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技術情報

TruBlackディスプレイ(液晶ディスプレイ)

 ソニーのデジタルフォトフレームや"サイバーショット"、"ハンディカム"などに使われているTruBlack(トゥルーブラック) ディスプレイは、太陽光や蛍光灯による光の散乱と映り込みを最小限に抑え、光の反射率をコントロールすることで高いコントラスト比と視認性を実現している。これはハイビジョン画質の美しさをそのまま再現するために、ソニーが機能性材料と構造を見直すことから始めた結果だ。

TruBlack ディスプレイの構造

 ディスプレイはより高画質・高精細な性能をめざして日々開発が進められているが、実際には液晶モジュールの構造上の光学損失が発生し、本来の性能を充分発揮できていない場合が多く存在する。従来の液晶モジュール構造は、液晶モジュールとフロントパネルの間に空気の層(Air Gap:エアギャップ)を持つことで外部の衝撃から液晶モジュールを守る「エアギャップ構造」が主流だった。しかし、このエアギャップが屈折率差を発生させて光の散乱による輝度・コントラストの低下を招き、画面を見にくくする原因となっていた。

ソニーのデジタルフォトフレームでは

(1)液晶モジュールとフロントパネルの間(エアギャップ)に光の屈折率を制御した弾性を持つ紫外線硬化型樹脂(光学弾性樹脂)を充填させ、

(2)表面に反射防止フィルムを使う
ことで、太陽光や蛍光灯による光の散乱と映り込みを最小限に抑え、高いコントラスト比を実現。エアギャップ構造に比べて視認性を高めると同時に、パネルの強度が補強されたTruBlackディスプレイの開発に成功した。
  • 図1:TruBlackディスプレイ画面比較
    図1:TruBlackディスプレイ画面比較



液晶ディスプレイの表示能力に影響を与えない光学弾性樹脂の設計

 TruBlackディスプレイは光学弾性樹脂の設計段階で、耐光性に優れ、樹脂の化学構造から可視光を吸収しない材料を選定している。さらに製品で使用するフロントパネルの持つ屈曲率に近いレベルに制御することで、理論上は屈折率差を限りなくゼロに近づけた、高い光学特性を持つ樹脂を開発することができた。
  • 図2: 屈折率制御による樹脂設計の原理
  • 図2: 屈折率制御による樹脂設計の原理
    図2: 屈折率制御による樹脂設計の原理


 また、紫外線硬化型樹脂を液晶モジュールとフロントパネルの間に充填・硬化する場合、発生する内部応力=弾性率×硬化収縮の関係式で表され、弾性率が高いと歪みが発生して配向乱れの原因、硬化収縮率が高いと反りの原因になる。これは液晶パネルの光学特性を低下させ、表示不良を発生させるリスクになるため、樹脂設計では、樹脂の弾性率を低く抑えるとともに硬化収縮率を極力抑える必要があった。

 また、液晶パネルは薄型化がすすみ、エアギャップが狭くなってきているため、エアギャップ4〜5µmが100nm〜200nm変動するだけで配向乱れを起こしてしまう。

 ソニーはこれを回避するべく、樹脂の材料分子設計・開発、配合調整などを行うことで、シリコーンゲルレベルの低弾性率:5.0×10³Paを達成。通常のアクリル系紫外線硬化型接着剤の硬化収縮率6〜7%に対し、硬化収縮率1.8%を達成し、液晶パネルに影響を与えない光学弾性樹脂が完成した。
  • 図3: 硬化収縮率、弾性率の違いによる光学歪み比較と液晶表示の影響
    図3: 硬化収縮率、弾性率の違いによる光学歪み比較と液晶表示の影響
    高弾性高収縮樹脂では周辺を歪ませているが、低弾性低収縮樹脂ではわずかな歪みも発生させていない。また、液晶の配向乱れ・表示不良を発生させることなく樹脂充填が可能となっている。



フロントパネルに合わせ、光学特性を制御した反射防止フィルム

 反射防止フィルムとは一般的にAnti-Reflectionの頭文字をとりARと呼ばれることが多く(以降ARフィルム)、光の干渉作用を利用することにより反射の光を低減させることで透過率を上げ、画質の再現性を高め、主に小型の表示装置に多く使われている。フロントパネルに光の波長を任意にスライドさせるようなごく薄いAR膜を設け、空気側の界面と基材側の界面から反射される光の波が打ち消しあうことで低反射を実現している。
  • 図4:反射防止の原理
    図4:反射防止の原理


 ARフィルムには現在大きく分類して、塗布方式で製造される塗布型ARと真空中でスパッタリングや蒸着技術を用いて作られるドライARがある。
より精度の高い膜厚制御が可能なのはドライARで、反射率や物理的な特性に優れているため、中・小型ディスプレイパネルのハイエンドモデルにはドライAR、中型から大型の汎用ディスプレイパネルには塗布型ARが使われる傾向がある。

 TruBlackディスプレイに使用されている反射防止フィルムは高い膜厚制御が可能なドライARを採用。さらに従来品に比べ、よりワイドレンジで反射を下げて反射の色がつかない工夫をすることで、高い画質再現性を実現している。
図5:従来品とTruBlack用反射防止フィルムの性能比較 図5:従来品とTruBlack用反射防止フィルムの性能比較
図5:従来品とTruBlack用反射防止フィルムの性能比較

光をコントロールする光学弾性樹脂と反射防止フィルムの組み合わせ

 TruBlackディスプレイは、低弾性・低収縮制御を達成した光学弾性樹脂の充填と低反射を実現した反射防止フィルムを組み合わせて光の反射をコントロールすることで、光学ロスを限りなく低減したディスプレイであり、蛍光灯下(600ルクス相当)でもコントラスト比、約15倍(*1)の視認性を実現した。ハイビジョン高画質を楽しめる高い再現性を持つTruBlackディスプレイはこうした機能性材料の光制御技術との出会いによって生まれたのだ。

*1: 自社調べ






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