Feature Design α700
[ 2007.9.6 up ]

写真文化への情熱と挑戦

2006年に登場したソニーのデジタル一眼レフカメラ、“α”。その次なる展開を予感させるのが、「α700」です。過飾を廃した、潔い佇まい。手に取ると伝わる、操作性への心遣い。カメラファンなら、ソニーならではの発想が随所に活かされていることに気が付くでしょう。それは、カメラと写真文化を愛してやまないデザイナーたちの情熱の結晶です。

林 春生氏
林 春生
ソニー(株)
クリエイティブセンター
チーフアートディレクター
(”αシリーズ”デザイン統括)
川鯉 卓也氏
川鯉 卓也
ソニー(株)
クリエイティブセンター
シニアプロデューサー
(コミュニケーションデザイン統括)
高橋 正宏氏
高橋 正宏
ソニー(株)
クリエイティブセンター
シニアプロデューサー
(”αシリーズ” インターフェースデザインリーダー)

「本気」なればこその、オーセンティックなスタイル

川鯉 卓也氏

川鯉: “αブランド”を充実・発展させるために、ソニーはエントリーモデルからフラッグシップモデルまで、多彩なラインアップ化の準備を進めています。その中で「α700」、デジタル一眼レフカメラ「α700」は、中級機に位置づけられるモデルです。カメラづくりの原点に立ち返って各機能を見直し、ソニーの技術を注ぎこみ、画質やAFのレスポンス、操作性など追求した一台です。ソニーの“α”、その第二章がここから始まるといっていいでしょう。

それを、デザインを通じてどうユーザーに伝えていくのかが我々のチャレンジです。αの基本的なデザインコンセプトとしてはエントリーモデルの「α100」で示した通り、「マウント部のシナバー=辰砂(しんしゃ)色のリング」があります。これはブランドのアイデンティティとして外せません。

林:プロダクトデザインのチームでは、それ以外の装飾的な要素を廃して、オーセンティックかつストイックなスタイルにまとめました。これはソニーとして「本気でデジタル一眼レフカメラに取り組んでいく」という意気込みと姿勢を表現した結果です。その上で、一眼レフカメラのデザイン上の特徴ともいえるペンタプリズム部からマウントにかけてのラインの取り方や流し方を決めました。フルラインアップが揃ったとき、「なるほど、これがソニーの顔か」とわかってもらえると思います。

極限に挑むプロの声が、この造形を生んだ

Feature Design α700

林: ただし、いくらオーセンティックといっても、デザインの成り立ちそのものは、決して過去のカメラの模倣やオマージュではありません。撮影者の立場に立ってデザイン、ユーザーインターフェース、企画、設計の各スタッフが議論した結果です。例えばグリップがそうです。業務用機器を開発しているソニーの厚木テクノロジーセンターには、プロのための放送用機器を提供してきた中で積み重ねてきた膨大なノウハウが蓄積されています。それを活用して、「どのくらいの大きさならいちばん握りやすいか」はもちろん、寒冷地で手がかじかんだときでも無理なく操作できるグリップの角度や深さ、さらにはシボ地の硬さや摩擦係数までを考え、最適な形状を求めました。私たちデザインチームもプロカメラマンに同行し、実際に吹雪の中で「これじゃボタンが押せない」というような、自分の体感に基づいてデザインしています。

見る人によっては、「α700」の上面ボタンはずいぶんピッチが広く、まばらな印象があるかもしれません。確かに、もっとボタンをまとめた方が凝縮感や精度感を演出できるでしょう。しかし、厳しい環境で被写体を狙う撮影者の指には、このピッチが必要です。「α700」は中級機ですから、そういう撮影領域も想定することが求められます。設計上の都合や見栄えだけでデザインするのではなく、まず、使いやすさの観点から形状を決め、そこに内部機構を合わせる。これがデザインの基本哲学になっています。

デジタル一眼レフカメラは非常に趣味性が強いプロダクトですが、私は、これらの配慮があってこそ、プロダクトはより本質に近づくと思っています。自分のイメージを表現する道具として、そのカメラに信頼や愛着を抱ける。道具でありながら、そんな感情移入ができる造形を目指しました。

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