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Feature Design Digital Wireless Microphone
[ 2011.5.27 up ]

“次世代の名機”の探求

放送や音響の世界で“名機”と呼ばれるプロダクトを世に送り出してきたソニー。その最新の成果がデジタルワイヤレスマイクロホンです。市場に登場してすぐに国民的歌謡番組に採用され、また著名なアーティストがマイマイクとして愛用しはじめています。ソニーのプロオーディオへの取り組み、その新しい一歩です。

岡 広樹
岡 広樹
ソニー(株)
クリエイティブセンター
チーフアートディレクター
米田 直史
米田 直史
ソニークリエイティブワークス(株)
シニアデザイナー
鈴木 聡
鈴木 聡
ソニークリエイティブワークス(株)
シニアデザイナー

歴史に残る仕事

岡:ソニーには、半世紀を超える業務用マイクロホン開発の歴史があります。エポック機も少なくありません。たとえば、1965年に生んだ『C-38』シリーズ。今なお生産が続くロングセラーで、「サウンドエンジニアなら一度は使用した経験がある」といわれる、業務用コンデンサーマイクロホンの代名詞です。さらに、レコーディングスタジオのために開発した『C-800G/9X』も、多くのアーティストから絶大な支持をいただいています。ソニーのマイクロホンは、このような“名機”を通じて、プロオーディオの世界に脈々と信頼を築きあげてきました。

それはワイヤレスの分野でも変わりません。1999年の『WRT-867』と関連システムは、「過酷な業務用途に耐える本格的ワイヤレスマイクロホン」として誕生し、今も世界中のホールなどで利用されています。しかし、信号の伝送がアナログ方式のため、ひとつの会場で20チャンネルまでしか対応できない、条件によっては混信やノイズが発生するといった、運用上の制約から逃れられませんでした。

それらの課題を解消すべく、ワイヤレスマイクロホンのデジタル化を図るのが、今回の企画の発端です。ステージ用ハンドヘルド型マイクロホンのデジタル化は世界初の試み。国内では同時に運用出来るチャンネル数を82chに拡大できるほか、音質の向上、セキュリティの強化など、さまざまなメリットを実現できます。

今回のようにドラスティックなシステム改革は、マイクロホンの世界ではそうある話ではありません。ソニーのプロオーディオ分野としてはもちろん、放送・音響業界にとっても、歴史に残る仕事になるはずです。身の引き締まる思いでデザインに着手しました。

カメラ映りにすべてを賭ける

岡:プロダクトデザインをマネジメントするにあたり、私が意図したのは「信頼と安心感」をしっかり表現すること。その上で、「ソニーならではのアイデンティティ」も体現することでした。マイクロホンはアーティストの顔のいちばん近くにあるもの。テレビやライブ会場のスクリーンを通して、必ず視聴者、観客の目に入ります。もちろん「アーティストが主役、マイクロホンは道具」であることはわきまえていますが、そのとき、ひと目でソニーとわかる個性と、リファレンス機としての風格を備えていたい。

しかし、これが実に難しい。個人的には、数あるソニー製品の中でも、マイクロホンほどデザイナー泣かせのプロダクトはないと思っています。形状がシンプルなだけに、なかなか個性を出しにくい。しかも、テレビや客席からは、マイクエンドが垣間見えるだけなのですから。そこで、私は3人のデザイナーによるアイデアラッシュを行うことにしました。ひとりでは困難な案件でも、複数の人間のアイデアを集積し、精製すれば、新しいデザインが生まれると期待したのです。

鈴木:“名機”を生んだ先代の最後の仕事から、すでに20年近い月日が経っています。私たちは、私たちの世代として、マイクロホンの価値観を新たにつくり直したいと思いました。そこで、まずは先入観を持たず、自由な発想でアイデアを出しあうことにしました。3人のデザイナーが、光造形でかなりの数のモックアップを制作。

一方、アイデアラッシュと並行し、リサーチも行いました。業務用機器はプロの道具。実際に使うユーザーの要求、現場の声を知りたかったからです。ホールやスタジオで音響を取り仕切るPA業者、レコーディングスタジオのサウンドエンジニア、もちろんアーティストも。多くの方々に取材し、貴重な体験談をヒアリングし、モックアップについての意見を伺いました。

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