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CO2をへらす

キーワード:グリーン電力

取材:
グリーン電力を調達せよ<前編>

 グリーン電力を調達せよ! ー 「グリーン電力証書システム」を生んだ男たち ー
日本に風力発電は向かない。
そんな業界の常識を覆すとともに、日本初のグリーン電力証書システムを成立させた男たちがいる。利用に道を開いた、グリーン電力証書開発の道のりを追う。
二酸化炭素削減のためには、係数省エネができればいいんじゃないのか。それが「グリーン電力証書システム」発案のきっかけ
桑原康浩 ソニー 総務センター エネルギーソリューション担当部長
ソニー設備の省エネルギー化を手がけていた本来の業務とは別に、環境に配慮したエネルギー利用を考えていた桑原氏。CO2を排出しないグリーン電力を「所有」するのではなく「利用」する発想から「グリーン電力証書」システムの開発に尽力をそそぐ。

 1999年半ば頃、ソニーで省エネルギー対策を担当していた桑原康浩は、ちょっとしたアイデアに満足げな表情を浮かべていた。京都会議以降、二酸化炭素削減に直結する省エネルギー要求は厳しくなる一方だった。しかしオイルショック以降に省エネを進めてきた日本の企業にとって、さらなる省エネ推進は容易ではない。オフィスの電気を消すくらいでは京都議定書が求める削減量を達成することは難しく、しかも通常の手段では将来的に費用対効果が悪くなることが、桑原の目には明らかになっていた。
 一方で、国内の電気料金が海外に比べて高いことを理由に競争による電気料金の低減を誘導する制度(電力自由化)の開始が迫っていた。「このままでは料金 は安いが環境に悪い電気が流通してしまうことになる。」という困惑があった。
 そんなときに思いついたのは、まったく新しい方法で省エネと同等の効果を上げるアイデアだった。
「使ったエネルギーは最終的にCO2に換算する。つまり係数比較だ。だったら二酸化炭素削減のためには、係数省エネができればいいんじゃないのか」
 例えば油を都市ガスに転換(燃料転換)することによりCO2が削減できる。これは、都市ガスのほうが油よりも熱量当りのCO2排出量が少ない、つまりは係数が小さいためだ。そこで、風力や太陽光などの再生可能エネルギーによるCO2を発生しないグリーン電力を利用すれば燃料転換と同様にCO2削減になるのではないだろうか。「値段が多少高くても環境負荷の少ない"環境電力"の需要の可能性はきっとある」と予想したのだ。加えて風力発電事業の導入によるコスト増は、省エネコストだと思えば将来的には決して高くないと評価されると思った。
 桑原はすぐに、グリーン電力を供給してくれる契約制度を電力自由化に合わせてつくってくれるよう、全国の電気事業者を訪ねて回った。結果は散々だった。すべての事業者から「うちではつくれません」という回答を得たのだ。
 諦めきれない桑原は、別の方法を模索する。そこで出てきたのが、発電の外部委託だった。ではどこに委託するか。電力会社には一度、断られている。桑原の計画は、翌年2月まで動きがなくなった。
 同じ時期、三井物産を退社した塚脇正幸は、ベンチャーの風力発電会社「日本風力開発」を立ち上げていた。塚脇はまず、参入の容易なドイツで風力発電事業をスタートした。実際に事業を始めてみると、補助金に頼った日本の風力発電事業のコスト構造がおかしいと感じるようになった。「建設コストは欧米と同程度にできる。風況の良い立地が確保できれば補助金なしでも建設コストはペイするはずだ」と、周囲の人間に熱く語るようになった。

塚脇正幸 日本風力開発株式会社 代表取締役社長
風を環境への負荷が少ないエネルギー資源としてとらえ、優良な風力エネルギー資源の発掘から、経済性の高い風力発電所の建設、効率的な運営までと、エネルギービジネスに総合的に取り組んでいる。
三野治紀 日本自然エネルギー株式会社 代表取締役社長
再生可能エネルギーを使いたい企業と発電事業者とをつなぎ「グリーン電力証書」を発行する会社。風力発電のほかにもマイクロ水力発電、バイオマス発電などの自然エネルギーの普及に努める。

 そんな塚脇の話を聞きつけたのが、東京電力企画部で新規事業を担当していた正田剛だった。正田は新規事業に風力発電事業を考えていたが、東京電力が自社で手がける可能性は低かった。そこで訪ねたのが、コストを下げると豪語している塚脇だった。
 正田の質問ポイントはただ一点だった。塚脇のいうコスト構造が正しいのかどうかだ。塚脇は即答した。
「ホントです。こういう条件なら、建設コストはこれだけですむんです」
 これを聞いた正田は即断した。「その話を、会議で説明してもらえませんか」
 すぐに塚脇は、正田がまとめていたプロジェクトの会議に出席するようになる。月に一度の会議には三井物産、住友商事の担当者が席を並べ、グリーン電力導入の方法を探っていた。正田にはアイデアがあった。当時は世界でも例のなかったグリーン電力を利用したい企業に「グリーン電力証書」を直接販売する仕組みを日本で初めて導入できないかということだった。現在は正田の後を継ぎ日本自然エネルギー代表取締役を務める三野治紀によれば、「偏在していた風力発電をうまく活用すれば、(遠隔地でのグリーン電力利用を可能にする)グリーン電力証書システムを拡大できるかもしれないと考えた」のだという。
 ここから、事態は急激に動き出す。塚脇が会議に参加してまもなく、ソニーがグリーン電力を買いたがっているという話が正田のところに舞い込んできた。東京電力のソニー担当営業からの紹介だった。桑原は今でも、正田に初めて会った日付を覚えている。2000年の2月28日だ。桑原は、正田のアイデアを取り入れて3月6日には新しい資料を作っていた。そして、両者により更に修正が加えられ、月末には現在と同様のスキームが練りあげられた。
 翌4月、桑原は初めて、社内の環境担当者に新しいアイデアを提案した。グリーン電力証書という形でグリーン電力を使用したことにする、日本初の"みなし購入"システムだった。
「もしダメなら、よそに持っていきます」
 桑原は提案の際にそう付け加えた。それだけ、企画の重要性を認識していた。
 とはいえ、このとき塚脇は、桑原から聞いた数字に困惑した。ソニーは、当面は5万kW、将来は消費電力の3分の1をグリーン電力で賄う計画というが、当時の日本全体の風力発電量は10万kWなのだ。ソニーがその半分を使うという。それでも塚脇が計画に乗ったのは、正田のこんな言葉に感動したからだった。
「グリーン電力の需要家は間違いなくいる。この仕組みができれば、世の中が変わるかもしれない」
 まだ何も形になっていない時期だったが、塚脇は当時を振り返り、「正田さんと桑原さんの姿を見て、『この人たちならやるかもしれない、世の中が変わるかもしれない』って思った」という。
 桑原はさらに先に進む。事業形態や認証方法などの詳細が未定のまま、9月になって経営会議に企画を諮ったのだ。席上、桑原は風力発電を委託することについて、「ソニーの事業所では風が吹きません。自前で建てたかったけど、風の吹かないところに風車はムリです」と説明をした。
 すると、出席していた経営陣から笑いがおこった。この瞬間、桑原は「通った」と直感したという。もっとも桑原は、「今でもなんで笑ったのかわからない」と不思議そうな顔をする。「別におもしろいことは言ってないんです。プレゼンの資料は1枚だけで、詳細も書いてない。会議の方々が何を理解されたのかわかりませんが、『日本初だし、なんだかおもしろそうだ』っていうことかもしれませんね」
 不思議な経営会議の決定を受け、東京電力は11月に、グリーン電力による発電を受託する日本自然エネルギー株式会社を設立する。この時点でもまだ認証方法等については決まっていなかったが、環境NGOなどからのアドバイスを受け、透明性を確保するために第三者機関に依頼するなどの方向性は定まってきた。

グリーン電力

風や太陽、バイオマス(木屑など)等、再生可能エネルギーを利用して発電された電力。永続的に使用でき、CO2を排出しません。例えば、木質バイオマス発電では、木質チップを燃焼させて発電するためCO2が排出されますが、このCO2はチップの元となる植物が育つときに吸収したCO2。大気中に戻っても、差し引きゼロでCO2は増加しないことになります。

  
グリーン電力証書システム

再生可能エネルギーによる発電実績を証書化して取引する仕組み。この証書を利用すれば、発電所から遠く離れた場所であっても、グリーン電力を使用したとみなされます。日本ではソニーと東京電力が共同開発したシステムが初。認証は第三者機関のグリーン電力認証機構が行う。認証された電力量は証書化され、日本自然エネルギーなどが発行している。

需要地域 再生可能エネルギー発電地域

再生可能エネルギー発電による直接の電力供給を受けることが難しい地域、主に都市部

・風力
・太陽光
・木質バイオマス
 発電など

グリーンパワーマーク

発行されたグリーン電力証書には、再生可能エネルギーから発電されたグリーン電力であることを示すグリーンパワーマークが表記されている。企業はこのマークを使用することで環境貢献を対外的にPRすることができる。


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