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技術情報

スーパートップエミッション(有機ELパネル構造)

 ソニーは、優れた動画応答や鮮やかな色彩表現が可能な自発光型ディスプレイデバイス・有機ELの性能をさらに飛躍させるため、独自の技術「スーパートップエミッション」を開発した。ここでは、有機ELの原理と、「スーパートップエミッション」の技術を紹介する。

有機ELの原理

有機ELの基本構造例
 「EL」はElectro Luminescence(エレクトロルミネッセンス)のことで電気エネルギーを光に変換するプロセスを指す。太陽電池は光をとりこんで電気エネルギーをつくるが、ELは太陽電池とちょうど逆の働きをする。電気を流すと光る性質を持つ有機材料を使ったディスプレイが有機ELディスプレイだ。

 有機ELは、数 100nmの有機EL膜の両側を電極で挟んだ構造になっており、電極から有機EL膜に注入された電子と正孔が、有機EL膜内を移動して発光層(EML)内で再結合することで、発光層の有機分子が発光する。自発光型ディスプレイである有機ELは、高コントラスト、高速応答、完全固体構造が可能、広視野角等の特長がある。

  • 図1 有機ELの基本構造例


発光のメカニズム
 有機EL膜〔HTL(正孔輸送層)+EML(発光層)+ETL(電子輸送層)〕の両端の電極へ電圧を印加すると、陰極から電子、陽極から正孔が有機EL膜中に流れ込み、発光層の発光分子で電子と正孔が再結合し、発光する。

 電流による発光であること、電圧-電流の関係がダイオード特性であることから英語では有機ELをOLED(Organic Light Emitting Diode)と呼んでいる。

  • 図2 有機層の分子のエネルギーレベルと電荷の流れ



パネルの基本構造

発光したEL光を外部に効率よく取り出せるトップエミッション方式
 有機ELパネルでの光の取り出し方法には、有機層の「上」からと「下」からの2種類がある。製造工程が比較的簡単とされているボトムエミッション方式は、有機分子の光をTFT基板側の「下」から取り出す方式。ただTFT基板にはEL駆動用の画素回路が存在するため、光取り出し領域が限られてしまい、有機分子の光利用効率が落ちてしまう。これに対しソニーの採用したトップエミッション方式は画素回路など光をさえぎるものがない封止ガラス側の「上」から光を取り出すので、発光したEL光を外部に効率よく取り出し、低消費電力かつ長寿命を実現できる。

  • 図3 ボトムエミッション方式とトップエミッション方式構造比較


完全固体封止でさらなる薄型化が可能に
 一般的に有機EL材料は水分や酸素に弱いとされており、有機EL膜を蒸着したまま大気中に放置するとすぐに特性が劣化してしまう。つまり有機EL膜を完全に大気から遮断するための封止構造が必須となる。従来有機EL膜の封止は金属カバーを使っていたので封止側から光を取り出すことができず、ボトムエミッション方式しか実現できなかったが、トップエミッション方式を採用するために、ソニーは封止基板を樹脂接着剤で直接EL基板に貼り付ける方式を開発。これにより、中空部分がないため大型化が可能、また、封止ガラスを薄型化することによるパネルの薄型化、さらにはプラスチックフィルム封止による超薄型パネル実現への道が開けた。

スーパートップエミッション


  • 図4 スーパートップエミッション

  • 図5 発光スペクトルのキャビティの有無比較

マイクロキャビティ構造
 上述の有機ELパネル構造の特性に加え、ソニー独自の「スーパートップエミッション」方式(図4)は、マイクロキャビティ(微小共振器)構造とカラーフィルタにより、色純度アップと高コントラストと低消費電力を同時に実現した。

 マイクロキャビティ構造は、上下電極間での光の共振効果を利用している。RGB(赤・緑・青)各色の光の波長はそれぞれ異なるため、各色のELスペクトルピーク波長に陰極(カソード)・陽極(アノード)電極間の光路長を合致させ、各色から最も強い光を取り出すように有機層の膜厚を変えている。発生した光は、カソード半透過膜とアノード電極(反射膜)との間で反射を繰り返す。光路長の合致した波長の光のみを共振させて強調し、光路長のずれたそれ以外の波長の光を弱める。この結果、外部に取り出される光のスペクトルが急峻かつ高強度になり、輝度と色純度が向上するという構造だ。

マイクロキャビティ構造とカラーフィルタで外光反射を抑制

  • 図6 マイクロキャビティ構造とカラーフィルタによる外光反射の低減効果

 従来のパネルは、パネル表面に円偏光板(位相差板と偏光板)を設置し、外光反射を防いでいたが、これではEL光量が半減してしまう。ソニーは、円偏光板を使用せず、マイクロキャビティ構造にカラーフィルタを組み合わせたことで、外光反射を防ぐと同時に、色純度を向上。これにより、低消費電力でかつ長寿命、高画質を実現した。
※図6は緑の場合だが、赤、青の場合も同様。





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