環境配慮がきわめて重要な商品力になりつつある昨今、多くの人が手にするエントリーモデルにこそ優れた省資源・省エネ化が求められている。そのすべてをクリアした戦略モデル、そこに込められた熱き開発スピリットを追った。

環境配慮がきわめて重要な商品力になりつつある昨今、多くの人が手にするエントリーモデルにこそ優れた省資源・省エネ化が求められている。そのすべてをクリアした戦略モデル、そこに込められた熱き開発スピリットを追った。




「設計チームが一丸となって初めて実現できたチャレンジングな試み。我々がつくりあげたエコプロダクツと胸を張って紹介できる自信作です」
2011年夏、欧米市場向けに出荷がスタートしたブルーレイディスク/DVDプレーヤー『BDP-S185』。商品企画から設計、製造、物流、マーケティングまで、あらゆるセクションの技術と工夫を結集して開発された本製品を前に、ブルーレイディスクプレーヤービジネスを牽引する水倉義博は語る。
「ブルーレイディスクプレーヤー市場は、日本では少ないものの、全世界的には、競合メーカーも多く、市場自体も年々伸びています。その中でリーディングカンパニーであり続けるには、画質・音質はもちろん、環境への配慮でも妥協せずに一番良いものを目指さなければいけません。そういうビジョンのもと、いわばゼロから設計したのが今回のモデル。この10年来、モノづくりのプロセスにエコという要素を組み入れるべく努力してきましたが、その集大成です」
水倉義博
ホームエンタテインメント事業本部
HAV事業部
ホームAVビジネス責任者として設計を牽引、週末は音楽、お酒、バイクでリセット。活力は五感刺激が持論
廣岡昭彦
ソニーEMCS
マレーシア・クアラルンプールテック
マレーシアの現地スタッフと共に主にホームAV機器の設計を担当。常夏の国での赴任生活は2年目である
とはいえ、アメリカでの市場推定価格は約99ドル。ラインアップの中でも一番多く売れるエントリー機種にあたる。あえて売れ筋のマスゾーンを狙ったのは、出荷台数が多くなるほど環境面の波及効果も多く望めるからだ。さらに水倉は続ける。
「最近の欧米市場では、消費者のエコに対する意識もどんどん高くなっている。実際、米国・ウォルマートなどの量販店では、一定基準を満たしていない製品は扱ってもらえません。逆に言えば今後は、環境性能が大きな商品力、ブランド価値になる時代です」
実際に製品を見て、注目すべきは、そのコンパクトさだ。従来機種(※)で430mmだった幅を、なんと290mmまで一気にダウンサイジング、体積比では約30%も小さくした。
※ブルーレイディスク/DVDプレーヤー「BDP-S370」

今回、水倉が示した方向性のもと設計を手掛けたのは、ソニーEMCSマレーシア・クアラルンプールテックのエンジニアたち。メンバーの1人、廣岡昭彦は振り返る。
「小型化すれば輸送効率が最適化でき、輸送時のCO2排出量を大幅に減らせます。そこで、まず理想のサイズを試算しました。例えば従来モデル(※)の場合、運搬時には1つのパレットごとに8台×29段分を積み込んでいます。それを製品の横幅を290mmくらいまで削り、カートンを縦置きに変更すれば、輸送品質も十分確保しつつ、45台×9段分を積み込むことができる。この目標になるべく近付けるべく、企画段階から各担当の技術者たちが何度もすり合わせ、結果、パレットあたりの積載数は約74%向上し、輸送時のCO2排出量では約42%も削減できました」
さらに、それぞれの設計ブロックでも小型化や省エネ施策を練り上げた。心臓部にあたる集積回路、映像や音声など電気信号をやりとりする回路、ディスクドライブを動かすモーターや電源部分など、1台のブルーレイディスクプレーヤーはさまざまな技術で成り立っている。各分野の設計者たちが共通の目標に向かって走った結果、大きな相乗効果が生じた。
「例えば集積回路は、新規で起こしています。限られたスペースに収めるため、部品点数は集約しつつ、基板の構成を工夫することで従来以上の性能を実現。それ以外にもドライブやピックアップを動かすモーターを改良したり、レーザーの発光効率を上げたりと数え切れない工夫を積み上げ、最終的には動作時の消費電力を10Wまで抑えました」
つまり、従来モデル(※)の消費電力22Wに対して約55%も削減できたことになる。さらに廣岡は続ける。
「チーム全員で大きな目標を共有すること。それぞれの専門分野で環境性能を高めつつ、常に情報を共有して全体の最適化を図ること。今回改めてその大切さを痛感した気がしています」
長年の蓄積とチームワークから生まれた、究極のエコプロダクツ。その資産はこれからのものづくりへと、確実に受け継がれていきそうだ。
※ブルーレイディスク/DVDプレーヤー「BDP-S370」