Feature Design "CineAlta" Digntal Cinema Camera F23
[ 2007.6.13 up ]

プロの創造力を解放する、映像表現の「道具」

いま、映画制作の世界が変わろうとしています。CGの発展とデジタルワークフローの導入。その入り口となるデジタルシネマカメラが、「F23」です。プロの厳しいニーズに応え続けてきたソニーの放送・業務用機器。そのデザインのあり方に、ソニーデザインの知られざる源泉を見ることができます。

永井 淳雄
永井 淳雄
ソニークリエイティブワークス(株)
担当部長/シニアプロデューサー
(放送業務用機器デザイン統括)
岡 広樹
岡 広樹
ソニークリエイティブワークス(株)
チーフアートディレクター

ソニーの歴史は、映像文化の歴史

永井:ソニーの製品と聞いて皆さんがイメージするのは、ほとんどの場合、民生品ではないかと思います。しかし、それはソニーの一面に過ぎません。というのも、ビジネス&プロフェッショナルの世界でもソニーは数え切れないほどの実績をあげてきましたから。

Feature Design "CineAlta" Digntal Cinema Camera F23

1971年に発表された「VP-1100」。Uマチック方式カラービデオカセットプレーヤーの1号機(再生専用)。 テープ幅は3/4インチ。VTRはカセットの時代に。

その中枢が厚木のテクノロジーセンターです。ここからは、さまざまな技術が生まれ、業界のスタンダードとなっていきました。映像製作分野だけをみても、1958年、放送局用にオープンリールの国産VTR第一号を発表。その後、世界初のカセット式カラーVTR“Uマチック”に続いて、ベータカムフォーマット、カメラとVTRを一体化したカムコーダーを世に送り出しました。またハイビジョンカメラや高画質記録を可能にした「D-1」「D-2」フォーマットなども、世界に先駆けてここで誕生しています。今日の放送業界・映像制作業界の礎、ビデオ文化の源泉がここにある、といっても決して過言ではないと思います。

さて、映画制作の現場でも、急速にデジタル化の波が押し寄せているんです。とくにCGは「使わない作品がない」というくらいポピュラーになってきました。一度フィルムで撮影したシーンをCG合成のたびにビデオ信号へと変換するのは、時間的にもコスト的にも大きな負担です。撮影から編集・加工、映写までをデジタルで。そのすべてに一貫したソリューションを提供できるのが、ソニーだけのアドバンテージといえるでしょう。

永井 淳雄

この「F23」はその入り口、撮影の部分を担うハイビジョン対応デジタルシネマカメラです。「F23」のいちばんの特徴は、カメラ部とVTR部が独立していて、適宜ドッキングやセパレートができる構造にあります。記録部分をセパレートすることはフィルムの時代には不可能だった、むしろビデオカメラのカルチャーですね。それを映画にもちこんだ点が新しい。

カメラ本体だけならとてもコンパクトですから、フィルム式のシネマカメラが入れなかった狭い場所でも撮影が可能になります。「これまで苦労してきた撮影が、ぐっと効率化できる」「フィルムでは撮れなかった映像を実現できる」…そういう可能性を秘めたカメラです。

デザインの源泉は、いつも現場の中にある

Feature Design "CineAlta" Digntal Cinema Camera F23

1981年にはアナログ方式放送業務用1/2インチ"ベータカム"フォーマットカメラ一体型VTR「BVW-1」を発表。世界中の放送局市場で一気に普及し、放送機器メーカーとしてのソニーの基盤を固めた。

岡:プロの「道具」は信頼性や使いやすさが基本ですから、それをどう実現するかがデザインの前提となります。こんなとき、厚木のデザイナーは、実際にプロの現場を訪ね、雰囲気をつかむことからはじめるんですよ。

映画制作の現場をご覧になったことはありますか?シネマカメラは、放送局で使われているカムコーダーとまるで使い方がちがうんです。カムコーダーはワンマンオペレーションが基本。一方シネマカメラは、複数のプロが一台のカメラを操作します。カメラマンはファインダーを覗いてアングルを決める。ピントを合わせるのはフォーカスマン。撮像素子やフィルム面から俳優までの距離をメジャーで測り、俳優の「計画された動き」に合わせてカメラ横のダイヤルを手動で操作し、ピントを合わせ続けます。その他にも音声や照明…何十人というクルーが一台のカメラを取り囲んでいるんです。

彼らは操作性を身体で覚えていますから、よほどのことがない限り、それを変えるわけにはいきません。今回は、撮影の基本的な部分はシネマカメラの操作性を継承し、そこに新しいデジタルのインターフェースを融合させることを考えました。

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