ソニーは、製品の輸送に伴う物流のCO2排出量を減らすために大胆なモーダルシフトを進めています。中国から博多まで"ウォークマン"を輸送するため、船を利用するのもそのひとつ。輸送の現場を訪ねたのは、Skoop On Somebodyのヴォーカリスト、TAKEさん。間近で見る貨物船や港の光景は、TAKEさんにちょっとした感動を与えたようでした。

ソニーは、製品の輸送に伴う物流のCO2排出量を減らすために大胆なモーダルシフトを進めています。中国から博多まで"ウォークマン"を輸送するため、船を利用するのもそのひとつ。輸送の現場を訪ねたのは、Skoop On Somebodyのヴォーカリスト、TAKEさん。間近で見る貨物船や港の光景は、TAKEさんにちょっとした感動を与えたようでした。

“ウォークマン”Eシリーズ

1月末の福岡県・博多港は、強い風が吹き、時折チラチラと雪が舞うような寒い日でした。そんな中、中国・上海港から"ウォークマン"Eシリーズを載せた高速貨物船が埠頭に着岸しました。
博多港に着岸した貨物船の中へ特別に入れてもらい、少し興奮気味のTAKEさん
物流部門の森永さんから、船に関しての説明を受けるTAKEさん。てきぱきとした作業で"ウォークマン"の入ったコンテナが運び出されていく
船が着くという知らせを聞くと同時に待機していた車から飛び出し、寒風吹く埠頭で出迎えようと走っていったのは、R&Bグループ、Skoop On Somebody(スクープ・オン・サムバディ)のヴォーカリスト、TAKEさんです。船の前まで来たTAKEさんが着岸の準備をしていた船員さんたちに手を振ると、船の上からも大きく手を振り返してくれました。
TAKEさんは子どもの頃、港で遊びながら海が世界とつながっていることは「すごいことだって思っていた」そうです。そして博多港に、小さな"ウォークマン"が数多くの人たちの手を経て運ばれてくるという説明を受けていたこともあり、「あの"ウォークマン"が生産地から海を越えてはるばる船で日本に運ばれてきたことや、それに携わっている港の人たちがすごく人なつこくて温かかったりしたことに素直に感動しちゃって、ちょっとテンションが上がっちゃいました」と、飛び出した理由を説明してくれました。
販売状況が刻一刻と変化する中で、特に小型の電気・電子機器では、商機を逃さないために飛行機で輸送するケースが多く、また、陸上輸送では、発送時間に融通の利きやすいトラックが多く使われています。
しかし、気候変動など温室効果ガスに起因する環境問題が深刻化する中、よりCO2排出量の少ない輸送手段に切り替える「モーダルシフト」という考え方が世界中の企業で取り入れられるようになってきています。このような状況下、ソニーは"環境負荷ゼロ"を目指す環境計画「Road to Zero」実現のため、2015年までの中期目標を定め、その中で製品の物流に関わる目標として、CO2排出量14%削減(2008年度比)を掲げました。そのための具体的な施策のひとつが、今回紹介する"ウォークマン"の輸送方法を大きく変えたモーダルシフトです。
“ウォークマン”Eシリーズ モーダルシフト
“ウォークマン"Eシリーズは、上海港から約28時間で博多港に着き、JR貨物で東京に運ばれる。輸送時間は飛行機と比べて、通関業務を含めても到着まで2〜3日多くかかるだけである。その結果、CO2排出量は約96%も減らすことができた
海外生産の"ウォークマン"の場合、これまで多く使用してきた飛行機に代えて、Eシリーズの生産地である中国から博多までは高速船で輸送し、博多から東京までは鉄道を利用することで「CO2排出量を約96%削減できました」と、"ウォークマン"生産管理担当の小林摂子さんは言います。
結果だけを聞くと、なぜ今までやっていなかったのか不思議になるかもしれません。けれどもモーダルシフト実現には、解決しなければいけない課題も多かったのです。最大の問題は、飛行機に比べると船や鉄道の輸送は時間がかかることです。さらに、船や鉄道は飛行機に比べて運行数が少なく、需要の変化に対して細やかな対応がしにくくなることでした。前述したように、臨機応変に需給を見る必要がある販売サイドにとって、これは喜ばしい状況ではありません。
この課題を克服できたのは、物流オペレーションを担当するソニーサプライチェーンソリューション(以下、SSCS)が、工場出荷から販売店への納品までを統合管理するメニューを開発し、船と鉄道を使用しても需給のリードタイムを大幅に減らすことができたため。「輸送から通関業務までのリードタイムが短い高速船を利用したのもポイントですね」と、SSCSの池田晃一郎さんは言います。

"ウォークマン"生産管理担当の小林さんが、TAKEさんにモーダルシフトの概要を説明。鉄道は夜中に出発して、翌日夜に東京に着く
東京の倉庫に到着してコンテナから"ウォークマン"を運び出す様子をSSCSの池田さんが説明
「どのくらい早いんですか?」と言うTAKEさんに、「船の時間は約28時間ですが、その後の鉄道での輸送も含めて、工場から目的地までは飛行機の場合より2〜3日多くかかるだけです」とSSCS池田さん。これにはTAKEさんも「意外に早いんですねえ」と感心しきりでした。
「2〜3日といえども、それによるデメリットがあっては導入できないので、生産工場、生産管理、物流、マーケティング、それぞれの部門との試行錯誤のうえ、実現できました。現在もその協力体制があってこそうまく稼働しているんです」と生産管理担当の小林さんは言います。
さらに物流部門でモーダルシフトに取り組んでいる森永知洋さんが、「今回の取り組みで、CO2排出量だけでなく、輸送コストも大幅に下げることができました。ビジネスメリットを生み出すことは、活動を継続するのに重要なんです。現状に満足せず、工夫を積み重ねることが重要だと思っています」と言うと、TAKEさんが、「ソニーが物流でも新たな改革にチャレンジし続けるということですね」と念押ししました。その言葉に、森永さんも小林さんも、ちょっと照れたような笑顔を見せていました。
さて、博多港に到着した"ウォークマン"は、コンテナのまま、港からトラックで十数分の所にあるJR貨物のコンテナヤードに運ばれます。コンテナヤードは敷地の端から端までが見通せないほど広く、たくさんのコンテナが並ぶ中を、巨大なリフトが走り回って積み下ろし作業をしています。"ウォークマン"を入れたコンテナはJRの貨車に積み込まれ、1日かけて東京に運ばれていきます。
そんな様子を見たTAKEさんは、「イケイケだった昭和ではありえないプロジェクトですね」と、時代を振り返っている様子でした。
「今まで、日本は急ぎすぎていたような気がしますね。実は年末のツアーの時、大阪から名古屋へ移動するのに近鉄で行ったんですよ。普段なら絶対に新幹線なんですけど、慌てることもないよなって。それでゴトゴト揺られながら駅弁食べて、缶ビール飲みながら景色を見ていると、みんなでいろいろ話せることがあって、すごく意味のある時間が過ごせたんです。今回の船や鉄道の利用でCO2排出量が約96%も減ったり、使い方を工夫することで日数もそんなに飛行機と変わらないじゃないですか。たぶん僕らも、新しいものは取り入れながら、いいものがあればちゃんと振り向いて取り入れる手間をかけないといけないんでしょうね。そうしないと、大事なものまで置き去りにしてしまうんだろうな」
そんな言葉を残したTAKEさんは、まぶしそうに海に浮かぶ高速船を見上げていました。

ソニーっていう、どんどん前へ前へ進んでいく企業が、最新の“ウォークマン"を、
人との関係を大事にしながら船や鉄道という方法で運んでいることに、
素直に感動しました。僕は関西人なんで、ほんとはメッチャせっかちなんですけど、
自分の10分や15分にどれだけの価値があるんだって考えると、
気持ちをゆったり持って、少し遠回りしてもいいなって。
ローカル線や船で、「旅」がしたくなりましたね。