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技術情報

CMOSセンサー“Exmor”

 「見えなかったものを見てみたい」そんな思いを実現するため、ソニーでは独自の"カラムA/D変換技術"を採用したCMOSセンサー"Exmor(エクスモア)"を開発している。CMOSセンサーの特徴である高速性と、CCDで培ってきたイメージセンサーの高画質化技術を融合させ、空間軸の高解像度化に加え時間軸の解像度も向上させ、イメージングワールドの無限の可能性を追求していくことこそ、ソニーがめざすものだ。
 高速のイメージセンサーを実現するために必要なこと、それは、高感度化と低ノイズ化である。CMOSセンサーでは、画素、信号読み出し回路、A/D変換回路、コントローラが一つのチップの上につくりこまれる。それぞれの回路構成や動作を最適になるように組み合わせることで、本来相反する高速化と高画質化を両立できるのだ。

高感度化を実現した画素構造

 イメージセンサーに可視光が入射すると、材料であるシリコンで光電効果が起き電子が発生する。無駄なく光を取り込んで、効率よく電子に変換することで高感度化を実現する。イメージセンサーの画素には、(1)フォトダイオード、(2)信号の蓄積開始、(3)信号の蓄積終了、(4)読み出し画素の選択、(5)選択画素の信号読み出しといった要素が必要だ。フォトダイオードと(2)〜(5)の動作を実現するためのトランジスタが1つの画素の中に構成されるわけだが、トランジスタの配列やレイアウトを工夫することで、フォトダイオードを可能な限り大きくつくり、高感度化を実現している。ソニーがCMOSセンサーの開発するに当たっては、まず、この画素部の改善に注力した。

 大きくつくったフォトダイオードに正確に光を導くことも高感度化には欠かせない。図1は画素の断面写真である。画素は上部からマイクロレンズ、カラーフィルター、層内レンズ、配線、フォトダイオードという構造をしている。マイクロレンズと層内レンズは2µmを切るような大きさの1画素1画素に正確に光を導き、カラーフィルターは赤、緑、青色の光を透過させることで、カラー画像の撮影を可能にする。層内レンズとフォトダイオードの間は配線層があり、配線層が厚いとマイクロレンズ、カラーフィルター、層内レンズを透過してきた光が配線層で遮られたり、フォトダイオード以外に集光されてしまう。ソニーでは配線材料としてCu(銅)をイメージセンサーに導入することで、この配線層の厚みを薄くし、光をフォトダイオードに有効に集められるようにしている。
  • 図1 画素断面
    図1 画素断面



低ノイズ化

 効率よく信号を発生させたとしても、そこにノイズが混入してしまっては高S/N比※1を得ることはできない。画素が形成されるシリコンに欠陥があると電子が熱的に励起され(暗電流)、ノイズとなってしまう。条件によっては、ノイズとなる電子が1個でも発生してしまうと画像上で視覚的に確認できるほどシビアであるため、暗電流の低減はイメージセンサー開発の最も重要な項目だ。そのため、欠陥の発生や汚染を極限まで抑え欠陥が発生しにくくすること、欠陥が発生しやすい場所を覆うことを行っている。

※ 1 S/N比(Signal to Noise ratio):S(信号)とN(ノイズ)の比。



列並列A/D変換による高速化

 高速化の鍵は並列信号処理。CMOSセンサーはアナログ信号である画素の信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路を持っている(図2)。このA/D変換回路を水平方向に数千個並べ、同時に動作させることで高速化を実現しているのだ。また、ソニーのCMOSセンサーはこのA/D変換回路に大きな特徴がある。ノイズを発生するアナログ回路の規模を削減することと、発生するノイズを自動的に抑圧するような回路構成を取ることで、高速化と低ノイズ化を両立させている。
  • 図2 並列A/D変換回路
  • 図2 並列A/D変換回路
    図2 並列A/D変換回路


 画素信号は画素の中のトランジスタの出力として読み出されるが、数百万画素ある各画素のトランジスタの瘁値電圧は画素毎にバラツキを持っている。この画素毎の瘁値電圧のバラツキの影響をなくすため、図3の画素信号(VSF)に示した通り、各トランジスタの初期値(リセットレベル:VRST)と入射光に応じた信号レベル(VSIG+VRST)の差分を取ること(CDS:Correlated Double Sampling、相関二重サンプリング)で、瘁値電圧に依存しない本来の画素信号(VSIG)だけを読み出すことができる。ソニーのCMOSセンサーはこのCDS動作をデジタル信号処理で行っている。
  • 図3 A/D変換動作タイミング
    図3 A/D変換動作タイミング


  • 1カウンタをダウンカウントしながらリセットレベルVRSTの検出を行う(1次デジタルサンプリング)
  • 2リセットレベルの検出後、カウンタ値を保持した状態からアップカウントして信号レベルVSIG+VRSTを検出する(2次デジタルサンプリング)
  • 3最終的なカウント値は信号レベルからリセットレベルを差し引いた、正味の信号量VSIGを検出。
    また、このデジタル的な減算処理により、列毎に配置された各コンパレータの特性や比較のためのランプ波の伝わり方のバラツキもキャンセルすることができ、高速で低ノイズのA/D変換処理が可能となっている。

今後の展開

 イメージセンサーのアプリケーション先である、ビデオカメラではHD化が加速され、デジタルスチルカメラでは画素数の増加やデジタル一眼レフカメラの普及が進み、携帯電話に搭載されるカメラも急速に多画素化している。これらのアプリケーションの進化を支えるため、ソニーはCCDでもCMOSセンサーでも多画素化、高速化を進めていく。多画素化のためには、画素の微細化が不可欠だが、一般的には感度は画素の面積に比例するため、画素が微細化されるほど感度は低下してしまう。ソニーは、これまでCCDで培ってきた高画質化技術との融合により画素の微細化にともなう感度低下を補ってきている。今後は、デバイス・プロセス技術に加え、回路技術や信号処理技術により、微細化にともなう感度低下を補い、高速化と高画質を同時に実現していく。

 CMOSセンサー "Exmor"で撮影した例を図4に挙げる。このように、ソニーでは高精細の動画や静止画の区別を意識することなく撮影することや、従来は特殊なイメージセンサーを用いたプロフェッショナルユースのカメラでしか捉えることができなかった現象を、一般のお客さまでも気軽に手軽に扱えるようにしていきたいと考えている。
  • 図4 撮影例 水風船が割れる瞬間
    図4 撮影例 水風船が割れる瞬間



表彰関連情報

 ソニーのCMOSセンサーの論文が、世界中のイメージセンサーに関連する発表の中から隔年で選出されるWalter Kosonocky Awardを2007年6月に受賞した。




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