木村綾子のソニー現場レポート 第五回
木村綾子のソニー現場レポート、第五回目は『ソニー・太陽』へ潜入しました!
大分空港から車で約30分、緑豊かな自然を抜けて小高い丘を登ると、『ソニー・太陽』のシンボルタワーにもなっている、そびえ立つ白い巨塔が目に飛び込んできました。広大な敷地の中でもひときわ目を惹く存在であるその塔を潜り抜け工場までたどり着くと、うららかな陽射しの下で私たち取材班の到着を待っていてくれたのは、車いすを巧みに操る長田博行社長でした。
実は、社長をはじめとし、『ソニー・太陽』で働く方のほとんどは、身体に障がいを抱えた方たちなのです。そしてこの会社は、そんな方たちが個々人の障がいと上手に付き合いながら自立した仕事ができるようにとあらゆる工夫が施された工場というわけ。 今回は、障がい者の方たちの生産への姿勢と、そしてそれをサポートする施設の秘密について私キムラが現場レポートさせていただくことになりました!
「遠方からよくお越しくださいました。今日は一日、たっぷりと私たちの働く姿をご覧になっていってくださいね。それでは、さっそく中へお入りください」
動線上に高低がいっさい無いユニバーサルデザインという造りからなのか、それとも長田社長の物腰の柔らかさからなのか、“他人の敷居をまたぐ”という感覚なく、フラットな心持ちで今回の取材は始まりました。
エントランスを抜けると程なくして目に飛び込んできたのは、整然と配置された作業台に向かってもくもくと作業を繰り返す社員の姿でした。そんな景色が、遥か何十メートルも向こうまで続いています。しかもその作業台、なにやら見たことも無い機能を搭載している様子!!
「ナ、なんですかここは!?っていうかあの作業台、ドラえもんで見た未来型家具みたいなんですけど・・・!!!!」「あははは。あちらがですね、今日木村さんに見学していただく工場です。こちらの工場のいたるところには、障がい者の方が一人でも生産ができるように個々人の機能に合わせたさまざまな工夫が施されているんです。未来型家具? についての謎も、のちほど解き明かしますからね。ぜひ、想像力を膨らませつつ、楽しみにしていてください」
ガラスを隔てた向こう側は未来都市(!?)。そこで働く彼らに目を奪われている私に向かって、長田社長は『ソニー・太陽』の設立目的を話し始めてくれました。
「こちらの会社は、身体障がい者などに社会参加の機会を与えることによって社会福祉に貢献するという趣旨の元に1978年に創立されました。障がい者雇用目的の工場は現在ソニーに3社あり、ものづくりを行なっているのはここのみとなっておりまして、社員総数178名のうち障がい者は119名、肢体障がい、内部障がい、聴覚障がい、言語機能障がい、精神障がいなどといったさまざまな障がいを抱えた方たちが働いています」
なるほど。ガラスの向こうの空間は、障がいを抱えた彼らが活き活きと働くために用意された空間なんだなぁ・・・。
でも、例えば私の体の一部が思うように動かなくなってしまっても、堂々と社会に出ていくことができるのだろうか。
「木村さんは、障がいを抱えた方には働く権利がないと思われますか?」
私の心を見透かしたように、長田社長がドキリとする質問を投げかけてきました。「“世に身心障がい者はあっても仕事に障がいはありえない。身障者に保護より働く機会を。”とは中村裕博士の言葉です。そして、“障がい者の特権無しの厳しさで、健常者の仕事よりも優れたものを”とは井深大ファウンダーの言葉です。私たちはこの二つの理念に支えられて日々邁進しているんですよ。この工場で働く人は誰一人として、自分の障がいに甘えている人はいないんです。そして、障がいという個性を恥ずかしく思っている人も」
“障がい=個性”かぁ。
「私たちがここで生産しているのは、マイクロフォンです。オーディオ機器に搭載されているマイクの他にも、メモリスティックやDSCステーションなどといった電気機器も扱っています。ソニー製品のほとんどのマイクロフォンが、ここで誕生しているんですよ」
えっ! マイク!? そんな精密機器を!? 体の自由がきかなかったり、音を聞き取れなかったり、言葉をしゃべれなかったりする「個性」を抱えた人が作るものとしては、リスクが大きすぎるのでは!? 頭の中を無礼な“?”マークが飛び交います。はるばるここまで来たんだ。勇気を持ってその質問を言葉にしてみました。
いよいよガラス張りの工場の扉は開かれました。いざ、未来都市へと足を踏み入れます。
For The Next Generation