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技術情報

PlaceEngine(無線LAN電波による位置測位技術)

 従来、機器の位置認識にはGPSが用いられてきたが、屋内での使用が困難だったり、位置測位開始までに時間がかかるなどの問題があった。 PlaceEngine技術は、無線LAN(Wi-Fi)の普及を背景に、不特定の膨大な個数のWi-Fiアクセスポイントから発信される電波情報を用いて位置認識を行う方式であり、GPSでは測位できない地下や屋内での位置推定を行うことを可能とする。

PlaceEngine システムの構成

 PlaceEngine システムは、位置を推定するエンジンであるPlaceEngineサーバーとWi-Fiデバイス搭載端末、Wi-Fi電波情報を測定する PlaceEngineクライアントから構成される。システムは、PlaceEngineサーバーとWi-Fiデバイス搭載端末上で動作する。
  • 図1 PlaceEngineシステムイメージ
    図1 PlaceEngineシステムイメージ


 PlaceEngine システムを用いて、周囲のWi-Fiアクセスポイントの電波情報から位置を推定し、関連情報を提示するまでの流れを以下に示す。
1. PlaceEngine を利用するためには、まず専用のPlaceEngine クライアントソフトをWi-Fi端末上にインストールする必要がある。
2. PlaceEngineクライアントソフトは、近傍のWi-Fiアクセスポイントから流れる電波を観測し、 Wi-Fi 電測情報 (MACアドレス、SSID, 電界強度などの情報) として取得する。
3. クライアントソフトは、Wi-Fi電測情報を PlaceEngine サーバーに送信する。
4. PlaceEngine サーバーは、受け取った Wi-Fi 電測情報と、あらかじめサーバーに蓄えられているWi-Fi電測情報のデータベースとから、位置情報 (緯度経度や住所情報など) を推定し、クライアントソフトに返す。
5. もしPlaceEngineサーバーから推定結果が返ってこなかったり、誤った結果が返ってきた場合は、ユーザーが任意で現在位置を登録したり、修正したりすることができる。
6. PlaceEngineクライアントソフトは、 PlaceEngine APIに対応したWebページとも連携して動作する。訪れたユーザーがWebサイト上の「現在地を取得」ボタンを押すと、Web上に現在位置に関連した位置指向サービス(地図を現在位置を中心に表示したり、周辺のレストラン情報や交通情報などの地域情報に関するサイトなど)を実現することが可能となる。


 さらに、ネットワーク接続時以外(オフライン時)でもPlaceEngineを通じて現在位置を求めることも可能である。その場合、 PlaceEngine クライアントは予めローカルに保存してあるデータベース「PEローカルDB」を参照することにより、緯度経度の情報を求め、その情報をアプリケーションに返す。この方法は“PSP”「プレイステーション・ポータブル」などの携帯ゲーム機などで採用されており、ユーザーは定期的に最新の「PEローカルDB」をダウンロードして機器側に保存することができる。

5〜100メートルの位置推定精度

 PlaceEngine の位置推定精度は、クライアントソフトが位置を問い合わせた場所の Wi-Fi 電測情報の状況 (アクセスポイントの密集度など) や、その時点でサーバー側に登録されている Wi-Fi 電測情報のデータベースの状況によって異なる。したがって、位置推定精度の正確さを測るのは難しいが、おおむね 5m〜100m 程度の範囲内で位置が推定される。

ユーザーが参加することで位置精度が向上

 PlaceEngineは、ユーザーによる位置検索行為や、明示的な位置登録行為など、ユーザーが参加することで、対応地域や位置精度も向上して育っていき、利用されればされるほど位置情報基盤としてのサービスが充実、自己メンテナンスがされていくという特徴がある。
  • 図2 PlaceEngine対応地域のイメージ(ユーザーが参加することで、対応地域や位置精度が向上)
    図2 PlaceEngine対応地域のイメージ(ユーザーが参加することで、対応地域や位置精度が向上)


 また、PlaceEngineは昨今のWi-Fi搭載端末やWi-Fiアクセスポイントなどの急速な普及により、都市部に特化して極めてきめ細かい位置情報を取得できるという特徴も有しており、都市生活者の日常の導線上で有効に働く位置取得の手段となる。図3は、山手線に乗車した状態で、 PlaceEngineが搭載されている携帯ゲーム機を利用して、位置取得を定期的(10秒ごと)に行って測位結果を地図上にプロットした例である。
  • 図3 山手線に乗車し位置取得結果を記録した例
    図3 山手線に乗車し位置取得結果を記録した例



今後の展開

 PlaceEngineでは、無線LAN電波の三点測量に加えて、電波のパターンマッチングを導入することによって、電波情報に対応付けた任意の文字列タグを検索することが可能である。現在、PlaceEngine サービスでは、この技術を使って、ユーザーの絶対位置(緯度経度)に加えて、建物階情報(フロア情報)を提供している。GPSの場合は高度を測位することが不可能であるが、PlaceEngine の場合は、このようなパターンマッチングをすることによって、ビル内の何階にいるという情報を提供できる。将来は、フロア情報以外にも、ビルの名前、あるエリアの名前(例えば、商店街、駅名、複合施設の名前)も提供することを視野に入れている。

PlaceEngineの研究開発はもともとソニーコンピュータサイエンス研究所で始まったが、ネットワーク外部性などを考慮すると、一社の技術/製品に閉じるよりも、ネットワーク上でできるだけオープンにしてエコシステムとして育てて行くほうが最終的な価値がより高まるとの判断を経て、ソネットエンタテインメント出資の元、クウジット株式会社(www.koozyt.com)が発足した。クウジットではPlaceEngine技術のライセンシングやソリューション提案などを行っており、“PSP”「プレイステーション・ポータブル」のゲームタイトル群や、大手サービスサイトなどと連携して PlaceEngine事業を展開し、現在に至っている。



学会・論文・特許情報

  • 暦本純一, "Sensonomy, PlaceEngine, and LifeTag: 実世界と融合するネットワーク", データベースとWeb情報システムに関するシンポジウム(DBWeb2007), 2007.
  • Jun Rekimoto, "Toward Cybernetic-City: Sensonomy and Location Aware Computing", Geolocation and its social issues, Seminar TECOG, Fondation Maison des Sciences de l'Homme, 2007.
  • Jun Rekimoto, Takashi Miyaki, and Takaaki Ishizawa, "LifeTag: WiFi-based Continuous Location Logging for Life Pattern Analysis", 3rd International Symposium on Location- and Context-Awareness (LOCA2007), pp.35-49, 2007. [ PDF ]
  • 暦本純一, 味八木 崇, "When becomes Where: WiFi セルフロギングによる継続的位置履歴記録とその応用", インタラクション2007, 2007. [ PDF ]
  • Jun Rekimoto, "From Folksonomy to Sensonomy: Convergence of Real World Activities and Online Space", International Symposium on Applications and the Internet (SAINT2007) keynote.
  • 暦本純一, "PlaceEngineによる位置情報Mashup", PLACE+:新世代ロケーションアウェア技術・サービスに関するワークショップ, 2006. [ PDF(slide) ]
  • 暦本純一, 塩野崎敦, 末吉隆彦, 味八木崇, "PlaceEngine:実世界集合知に基づくWiFi位置情報基盤", インターネットコンファレンス2006, pp.95-104, 2006. [ PDF ]

表彰関連情報

 2008年(第18回)「日経BP技術賞」の「部門賞」(情報通信部門)を受賞




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