草薙:“Sony Internet TV powered by Google TV”には、新しいソフトウェアが採用されているのですが、そこにソニーのユーザーインターフェースデザインのノウハウを注ぎ込み、この商品のユーザーエクスペリエンスにあわせて、表示すべき情報のプライオリティやレイアウトを再整理しました。
分かりやすい例では、ブルーレイディスク再生中の情報表示があります。PCやスマートフォンなどのムービープレーヤーと同様の考え方を採用し、下方に表示を集約。あわせて、テレビの視聴、写真や音楽の再生画面も、すべて同じトーン&マナーになるようデザインしています。これは、ユーザーが様々なメディアやコンテンツを行き来しながら、それらを手軽に楽しめることを狙っています。
また、UIのグラフィックについては、ソニー製品に展開している最新のデザインを継承しました。画面内の表示要素を本体デザインの特徴でもあるフラッシュサーフェースになじませ、プロダクトと一体化させる「スムースボーダー」や、選択されたオブジェクトを浮き上がらせる「プリズムカーソル」を導入し、ソニーらしいアピアランスと使いやすさを実現しています。
さらに、スクリーンセーバー等は、インテリアとの調和を考慮し、プロダクトに採用しているニュートラルカラーにするなど、ハードとソフトの両面を同時にデザインすることで完成度を上げました。
山浦:通常、商品の持つ世界観を伝える為のビジュアルは、どんなメディアにも展開しやすいよう静止画で制作しますが、今回は、コミュニケーションのトーンを決める動画を制作し、ウェブやカタログ、店頭でのデモ体験や、パッケージ、購入後のセットアップなど、あらゆるタッチポイントにおいて展開し、同じ世界観でコミュニケーションがとれるよう工夫をしました。
キーワードは、「クロノグノシス(時間知覚)」です。人は、リラックスしているときほど時間が一瞬のことのように、逆に緊張するとゆっくりに感じます。それをスローモーションや被写界深度などの手法によって表現しました。コンテンツを選択するときの意識の集中を表現してみました。
この動画は、たとえば、購入後最初にお客様が見る「ウェルカムムービー」や、起動時に毎回違うパターンが表示される「ブートスプラッシュムービー」にも使用しています。お客様がこの商品を手に入れた時の感動をエンハンスし、常に新しい印象を与えられるようデザインしています。
角田:動画をベースとしたコミュニケーションデザインの手法はパッケージにおいても同様で、今回は両面を使ったストーリー展開を試みました。片面を見るとリモートコントローラーとメッセージ。「これは何だろう?」ともう一方の面を見ると、テレビだと分かる仕掛けです。ティーザー広告の手法を採り入れ、ユニークなリモートコントローラーを起点とし、お客様の想像力を喚起するデザインにしています。
プロダクトを表現する静止画も、動画をベースに検討を重ね、軽さや浮遊感、高揚感を表現するこのプロダクトカットにたどりつきました。
小野:今回は、取扱説明書のあり方についても新しい提案を試みました。私たちが思い描いたターゲット像は、製品を購入し、開梱したらすぐに起動して楽しみたいという人々です。
そこで、「より早く、より確実に、より負担なく」というコンセプトのもと、起動に至るまでの情報だけを、一枚のクイックセットアップガイドにまとめました。紙の取扱説明書はこれだけ。後は、画面の中のヘルプガイドで情報を提供するようにしました。これらはビジュアルコミュニケーション、ユーザーインターフェースのデザイナーたちと協力してデザインし、さらに、ユーザーテストによってきめ細かなブラッシュアップを行いました。
通常、取扱説明書では使わないような「Did you know?」といった表現を用いて、ユーザーの好奇心に訴えるつくりにもなっています。また、このガイドはオンラインで提供していますから、紙媒体では伝えにくい説明に関しては動画を入れる工夫もしていますし、PCからも閲覧することが可能です。
菅野:今回、PCとテレビの両カテゴリーの経験があるデザイナーたちがタスクフォースを組み、これまでにない商品を完成させました。“Sony Internet TV powered by Google TV”は、お客様のやりたいことに応えて進化し続けるテレビになったと信じています。
本製品は、現時点において北米のみでの販売です。(2011年3月1日現在)