Feature Design “nav-u” NV-U35
[ 2010.11.16 up ]

毎日の行動半径を広げる「自転車ナビ」

クルマはもちろん、徒歩、さらには自転車までサポートするポータブルナビゲーションシステム。それがNV-U35です。従来の“nav-u”(ナブ・ユー)の世界観と新しい製品コンセプトを、ごく自然に融合させたデザインの工夫。そのポイントをご紹介します。

服部 直文
服部 直文
ソニー(株)
クリエイティブセンター
チーフアートディレクター
和田 貴之
和田 貴之
ソニークリエイティブワークス(株)
デザイナー
松田 肇
松田 肇
ソニークリエイティブワークス(株)
デザイナー
神山 将人
神山 将人
ソニークリエイティブワークス(株)
デザイナー

新しい“nav-u”は「自転車ナビ」

服部:長引く不況にも関わらず、ポータブルナビゲーションシステムの国内市場は、驚くほどの勢いで成長を続けています。その中でも大きなシェアを占めているのが、ソニーの“nav-u”(ナブ・ユー)です。

“nav-u”の人気には、明快な理由があります。ひとつは優れた装着性です。競合機の多くが両面テープを使っていた頃から、いち早く「ピタッと吸盤」によるスマート取り付けを実現。「よりカンタンに取り付けたい」「ダッシュボードにキズや汚れはつけたくない」という、双方のニーズに応えました。また、ジェスチャー機能という独自のユーザーインターフェースも大きな特徴です。先行して発売したNV-U75では、他社に先駆けて静電タッチパネルを採用し、「触って操る」ナビゲーションシステムのイメージリーダーとしてのポジションを確立しています。

この静電タッチパネルのおかげで、余計な段差がないミニマルな意匠も実現できました。ナビゲーションシステムは、装飾的な意匠を盛り込むほどダッシュボードとなじまず、視覚的なノイズとなってしまいます。しかし、NV-U75はシンプルかつフラットなフロントフェースだから、クリーンでノイズレス。さらに、ウィンドシールド越しに見られることを考慮し、側面、背面もすっきりした形状とするなど、世代を重ねても色あせないデザインを実現しています。

NV-U35は、このような“nav-u”の魅力を継承しつつ、3.5V型の液晶モニターを搭載した小型モデルとして企画されました。ラインアップの中で最も小さく、価格的にも手頃なもの。そこには、拡大しつつある市場に甘んじることなく、“nav-u”ファンをいっそう拡大したいというソニーの思いが込められています。それだけに、私は「NV-U35を単なるエントリーモデルにしたくない」と考えました。

小さいことを、ポジティブに捉えられるフィールドはないか。クルマを下りてからも、ナビゲーションシステムの機能を、もっと活かすことはではないか。企画担当者や私たちがたどり着いた結論は、近年の自転車ブームでした。健康のため、通勤にも自転車を使う。趣味でも自転車を楽しむ。小型モデルは、そのような人々にうってつけです。こうして、「自転車ナビ」という製品コンセプトが打ち出され、そのための機能とデザインを私たちが開発することになりました。

必要悪をメリットに転換する

和田:“nav-u”のデザインは「クルマの中にあるとき、視覚的なノイズにならない」ことが前提です。そこで今回も、シルエットは上位機種を継承することにしました。しかし、NV-U35は「自転車ナビ」としてアウトドアでも活用されるもの。単にクルマの中に消し込む、なじませるだけでなく、新しい方向性を示したいと思いました。

私が注目したのは、防滴性能を確保するためのシール部材、エラストマーです。「自転車ナビ」だからこそ必要になった機能部品ですが、これを「部品増」「コスト増」、すなわち必要悪と捉えたのでは芸がありません。そこで発想を転換し、エラストマーでプロダクトの外周を巻き締める造形をひねり出しました。このような機能部品は、キャビネットの継ぎ目の下に隠すのが常套手段。それをあえて「見せる」ことで、意匠上のアクセントとしたのです。

これにより、見た目の新しさだけでなく、安心感も表現することができます。何より、「落下時の緩衝を緩和する」「伏せて置く際にモニターを保護する」「適度な摩擦感がホールド性を高める」など、さまざまなメリットも生まれます。よくアウトドアグッズでは弾性体を過剰にあしらい、ヘヴィデューティな雰囲気を誇示するデザイン手法が見られますね。そうではなく、NV-U35はひとつの機能部品に防滴性や耐衝撃性などの機能をプラスすることで、余計な要素を加えることなく、スマートな造形を実現した。ここが、プロダクトデザインにおけるいちばんのポイントです。

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