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技術情報

TransferJet(近接無線転送技術)

 TransferJet(トランスファージェット)とは、ソニーが提案し、現在コンソーシアムで規格策定中の新しい近接無線転送技術である。データを転送したい相手に機器を直接かざすことにより、従来の無線技術の課題であった複雑な接続設定を不要にし、560Mbps(最大)で高速転送が可能である。例えばデジタルカメラを直接テレビにかざすだけで静止画を画面に映し出したり、携帯電話を携帯オーディオ端末に直接かざして音楽ファイルを転送するなど、さまざまな機器のUniversal Interface(ユニバーサルインターフェース)、コネクターやケーブル、メモリーカードの代わりなどとして幅広く利用できる可能性がある。
 2011年6月には国際標準化機関Ecma Internationalの総会において、TransferJetが近接無線通信技術の標準規格として承認された。

あえて「数cmしか飛ばない無線」を開発

 テレビのリモコンはボタンを押すと必ずテレビが反応し、携帯電話は電源を入れると必ず基地局に接続される。そのため子どもからお年寄りまで無線を意識することなく使うことができるが、一般的な無線システムは最初に相手を選ぶ操作が必要になり、この設定が難しい。

 TransferJetがめざしたのは「誰にでも簡単に使える無線技術」。通信距離を数cmと割り切ることにより、通信したい機器同士を直接かざすだけで通信を行うという、直感的なインターフェースの採用により、従来のような複雑な接続設定やアクセスポイントの存在を不要にした。

 TransferJetを使うと、上図のようにCDに携帯電話をかざして一定時間だけ曲を視聴し、気に入った曲があればその場で携帯電話にダウンロードするようなサービスも可能になる。通信距離が数cmのTransferJetだからこそ、複数ある隣り合ったCDとの区別が可能になる

誘導電界を利用した新しい通信の実現 - TransferJet Coupler -

 ソニーは放射電磁界を用いた従来の無線アンテナではなく、誘導電界を用いたアンテナ「TransferJet Coupler(トランスファージェットカプラ)」を新規開発。結合電極、共振スタブ、グランドで構成され、共振スタブに信号が入力されると、結合電極に電荷が溜まり、その電荷と大きさが等しく符号の異なるイメージ電荷*がグランドに発生する。それらの電荷によって構成される微小電気ダイポール(双極子)が「TransferJet Coupler」の基本構造である。

イメージ電荷:「金属板」と「電荷」がある時、金属板の逆側にあたかも鏡に映したように発生する仮想の電荷。電気鏡像 とも言う。


  • 図1「TransferJet Coupler」の構成と原理
    図1「TransferJet Coupler」の構成と原理
    正面方向(Z軸方向)に電界の縦波を発生させる


 TransferJet Couplerは従来のアンテナと比べ、近距離では高い利得を得ながら、離れると急激に減衰する特徴を持ち、近づけると通信が始まり、離すと通信が終わるという非常にわかりやすい操作性をユーザーに提供することが可能である。これにより、ユーザーの「この無線は本当につながっているんだろうか?」という不安を解消することができる。
  • 図2「TransferJet Coupler」と従来のアンテナとの比較
    図2「TransferJet Coupler」と従来のアンテナとの比較
    近距離では高い利得だが、距離が離れると急激に利得が落ちているのがわかる



安定した高速転送

 物理層の転送レートは560Mbpsまで対応。エラー訂正やプロトコルのオーバーヘッドを考慮しても、実効レートで375Mbpsを達成。更に通信状況に応じて最適な転送レートを選択する機能を搭載しており、通信状態が悪い場合には自動的に転送レートを落としながら通信を維持することができる。

近接無線通信特有の問題も解決

 TransferJetには、機器の固有MACアドレス※等を認識する機能がある。この機能を使うと、自分が接続したい機器を予め登録することが可能。自分の家にある機器だけを登録しておけば、満員電車の中で、見知らぬ人に勝手にデータを取られることを防ぐことができる。旅行先やパーティーなどで他人の機器と接続する場合には、その機能を解除することにより、不特定多数の人と通信を行うことができる。

※通信機器の固有ID番号



微弱無線システムの実現

 高速転送を実現する一方で、送信電力を抑えることにも成功。送信電力が小さいと言われるUWB(ウルトラワイドバンド)無線方式と比べても 1/700以下の送信電力であり、日本では微弱無線局の規定に準拠。これにより国内では屋内・屋外、更には車の中でも使用することができる。

 さらに微弱出力による近接専用の無線システムのため、他の無線システムに干渉を与えることがほとんどなく、周波数帯の異なる、無線LANやBluetoothとの干渉も回避できる。

中心周波数 4.48GHz帯
送信電力 -70dBm/MHz以下(平均電力)
国内では微弱無線局の規定に準拠 諸外国はその国の電波規則に準拠
転送レート 560Mbps(MAX)/ 実効レート 375Mbps
通信状況に応じて最適な転送レートを選択する機能を搭載
通信距離 数cm以内を想定
表1 TransferJet 仕様概要

今後の展開

 TransferJetはさまざまな機器に搭載が可能な無線技術である。ソニーは、大容量データの転送手段として、今後この技術の採用を広く業界に働きかけ、TransferJetを適用した製品やサービスの実現を通して、モバイル機器を中心とするコンテンツ社会のニーズに応えていく予定だ。
  • 図3 商品展開イメージ
    図3 商品展開イメージ






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