にはソニーモバイルコミュニケーションズが、ユーザーの声に反応して、個々のユーザーにあった情報の提供やコミュニケーションを、声としぐさでアシストしたり、家電をコントロールすることができる「Xperia Agent」の試作品を公開しました。さらに、本年3月にはフューチャー・ラボ・プログラムにおいて、耳を塞ぐことなくハンズフリーで音楽や音声による情報をインタラクティブに楽しめるネックバンド型ウェアラブルデバイス、コンセプトプロトタイプNを初公開しました。Nはオーディオ信号処理技術と音声認識技術を利用しています。

これらの活動と並び北野宏明博士が社長として主導するソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は計算幾何学やノイズあるデータ群からの因果推論、言語進化と認識などの基礎理論から、人工知能の応用としてのインタラクティブな音楽創造や製造工程改善、またその他多数の領域で広範囲にわたる人工知能の研究を行っています。ソニーCSLは東京とパリに拠点を持ち、国際的な人工知能コミュニティにおいて重要な役割を担ってきました。北野博士は、国際的な人工知能学会である国際合同人工知能会議(IJCAI)の前プレジデントであり、ロボカップの創設会長も務め、1993年には人工知能分野での最も重要な賞の一つであるThe Computers and Thought Awardを受賞しています。

御供俊元(ソニー 執行役員コーポレートエグゼクティブ 知的財産、中長期事業開発担当)のコメント

『ソニーとコジタイ社は人工知能の将来の方向性について共通の認識を有しています。
コジタイ社との共同研究開発により、ソニーは人工知能領域で世界屈指の頭脳を活用することが可能になりました。コジタイ社の専門的技術と、ソニーのセンシング技術など世界第一級のエンジニアと技術を組み合わせることで、真に世界を変える可能性のある製品開発が可能になると信じています。』

マーク・リング博士(コジタイ社 CEO)のコメント

『我々は、次世代の人工知能開発に向けソニーから大きな支援を受けられることにわくわくしています。多くの会社がそれぞれ違ったやり方での人工知能の追求をしていますが、我々はソニーと開発する技術が、業界にとって将来の方向であると確信しています。』

北野宏明(ソニーCSL 代表取締役社長、所長)のコメント

『我々は人工知能が莫大な数の製品に組み込まれ、人々の生活にとって当たり前のものになっていくと信じています。この進化の過程において、最も重要なのは、コンスーマーにどのような価値をもたらすかという点に集中することです。
今後はどのような分野に、どのような価値を提案するのか、そのためにどのように技術体系を構築していくのか、それらの選択が極めて重要となります。
今回のソニーとコジタイ社との共同プロジェクトはこの視点からも大変大きなマイルストーンになります。』

コジタイ社 創業者 経歴

マーク・リング博士(コジタイ社 CEO)

リング博士は、継続的に学ぶ人工知能、というテーマを中心に研究を行っています。もしエージェントにただ一つのアルゴリズムを与え、AI自身で永遠に学習させることができるとした場合、そのエージェントが継続的に学習し、永遠に発展、進歩し続けさせるためには、アルゴリズムに何をインプットすべきか、また、人工的なエージェントが、実世界とインタラクションしながら理解を深める能力を継続的に向上させるためには、継続的な学習と発展のプロセスをどのようにし始めるべきなのか、という質問に答えようとするものです。1994年に発表されたリング博士の学術論文、「Continual Learning in Reinforcement Environments」では、関連する課題も含めて、深く考察されています。そこで述べられた多くの見解は現在では広く認められていますが、その多くは、発表当時主流な考え方と言えるものではありませんでした。人工知能の継続的な学習については多くの可能性を有するメカニズムがありますが、リング博士により最初に開発されたものは、階層的一時変遷アルゴリズムと呼ばれるもので、エージェント自身で、矛盾する学習結果を解決するために記憶容量を知的に増大させていくものです。
最近では、類似性に着目して行動を体系化し、それを長期的な行動の予測に活用する研究に注力しています。博士はまた、計算理論に基づいた数理的なアプローチから、人工知能の安全性についても研究しています。

ピーター・ストーン博士(コジタイ社 President)

ストーン博士は、カーネギーメロン大学において、1995年に理学修士号、1998年に博士号(どちらもコンピュータサイエンス)を取得しました。1993年にはシカゴ大学で理学士号(数学)を得ています。博士号取得後はカーネギーメロン大学で博士研究員として一年在籍し、1999年から2002年までAT&Tラボの人工知能研究組織でシニア・テクニカル・スタッフをつとめました。その後、テキサス大学オースティン校コンピュータサイエンス学部に助教授として移り、2007年に准教授、2012年には教授に就任しました。ストーン博士はロボカップ創設と同時期に、ロボットサッカーによるチャレンジを提案した論文を共著しています。現在、ロボカップ連盟の副会長として全世界での組織運営、多くの大会運営に携わっています。2007年には人工知能分野での最も栄誉ある賞の一つであるThe Computers and Thought Awardを受賞しています。

サティンダー・シン・バベイジャ博士(コジタイ社 CTO)

バベイジャ博士はミシガン大学でコンピュータサイエンス&エンジニアリングの教授で、同大学人工知能研究所のディレクターも務めています。インド工科大学で学士号(電気工学)、その後、アマースト大学に学び、マサチューセッツ大学で博士号(コンピュータサイエンス)を取得しました。マサチューセッツ工科大学において博士研究員として脳認知科学を研究、Harlequin社 研究職、コロラド大学ボルダー校助教授、AT&Tラボ・シニアリサーチャー、ベンチャーキャピタル(SysteK Capital)・チーフサイエンティストなどを務めた後、2002年にミシガン大学に移りました。
バベイジャ博士は、強化学習領域を中心に研究を行ってきました。不確実性が高く、複雑、かつ動的な環境下での行動を学習するアルゴリズム、理論、ソフトウェア・エージェントのアーキテクチャー構築などが挙げられます。
とりわけ関心の高い研究領域としては、以下の領域が挙げられます。時系列データからの動的システム構築、人間と機械とのインタラクションにおける有効な調整等の学習、限定的な観測環境下での連続的な意思決定、より良いポリシーを得るために行動を試すexploration(探索)と、より効率的に報酬を得るためのexploitation(搾取)、遅延フィードバックに関する課題、計算理論に基づく動物と人間の意思決定に関する解釈、情報の価値に基づく半自律型エージェントに対する適切なクエリ、等。また、博士はヘルスケアやロボット、ゲームプレイなどのアプリケーションにも関心があります。
アメリカ人工知能学会の特別研究員で、各種研究に関する受賞歴も多数あり、上記研究領域において既に150以上の論文を執筆しています。
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