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FeliCa(非接触ICカード技術)

 FeliCa(フェリカ)とはソニーが開発した非接触ICカード技術の総称。クレジットカードサイズのカード内にICチップとアンテナを納め、リーダ/ライタに近づけるだけで認証やデータの読み書きを行う。高いセキュリティと高速処理が特長であり、公共交通機関の乗車券システム「Suica」や「PASMO」、電子マネー「Edy」、クレジット、ポイント、IDカードなどで採用されている。また、FeliCaのICチップを搭載したおサイフケータイなどその技術はさまざまな用途へと拡大している。

全世界へICチップ累計6億500万個を出荷しているFeliCa

  • 図1 非接触ICカード FeliCa
    図1 非接触ICカード FeliCa

 FeliCaカードの内部にはソニーが独自開発したCPUとOSが搭載され、データの高速処理を可能にしている。通信には電力も供給できる 13.56MHzの周波数帯を採用。これにより電池を内蔵しないFeliCaカードへの電力供給を行いつつ、212kbpsでのデータ通信を行う。これらの技術により、リーダ/ライタとカード間はわずかに0.1秒で各種データ処理が行えるのが特長だ。

 情報の読み書きが速いだけでなく、セキュリティや安定性の高さから、鉄道業界では、JRグループの「Suica」、「ICOCA」、「TOICA」や、首都圏の鉄道とバス事業者の「PASMO」などで導入済み。2009年にはJR九州「SUGOCA」やJR北海道「Kitaca」などでの導入が予定されており、公共交通機関の乗車券システムとして欠かせない存在になっている。そのほかにビットワレットの「Edy」やセブン-イレブンの「nanaco」、などの少額決済用のシステムとしても普及している。さらに、乗車券や電子マネーなどは「おサイフケータイ」でも利用することができる。

 また、FeliCaの技術は日本だけではなく、早くから世界で注目されており、1997年に香港オクトパス社がFeliCaカードを導入。その後シンガポール、中国シンセン、インド、タイなどの世界の公共交通機関でも採用されている。ソニーでは、すでに国内外に向けてFeliCa ICチップ累計6億500万個を出荷している

※2012年7月末時点


FeliCaの原理

 FeliCa技術は利用者が携帯する「FeliCaカード(ICカード)」と読み取り装置に設置する「リーダ/ライタ」が対になって運用される。データのやりとりは、リーダ/ライタが発する微弱な電磁波を使って行われる。
  • 図2 FeliCa読み書きの仕組み
    図2 FeliCa読み書きの仕組み

 FeliCaカードには、CPUやOSが組み込まれており、小さなパソコンのような構造になっている。しかし、カード内に電源は備えていない。 FeliCaカードは電磁誘導にて電源の供給を受けているのだ。(図2)FeliCaカードをリーダ/ライタにかざすと電磁誘導により、カード内のアンテナを介して電力が発生。その電力によりFeliCaカード内のCPUが起動して、リーダ/ライタからの"問い合わせ"に反応する。データのやりとりは FeliCaカード内の抵抗値を変化させることで、リーダ/ライタから送られてくる電波に強弱をつけて反射させて行う。

 データ通信では、リーダ/ライタはFeliCaカードの"素性"を問い合わせ、それについてICカードが識別信号を発することでIC カードの検出が行われる。電磁誘導を使った起電力を得るために、FeliCaでは電力送信が許可されている13.56MHzの周波数帯の無線を採用した。電磁誘導は無接点で電力を供給できるのがメリットだが、コイル間の距離や位置によって起電力に差が発生するのが弱点だ。だが、それによるセキュリティとしてのメリットも出ている。

 電磁誘導ではリーダ/ライタとFeliCaカードの接する位置により、カードが受けられる電力に差が出る。例えば自動改札機に内蔵されるリーダ/ライタの接触面は約15センチ程度の大きさがあるが、このなかでFeliCaカードがもっとも高い電力を得られるのは中央部付近になる。しかし自動改札機のように、リーダ/ライタとFeliCaカードがスライドするように接すると、リーダ/ライタの周辺で発生する微弱な起動電流でCPUが動作して、電力不足による誤動作が発生する可能性がある。この対策としてFeliCaは突然の電力遮断があっても復帰可能な構造を持ち、且つもっとも低い電力でCPUが最大限動作するように設計されており、電力不足による誤動作を防いでいる。

高速処理を可能にした技術

 FeliCaは他のICカード方式と比べて認証速度が格段に速いのが特長だ。またこの特長により、日本のような過密輸送を前提とする各種交通機関での採用を実現している。高速処理を可能にした大きな技術は2つある。一つは距離変動に強い符号方式の採用、もう一つは独自の相互認証の採用だ。

 FeliCaカードはリーダ/ライタおよびFeliCaカードで生成されたデータを符号化して送受信を行っている。FeliCaシステムには、通常のシリアル通信と違い、非接触という特殊な環境下で使われるための技術が採用されている。まず効率のよいパケット通信方式の採用だ。また、 FeliCaはFeliCa OSが生成したコマンド・データと、リーダ/ライタからの問いかけに対して反応するレスポンス・データを、カードとリーダ/ライタ間で通信して認証・記録を行う。このときに使用されているのが距離変動に強い符号化方式の「Manchester(マンチェスター)方式」だ。

●マンチェスター方式
 FeliCaカードとリーダ/ライタ間の通信は「0」と「1」のデジタル方式で行われる。「マンチェスター方式」とは「0」と「1」を信号の増減の変異で伝達するようになっている。例えば「0」はビット区間の中央あたりで低レベルから高レベルに波形を上昇させる。「1」は逆に高レベルから低レベルに波形を変化させて通信する。このように「マンチェスター方式」は直流成分を持たず再生時の瘁値設定が容易なため、FeliCaカードとリーダ/ライタの間に距離があっても、データの伝送を行えるのが特長だ。
  • 図3 非接触形ICカードの符号化方式
    図3 非接触形ICカードの符号化方式の一つである、NRZ(Non Return to Zero)方式の場合は、「0」を低レベル、「1」を高レベルに置き換えるため、転送するデータによって(同じビットが連続して続く場合など)平均値が偏り、距離が変動した場合、「0」と「1」が判別しづらいという弱点がある。一方マンチェスター方式は、流動的な信号伝達を行うため信号の周期を取りやすくなるほか、ノイズにも強い。


  • 図4 マルチアプリケーション
    図4 マルチアプリケーション

●同時に複数の認証を行う、独自の相互認証
 FeliCaではセキュアな状態での複数の処理を同時に行うトランザクション処理時に、カードとリーダ/ライタ間で、オリジナルの相互認証を行っている。通常複数の機能について、認証を行う場合は、それぞれ認証が必要な機能にアクセスして個々に認証を行わなければならない。これでは機能が増えるほどに認証時間が増えてしまい、決済や認証サービスの効率を悪化させてしまう。
 しかし、FeliCaは各機能と個別に認証を行うのではなく、複数のアクセス鍵から簡易的な鍵とも言える「合成鍵」を生成し、同時に複数の機能に対して相互認証を行う。この縮退鍵を使えば同時に最大16までのサービスに対応可能。例えば「個人認証」「決済」「残高」「ポイント」などを瞬時に行えるのだ。

高いセキュリティ機能

 FeliCaは非接触のICカードとして世界初のISO/IEC 15408 EAL4の認定を受けている。このISO/IEC 15408 EAL4とは、セキュリティ評価基準の国際標準で、認定基準が厳しく非接触ICカードが認証を受けるのは難しいと言われていた。しかし、FeliCaのセキュリティ技術は、カードとリーダ/ライタ間の相互認証と通信データを暗号化して処理している。この暗号化にはオープンスタンダードなセキュリティアルゴリズムを採用している。通信データで使われる暗号化鍵は、相互認証時に乱数を使い、トランザクションごとに暗号を動的に生成するため、なりすましなどを防いでいる。

今後の技術展開

 FeliCaは「半導体の設計・製造」、「通信技術」「セキュリティ技術」などソニーが蓄えてきた技術が詰め込まれて完成したシステム。強固なセキュリティを備えながらも高速認証を実現し、さらにおサイフケータイやパソコンなどのさまざまな機器へ応用できる利便性も備えている。また、日本をはじめとするアジア圏のみならず、今後は北米やヨーロッパなども視野に入れ、展開する予定だ。今後、FeliCaの通信技術を包含したNear Field Communication(NFC)がさまざまな民生用エレクトロニクス機器へ搭載され、直感的な「タッチするだけの」簡単データ転送や非接触ICカードを利用した課金が行えるようになると、さらに幅広いコンテンツを簡単に楽しむことができるようになると考えられる。



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