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技術情報

Marlin(著作権保護)

 デジタル化された音楽や映像等の著作物は、複製しても品質が劣化しないため、インターネットの普及やPCの高速・大容量化にともない、著作者の許諾を得ない第三者による複製や再利用などが増えている。このため、デジタルコンテンツの著作権を保護し、その複製や再利用を制御又は制限する DRM(Digital Rights Management:デジタル著作権保護)技術が幅広く使われるようになってきている。ソニーは、2005年、インタートラスト、松下電器産業、フィリップス、サムスン電子の4社とCE(Consumer Electronics)向けにDRMの標準技術仕様を策定するMarlin Joint Development Association (Marlin JDA・共同開発組織)を設立。Marlin JDAが策定する技術仕様により各メーカーは、インターネットや放送、モバイル分野におけるコンテンツ配信をサポートするDRMを、自社製品に組み込むことができる。またMarlin仕様準拠のコンテンツと機器ならば、ユーザーは、コンテンツをその入手方法や利用する機器のメーカーを問わず楽しめるというものだ。

Consumer Electronics業界向けのDRM

 昨今、インターネット配信における著作権保護技術は、IT業界が主体的となって開発したDRM、たとえばApple社が開発した「FairPlay」や Microsoft社が開発した「WMDRM (Windows Media DRM)」が主流となってきている。そういった背景の中CE(Consumer Electronics)業界からも、CEのスタイルにあったDRMをという声が高まり、ソニー、松下電器産業、フィリップス、サムスン電子、そして DRMの基本技術を有しているインタートラスト社の5社が集まり、Marlin(マーリン)と呼ばれるDRMの開発を行うこととなった。

<マーリンの運営組織>
 マーリンの活動は、ファウンダーである5社がリードをしながら、仕様に関して議論を行うMDC(Marlin Developer Community )と、その商用ライセンスを行うMTMO(Marlin Trust Management Organization)の2つの組織で推進されている。

●MDC(Marlin Developer Community)
 2007年11月現在14社がメンバーとなって技術議論を行っているが、メンバー以外でも策定が完了した仕様書が見ることができるよう、EULA (End User License Agreement )にサインするだけで策定が完了したすべての仕様書をダウンロードできるようにしている。
参照:http://www.marlin-community.com
●MTMO(Marlin Trust Management Organization)
 この技術を用いて商用ビジネスを行う場合には、MTMOと商用ライセンス契約を締結する必要がある。MTMOでは最終製品製造者向け、サービスプロバイダー向け、ミドルウエア(オペレーティングシステム(OS)とアプリケーションソフトの中間的な処理・動作を行うソフトウェア)やLSIなどのコンポーネント製造販売を行う企業向けのライセンスをそれぞれ用意している。2007年11月現在、15社がライセンシーになっている。
参照:http://www.marlin-trust.com/

 上記の二つの組織に加え、日本国内のIPTV (Internet Protocol Television)のスムーズな立ち上げをサポートし、日本国内で商用利用するために必要となる日本固有のコンプライアンスルールやガイドラインの検討、策定、提供を行うことを目的としてMarlin利用者連絡会が設立されている。こちらに関しては2007年11月現在、29社がメンバーとなっている。
参照:http://www.marlinusers-japan.org
  • 図1 マーリンの運営組織
    図1 マーリンの運営組織



目的別に存在するマーリンの仕様

 マーリンDRMは、目的に応じていくつかの仕様が存在している。その中でもここでは有望視されている2つを紹介する。一つはマーリンBB(Broadband)であり、もう一つはマーリンIPTV-ESである。

1)機器間コピーを実現するマーリンBB
 マーリンBBはその名のごとく、ブロードバンド・インターネットでの配信をターゲットとしたもので、配信部分にはニモ(NEMO)と呼ばれるWebサービスベースの技術をベースにしたプロトコル(通信手順・通信規約)が使われる。メッセージはXML形式でやりとりされ、解読用の鍵交換には公開鍵暗号方式の一つである「RSA」が使われる。またコンテンツの使用条件はプランクトンと呼ばれるバイトコードで記述され、コンテンツは米国政府の次世代標準暗号化方式である「AES( Advanced Encryption Standard )」で暗号化される。

※XML形式:文書やデータの意味や構造を記述するためのマークアップ言語の一つ


 マーリンBBの一番特徴的な点はドメインモデルに対応しているところである。これまでに提案されていたDRMにおいては、ダウンロードしたAVコンテンツを異なる機器間で簡単に交換をすることができなかった。著作権を守りながら、この不便さを解決するひとつの方法がドメインモデルというコンセプトである。ドメインとはファイル交換をさせたい機器の集まり、グループのことである。また、ドメインモデルは以下の方法でつくられる。

1. ユーザー自身とユーザーが持っている機器をマーリン・サービスのサーバーに登録をする
2. サーバーはそのユーザーに対応するドメイン鍵を生成する
3. サーバーはそのドメイン鍵を機器に発行し、機器はそのドメイン鍵を安全に保存する


  • 図2 ドメインへの機器登録
    図2 ドメインへの機器登録


 コンテンツのダウンロード時、配信サーバーは、暗号化されたコンテンツとライセンスと呼ばれるデータを機器に配信する。コンテンツは、コンテンツ鍵と呼ばれる鍵でAESアルゴリズムを用いて暗号化されている。ライセンスは、ドメイン鍵で暗号化したコンテンツ鍵とコンテンツの使用条件が含まれる。

 再生時、機器はドメイン鍵を使ってライセンスの中に書かれている暗号化されたコンテンツ鍵を復号する。ついで機器は、コンテンツ鍵を用いて暗号化コンテンツを復号、ライセンスに書かれた使用条件にしたがってコンテンツの再生を行う。同じドメイン鍵を持つドメインのメンバーになっている機器間ではファイルのコピーが許されるため、ユーザーに対してはMP3ファイルと同じような感覚でファイルを扱うようなシステムの提案が可能である。
  • 図3 コンテンツのダウンロード
    図3 コンテンツのダウンロード


  • 図4 コンテンツ再生
    図4 コンテンツ再生


2)デジタルテレビプラットフォームに適したマーリンIPTV-ES
 マーリンIPTV-ESは2007年度に日本国内でのIPTVビジネスを最初のターゲットとしてつくられたDRMである。ストリーミングを実現する VOD( Video On Demand )、IPマルチキャストに加えて、一度ハードディスクなどに保存したのちに再生を行うダウンロードや、異なるDRMで守られているメディア(例えばメモリースティックやブルーレイディスク)等に書き込むことを許すエキスポート機能も準備されている。最近のDLNA(DTCP-IP)をサポートしているようなデジタルテレビプラットフォームに適したDRMとなっている。コンテンツはAESアルゴリズムを用いて安全に守られている。

家庭内LANなどのIPネットワーク上で、コピープロテクションにより保護されたコンテンツを伝送するための技術規格


  • 図5 IPTV-ESがサポートする機能
    図5 IPTV-ESがサポートする機能



今後の展開

 ソニーは著作権保護技術に対してOpenMGをはじめとして、長年の経験がある。マーリンBBとマーリンIPTV-ESは、その経験を活かし、ソニーがリードして仕様策定したものである。本年度よりマーリンの導入が<ブラビア>の秋のモデルを皮切りに始まった。今後マーリンは、いろいろなデバイス、サービスに導入することが予定されている。

 著作権保護技術は、ややもするとルールが厳しくなってしまいユーザーにとって使いにくいものとなってしまう。逆に緩すぎると作成したコンテンツが不当にコピーされてしまい、コンテンツ制作者が次の作品のための制作費が調達できないというようなことが起こってしまう。

 ソニーはグループの中にハードウェア開発部門とソフトウェア開発部門を備えており、コンテンツホルダーと機器とサービスの橋渡しとして業界をリードし、お客さまから安全かつ便利と言われるよう、ユーザー視点に立った著作権保護技術として展開していきたいと考えている。

※掲載製品のイラストはあくまでイメージです。






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