Feature Design Monolithic Design
[ 2010.3.9 up ]

不変の哲学が生む、革新の価値

ホームプロダクツは、長い期間リビングに置いていただくもの。それだけに、トレンドに左右されず、空間に溶け込み、満足感が色あせない「本質」の表現が必要です。そして、手にされるお客様が、インテリアやライフスタイルまでも変えたくなるような新しいデザインの実現こそが、重要な課題です。モノリシックデザインというコンセプトは、この困難なテーマへのソニーとしての回答です。

松岡 文弥
松岡 文弥
ソニー(株)
クリエイティブセンター
エグゼクティブアートディレクター
久保田 裕己
久保田 裕己
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/デザイナー
鈴木 章雄
鈴木 章雄
ソニー(株)
クリエイティブセンター
課長
江下 就介
江下 就介
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー
西沢 一登
西沢 一登
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/デザイナー
前坂 大吾
前坂 大吾
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/デザイナー

答えは、原点の中にある

松岡:ソニーには、「人のやらないことをやる」「つねに一歩先んじる」という創業当初からの企業理念があります。そこから生まれたのが、「原型をつくる」「ライフスタイルをつくる」「機能美をつくる」「使いやすさをつくる」というデザイン・フィロソフィーです。これらは私たちデザイナーにとって原点であり、挑戦し続けるべき目標となってきました。

2010年のホームプロダクツをデザインするにあたり、私たちはこれらのフィロソフィーと、思いに新たに向き合おうと考えました。目指したのは、従来のトレンドや手法を超越したデザイン、そしてお客様のライフスタイルや価値観を変えていくデザイン。つまり、「バリューシフト」を起こすデザイン。私たちはその実現に向けて動きはじめました。

しかし、表現とは、クリエイターの実体験やそれに裏付けられた感性から生まれるもの。日常生活の中だけでは、既成概念を超えた発想はなかなか生まれません。そこで、まず私が試みたのが、デザイナーたちを世界各地に派遣し、表現テーマを集めさせることでした。彼らが現地で得たインスピレーション、発見した美、体験した感動。それこそ新しい表現力の源泉であり、デザイン開発に不可欠であると、私は痛感していたのです。

メンバーたちは帰国して早々、お客様に提供したい価値について議論を重ねました。ソニーの新しいホームプロダクツを表現するにふさわしいテーマは何か。さまざまなデザインの方向性、テクスチャー、カラーのアイデアが集まりました。その中で、私の心に響いたのが、久保田が提案した「一枚の板」というデザインコンセプトだったのです。

「一枚の板」すなわち「monolith(モノリス)」には、余計なエレメントがありません。プリミティブでありながら、モノの本質が純粋に現れています。このため、立ち姿が美しく、力強い。トレンドに媚びない。お客様を触発し、インテリアやライフスタイルを変えたいと思ってもらえる可能性を秘めています。

また、「monolith」から派生している「monolithic(モノリシック)」という英語の形容詞は、「集積回路の基板の上に、様々な素子が積み重なっている状態」を指すときにも使われるそうです。そこから、「中身が詰まったインテリジェンスのある高機能なもの」とコンセプトを独自に発展させて行ったのですが、それは、新しいホームプロダクツの目指す方向性と合致すると考えました。最終的には「一枚の板」ということにとらわれず、モノリシックデザインという言葉にホームプロダクツ全体のデザインコンセプトを昇華させました。

アイコンの破壊と創造

久保田:通常、テレビのプロダクトデザインというものは、まず映像を観賞するための機能が先にあり、それをどう独創的に装うか検討するものです。しかし、今回は違います。私がはじめに意図したのは、モノとしての「佇まい」。つまり、立ち姿の美しさや、そこから生まれる新鮮な空気感、心地よい緊張感でした。その「佇まい」の中にテレビとしての機能をどう実現するか、と発想を進めていったのです。

課題は2つありました。余計なものを削ぎ落とし、映像を見るモノとしての本質に迫ること。そして、視聴しないときも、美しくあること。そのためには、テレビのアイコンであるスタンドとベゼルのデザインを考えなおす必要がありました。そこで私がイメージしたのは、金属の塊にガラスの板が乗っているシンプルなオブジェでした。

テレビのスタンドというと、サイズを切り詰め、目立たなくするのが普通の考え方です。しかし、モノリシックデザインではその固定観念を捨て、シンプルなアルミニウムを利用して画面を支えます。中でもモノリシックデザインの世界観を象徴的に表現しているモデルには、前面のパネルにガラススクリーンを採用しました。新しい生産手法を開発するために、設計者たちは大変な苦労をしてくれました。その甲斐あって、電源がオフのときはシンプルで美しい一枚のガラス板、オンにすると、まるでガラスの前面が発光しているかのような佇まいを提供することを実現しました。

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