Feature Design αNEX-5/3
Feature Design αNEX-5/NEX-3
[ 2010.7.30 up ]

目と手に触れるすべてが、“カメラの本質”

カメラの本質を鮮やかな切り口で表現した、NEX-5とNEX-3。手に取ると、心地よいグリップ感と優れた質感、フレンドリーな操作性に、きっとうなずくことでしょう。自分たちの理想のカメラを追い求めた、デザイナーたちの創意と熱意の結晶です。

新津 琢也
新津 琢也
ソニー(株)
クリエイティブセンター
エグゼクティブアートディレクター
高橋 正宏
高橋 正宏
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー
高木 紀明
高木 紀明
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー
日比 啓太
日比 啓太
ソニー(株)
クリエイティブセンター
デザイナー
奥村 光男
奥村 光男
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/デザイナー
永原 潤一
永原 潤一
ソニークリエイティブワークス(株)
シニアデザイナー
畑 雅之
畑 雅之
ソニークリエイティブワークス(株)
プロデューサー/シニアデザイナー
福原 寛重
福原 寛重
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー

「カメラらしさ」の本質に迫れ

高橋:以前から、カメラ市場には「コンパクトカメラの表現力では満足できない」「一眼レフカメラは大きすぎる」という潜在的なニーズを感じていました。そのニーズに応えるためには、高画質と小型化を両立できるミラーレス構造の一眼カメラが最適です。“α”のデザイナーたちは早くから「ミラーレス構造の一眼カメラを、すぐにでも開発したい」「一眼レフやコンパクトといった既存のカテゴリーとちがう、新しいカメラ市場を開拓しよう」と関係部署に提案してきました。

では、ミラーレス構造によって、カメラはどれだけ小さくできるのか。モックアップを制作したことが契機となり、私たちの念願だったプロジェクトが動きはじめたのです。

新津:しかし、レンズ交換式デジタル一眼カメラの世界において、ソニーは後発です。私たちがいかに新機軸を標榜したところで、たちまち他社のプロダクトに埋没し、カメラ市場にインパクトを与えるどころではないでしょう。そうならないためには、デザインに強力なメッセージが必要です。

では、何をメッセージするのか。私が掲げたキーワードは“本物”でした。手法として「一眼レフカメラを小さくしただけ」「コンパクトカメラの装いを借りただけ」では、一時的に話題を集められても、すぐに陳腐化してしまいます。そうではなく、「カメラらしさ」とは何かを見つめ直し、そのエッセンスをすくい取ってカタチにすれば、普遍性がある。いつまでも愛着を持って使いたくなること。それが私のいう“本物”であり、ソニーが何よりも強く主張すべきポイントだと考えたのです。

「カメラらしさ」のエッセンスとは、機能を必要最小限に分解し、最後に残るもの。ひとつはレンズであり、その形状は何十年経とうと円筒のまま変わらないでしょう。もうひとつは液晶パネル。デジタルカメラにとってビューワーや操作のために欠かせないものです。問題は、この「円筒と板」というエレメントをどう再構成し、“本物”のカメラとソニーならではの新規性を表現するかということでした。

デザインのすべてに機能が宿る

高木:新津のディレクションを受け、NEX-5をデザインしました。「ボディよりレンズが大きい」フォルムが目を引きますが、これはボディを極限まで小さくした結果にすぎません。高画質なレンズと小さなボディを組み合わせれば、自然に帰結する一眼カメラの姿です。

このフォルムに至るまで、私なりに葛藤がありました。カメラには「四角いボディの中に丸いレンズ」という、万国共通のアイコンがあります。それを崩すことは、カメラの新しい「原型」を作ることと同義です。最終的なゴールだとは分かっていても、容易なことではありませんでした。

そんなあるとき、考えあぐねながらカメラ雑誌を見ていると、ふと「パースのついたカメラは、ボディからレンズがはみ出して見える」ことに気付いたのです。もともと、Eマウントに対して液晶パネルが小さいことは頭に入っていました。ならば「レンズが本体からはみ出す」のは当たり前のことであり、何よりアイコニックです。NEX-5の基本フォルムが閃いたのは、このときでした。

しかし、これほど本体がコンパクトだと、しっかりグリップできるかが問題です。すべての指でグリップするのは無理な話。シャッターを押そうとすると、どうしても小指が余ってしまいます。一方で、人は傘やオペラグラスを持つと、無意識のうちに小指を柄の下にあてたくなるものです。なぜなら、その方が少ない力でモノを支えられ、疲労も少ないと本能的に知っているから。ならば、その「小指の余り」を意図的に誘発してはどうだろう。NEX-5のグリップがボディより下部に張り出しているのは、実はこのためなのです。小指がグリップに沿って自然にボディの下部に回り込み、無意識のうちに「下からカメラを安定させる」かたちに落ち着きます。大きなレンズでカメラの座りが悪くなる現象も、同時に解消。「ボディからレンズとグリップがはみ出る」のは単なるデザインではなく、機能そのものなのです。

超小型ボディを可能にした、コペルニクス的転換

高木:NEX-5のフランジバックは18mm。撮像素子や液晶パネルを考慮すると、ボディは20mm以上の厚みになってしまいます。一眼カメラとしては十分に薄いものの、「ボディを一枚の板のように表現したい」私には、許容できない厚さでした。

そこで内部構成を見直してみると、問題なのは光学系だけ。何もいちばん厚い部分に全体を合わせる必要はありません。発想を変えれば、マウントをボディから飛び出させれば、ボディはもっと薄くできるのです。飛び出たマウントは、レンズの一部としてデザインしてあげればいい。ちょうど、レンズ交換時はレンズが途中で切れる、というイメージです。

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