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技術情報

バーティカルドライブテクノロジー(スピーカー駆動技術)

 バーティカルドライブテクノロジーは、「インテリアとして溶け込み、全く新しいリスニングスタイルが提案できるスピーカーはできないか?」という新たな発想から生まれたソニー独自のスピーカー駆動技術である。この駆動技術により、ソニーはスピーカーシステム「Sountina(サウンティーナ)」という「音」と「デザイン」を兼ね備えたスピーカーを商品化した。ここでは、バーティカルドライブテクノロジーの駆動原理、音響効果、デザイン効果について説明する。

駆動原理―バーティカルドライブテクノロジーとは?

 バーティカルドライブテクノロジーは、振動板の端面に配置された加振器が振動し、振動板の面から空中に音波を発生させる駆動技術である。特徴は、加振器の振動方向と音の出る方向が垂直(バーティカル)の関係にある点だ。この原理を応用したのがソニーのスピーカーシステムSountinaである。 Sountinaは、まず円筒状の振動板の端面を加振することで、円筒の長さ方向へ瞬時に粗密波が伝播する。この粗密波が伝播する過程で固体が持つポワソン比*により円筒の径方向(円筒の長さ方向に対する垂直方向)へ力が発生する。この力によって径方向の振動が起こり、結果として円筒の振動板全体から音波が発生する。
 *弾性体を引き伸ばしたとき、または押し縮めたときに、その力方向の伸びまたは縮みと、垂直方向の縮み、または伸びとの比
図1 加振器の振動方向と音波方向の関係(イメージ図)
 次に振動レベルについて、円筒状(長さ1m)の振動板における振動モード解析を例に挙げて説明する。この際の振動レベルの色は、振動板における径方向の振幅の大きさを表している。図2は、5KHzの正弦波*信号を用いて、複数の加振器で振動板の「面」を加振した際の結果である。この場合、振動レベルは加振点を中心とした径方向への振幅が最も大きくなっており、振動板全体には振動が広がっていない。これに対し、同じ条件で図3のように振動板の「端面」を加振した場合は、振動板全体に均等に振動が広がっていることが分かる。
 ソニーは、この駆動技術を用いて振動板を高音質で効率良く振動させるため、高応答性に優れ発生応力の大きい加振器を新規に開発。さらに振動板は、振動解析シミュレーションとソニー独自の音響材料物性測定技術を駆使し、最適な形状と材料の選択を可能にした。
 *交流波形や脈流波形などの波形の名称の一つ。
  • 図2 円筒の中央における面を加振した時の振動モード解析
    図2 円筒の中央における面を加振した時の振動モード解析
  • 図3 円筒の端面を加振した時の振動モード解析
    図3 円筒の端面を加振した時の振動モード解析



音の効果

1. 線音源による音圧減衰の抑制効果(低減効果)
 バーティカルドライブテクノロジーを用いたSountinaは、振動板全体に振動が伝わるため、長さ約1mである円筒の振動板全体から音を放射する線音源となる。一方、一般的なスピーカーは、点音源で球面状(上下左右)に音が放射する。線音源では円筒状に音を放射することで水平方向には音が広がるが、垂直方向への広がりは抑えることができ、水平方向の距離による音圧減衰が少なくなる。この結果、スピーカーからの距離による音量の差が少ない上、長さ約1mの振動板がすみずみまで振動しているため、リスナーの耳の高さや場所にかかわらず広範囲のリスニングポジションを実現することが可能となった。

  • 図4 距離2倍で-6dBの音圧減衰(点音源の理論値)
    図4 距離2倍で-6dBの音圧減衰(点音源の理論値)
  • 図5 距離2倍で-3dBの音圧減衰(線音源の理論値)
    図5 距離2倍で-3dBの音圧減衰(線音源の理論値)


  • 図6 360度全方向に広がるSountina独自の音場
    図6 360度全方向に広がるSountina独自の音場

2. 360度、奥行き感のある立体的なサウンド効果
 Sountinaは、有機ガラス管の端面に複数個の加振器を配置し、DSP(Digital Signal Processor)による独自の信号処理技術でそれぞれの加振器を駆動することで、従来のステレオ再生では得られない360度どこでも奥行き感のある立体的なサウンドを実現した。これらのサウンド効果で、一本の円筒状であるスピーカーを中心に360度全方向に広がるSountina独自の音場を「サークルサウンドステージ」と呼んでいる。


新たなスピーカーデザインの可能性

 一般的なスピーカーの駆動方法は、前述した図2のように、振動板の正面または背面に必ず駆動装置が必要になる。一方、バーティカルドライブテクノロジーは、「端面」を加振するため振動板の正面または背面に駆動装置が不要であり、透明な振動板でも商品のデザインとして生かすことができる。
 よって、Sountinaは、「透明な有機ガラス管」を生かしたスピーカーデザインを可能にし、通常のスピーカーとは一線を画したデザインを実現した。ソニーは、既存のオーディオ市場を拡大するだけでなく新しいマーケットの開拓を行うために、今後もバーティカルドライブテクノロジーをさらに応用展開し、魅力的な商品を創出していきたいと考えている。




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