●柔らかく、曲げることができる有機物
人と親和性の高いエレクトロニクスを実現するための基板には、大きな面積でも軽く丈夫で割れにくいプラスチック基板が適している。有機物ならば、無機物と異なり耐熱性の低いプラスチック基板上にでも、良質な薄膜を形成することが可能。
※ここでいう有機物とは、炭素(C)を骨格として、その他の元素を結合させた分子のことで、プラスチックやビニールのような樹脂に近い材料である。従来のトランジスタは、無機物であるシリコン(Si:ケイ素)結晶からつくる。このシリコン結晶は、非常に硬い材料だ。一方、有機物は軽く、柔らかい点が特長であり、有機物は人間と親和性の高い柔らかいデバイスに向いた材料と言える。また有機物は通常、電気を通しにくい材料であるが、近年は導電性ポリマーに代表されるように、電気を通す有機物を化学合成によってつくりだすことが可能になってきた。
●室温での作製が可能な有機トランジスタ
有機トランジスタは、その半導体層に有機半導体(図2)を用いたトランジスタである(図3)。半導体として数10 nmの薄膜を用いる場合は、有機薄膜トランジスタ(Organic Thin-Film Transistor:OTFT)とも呼ばれている。仕組みは、通常の無機トランジスタと同様であり、ゲート(gate)電極※にかける電圧を変化させることで、ソース(source)電極およびドレイン(drain)電極間の有機半導体中を流れる電流をオン/オフすることが可能だ。無機トランジスタとの大きな違いの一つは、その作製温度にある。通常無機トランジスタは、500〜1000℃もの高い温度が必要だが、有機トランジスタは室温〜200℃で作製することが可能である。このため、有機トランジスタは、熱に弱いプラスチック上にも形成でき、軽く薄いだけでなく、柔らかく曲げることのできるフレキシブルディスプレイや、フレキシブルセンサーなどのユニークなデバイスの実現が可能なのだ。