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技術情報

xvYCC(動画の拡張色空間規格)

 xvYCC(Extended-gamut YCC colour space for video applications)は、動画における広色域色空間※1の規格名「IEC61966-2-4」である。色空間の規格は、ブラウン管テレビ(CRT)が主流であった際に策定された「BT.709」規格の場合、「マンセル・カラー・カスケード※2」色票群の約55%しか表現できないという問題があった。そこで、ソニーはこの色票群を100%表現できる新しい動画用拡張色空間規格xvYCCを提案し、JEITAから日本提案として国際規格の制定に貢献した。また、xvYCC規格に準拠した液晶テレビ<ブラビア>やHD方式デジタルビデオカメラを世界で初めて商品化。動画の広色域化を推進した。

※1色空間:RGB(赤・緑・青)の3原色を軸とする色の範囲
※2マンセル・カラー・カスケード(Munsell Color Cascade -provided by Dr.Pointer, and measured by NPL, UK): 48色相16明度で768色の色票群。ディスプレイの色彩表現評価などに使われる。

表現できる色空間の拡大方法

 従来のカラー映像信号の規格はCRTの赤(R)緑(G)青(B)の蛍光体の発光による色度点を基本として原色点と白色点が定められていた。デジタル放送(HDTV)の映像信号では「ITU-R BT.709」規格が1990年に標準化され、PC等のディスプレイとしてはIEC (International Electrotechnical Commission 国際電気標準会議)によってsRGB規格「IEC61966-2-1」が1999年に定められた。sRGB規格にビデオ信号のオーバーホワイトが無い事を除けば両者の色域は同一であり、CRTのR、G、Bの蛍光体によるx,y色度図上での各原色の色度点で囲まれる三角形の色域が実現されてきた。

  • 各原色点の純度を上げ、三角形を大きくして色空間を拡大する
    テレビやビデオの映像信号では、R、G、Bの三原色の強度そのものを色信号として混合してさまざまな色を表現する。この混色により各原色点で囲まれた三角形内のすべての色が得られるので各原色点の純度を上げて三角形を大きくすれば表現できる色空間を拡大できる。(図1.1)

  • 原色の色信号の負値を使って色空間を拡大する
    一方、三原色点の色度値は固定したままR、G、B色信号の負値を用いて三角形の外側の色を表現することもできる。図1.2では、三角形の外側のシアンがR色信号の負値とGとBの色信号の正値を用いて表現できる例を示している。これはGとBを混合して表現できる色とまったく同じ色を外側のシアンとRを混合して表現できるという光の色のシステム(加法混色)による。同様にしてGとBの色信号の負値を使ってさらに三角形の外の色を表現できる。xvYCC規格ではこの性質を使って動画の色空間を拡張している。

  • 図1 色空間の拡大方法
    図1 色空間の拡大方法



xvYCC色空間の技術的内容

 現在デジタルビデオ信号の標準規格は、HDTV(1920×1080)では「ITU-R BT.709」規格、SDTV(720×480)では「ITU-R BT.601」規格である。これらのビデオ信号の色信号に負値を導入し色域を広げるxvYCC「IEC 61966-2-4」規格が定められたのは2006年1月。本規格は、「BT.709」規格の上位互換である「xvYCC709」規格と「BT.601」規格の上位互換である「xvYCC601」規格を内包している。このxvYCC規格の4つの特徴を図2に示す。
  1. RGB原色点、白色点(D65)を従来の「BT.709」規格と同じとする。
  2. 0以上1以下での光電変換階調特性は「BT.709」規格と同じ定義式とし、1以上も同じ式で定義する。0以下は階調カーブが原点対称になる定義式とする。
  3. RGB(色信号)とYCC(輝度色度信号)の変換マトリックスを「xvYCC709」規格は「BT.709」規格、「xvYCC601」規格は「BT.601」規格と同一にする。
  4. 輝度、色度信号値の量子化において8ビットのとき、1から15と241から254も映像信号として使用して、定義式を定め広色域化を図る。また8ビット以上も定義して高階調化にも対応している。

  1. RGB原色点・白色点 【従来通り】
    RGB (ITU-R BT.709) + 白色点 (D65)
  2. 光電変換階調特性 【従来定義を拡張】
    ITU-R BT.709 で定義された階調カーブを範囲外まで拡張(0-1範囲内は同じ)
  3. RGB-YCC変換行列 【従来通り】
    SD: ITU-R BT.601行列を使用
    HD: ITU-R BT.709行列を使用
  4. 量子化 【従来通り】
    8ビット以上まで定義
    8ビットの場合は下式で定義
    YxvYCC(8) =219 x Y’ + 16
    CbxvYCC(8) =224 x Cb’ + 128
    CrxvYCC(8) =224 x Cr’ + 128
光電変換階調特性(階調カーブ)

光電変換階調特性(階調カーブ)


図2 xvYCC色空間の技術的内容



xvYCC色空間の従来規格との比較

 高彩度の物体色を示すMichael R. Pointerが提唱したマンセル・カラー・カスケードという48色相16明度で768色の色票群がある。図3.1には実際の色票群と色空間での色票の色度点を二次元と三次元で示している。これを使ってxvYCC規格の色表現能力を図3.2に示す。二次元のx,y色度図は三次元色空間のx,y投影図でありxvYCC規格の色空間を表現しにくいので、x,y色度と輝度(z軸)の三次元表現で説明する。この色票群の色度点(黒ドット)は三角柱のような形をしていて、輝度の低いところの色度点が広がっている。

 図3.2に従来の「BT709」規格の色空間と色票群の色度点との関係を示す。このように色票群の色度点が「BT709」規格の色空間からはみ出している。包含されている部分は色票群768色の55%に相当し、色票群の灰色部分が「BT709」規格では表現できない色票を示している。

 一方、図3.3のxvYCC規格の色空間の三次元表現では高輝度部分では四峰性の突起があり、低輝度になるにつれて裾が広がる形状をしている。このため色票群の色度点を完全に包含でき、xvYCC規格は彩度の高い物体色を示す色票群を100%表現できる。
  • マンセル・カラー・カスケードとBT.709、xvYCC の色空間
    図3 マンセル・カラー・カスケードとBT.709、xvYCC の色空間



xvYCC規格に対応したディスプレイの広色域化

 図4.1に示すようにブラウン管テレビ「BT709」規格では、前述のようにマンセル・カラー・カスケードの色票群は55%しか表現できない。ソニーは2006年、世界初となるxvYCC規格準拠の液晶テレビ<ブラビア>を発売した。これはバックライト光源として広色域の蛍光体(WCG−CCFL)を使用して色域を拡大し、xvYCC規格に準拠した色信号処理をしている。さらにLED光源をバックライトに使用した液晶テレビではマンセル・カラー・カスケードの色票の82%を表現でき、レーザー光源を使ったソニー製プロジェクター「GxL」では97%の色まで表現可能になっている※3。(図4.2,図4.3参照) xvYCC規格は、このような広色域ディスプレイに適用してその能力を発揮できる。

※3 2005年11月時点 ソニー調べ


  • マンセル・カラー・カスケードと広色域ディスプレイの色空間
    図4 マンセル・カラー・カスケードと広色域ディスプレイの色空間



今後の技術展開

 ソニーは、xvYCC規格の色信号で撮影できる世界初のデジタルビデオカメラも2007年に発売し、今まで再現できなかった花や車、ステンドグラスなどの彩度の高い色でもより忠実な映像が得られるようになってきた。

 現在、xvYCC規格に沿った色信号処理を行って、従来の色域(BT709規格)よりも広い色域を表現できるx.v.Colorという呼称をソニーが発表し、対応商品にそのロゴを貼付している。他社もこのロゴを採用し始めており、コンスーマーエレクトロニクス機器での普及が進んでいる。映画コンテンツでも既に「BT709」規格よりも広い色域であるデジタルシネマの「DCDM」規格が策定され、作品の制作が進められている。ディスプレイの広色域化とxvYCC規格の普及により、今後いろいろなコンテンツの広色域化が進んでいく可能性が高く、映画や放送、パッケージメディア、ネットワークからのコンテンツの制作と配信に必要な機器でのxvYCC規格の技術展開も望まれている。




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