Feature Design NXCAM NEX-FS100
[ 2011.7.13 up ]

映像制作のプロに向けた新提案

Eマウントシステムと大型撮像素子を採用した業務用カムコーダー、NEX-FS100。これまでの“ハンディカム”スタイルに親しんだ目に、そのデザインはあまりに斬新です。その意匠の真意はどこにあるか。答えは、ユーザーと向き合ったデザインプロセスにありました。

新津 琢也
新津 琢也
ソニー(株)
クリエイティブセンター
エグゼクティブアートディレクター
宮下 身
宮下 身
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー
黒川 慎吾
黒川 慎吾
ソニークリエイティブワークス(株)
デザイナー

映像制作の新分野にフォーカスする

宮下:ソニーでは、映像クリエイターのあらゆるニーズをカバーすべく、業務用カムコーダーのラインアップを充実させています。しかし、近年、映像制作の現場に新しい動きが見られるようになりました。それが、デジタル一眼レフカメラを使った動画撮影です。たとえば、「音楽やファッションのプロモーションビデオを、フォトグラファーが自前の機材で撮る」ことも、今や珍しくはありません。これは、映像制作の世界に、従来のユーザーセグメントや機材のカテゴリーを超えた、新しい分野と市場が着実に生まれつつあるという、ほんの一例です。

そんな新分野を映像クリエイターのために、ソニーは何ができるのか。答えのひとつが、Eマウントシステムを業務用カムコーダーに展開することでした。マウント面から撮像面までの距離、すなわちフランジバックが18mmと短いEマウントは、マウント変換アダプターによって、膨大なレンズに対応できます。システム導入時の投資を抑えられるのもメリットです。

しかし、これは未知の分野への挑戦でもありました。メインターゲットとなるのは、業務用ビデオクリエーター、シネマユーザーです。従来の“ハンディカム”スタイルをレンズ交換式にしても、説得力がありません。必要な物、不必要な物を洗い出し新しいコンセプトの撮影スタイルにふさわしいプロダクトのあり方を見つけ、提案し、この分野を開拓したいと考えました。

理想のカタチを、ユーザーと探しだす

新津:そこで、企画担当者、エンジニアは映像クリエイターがDSLRを含めた映像機材をどう使っているか、どこに利便性を感じているかリサーチすることから着手しました。対象としたのは、メイン市場である業務用ビデオクリエーター、シネマユーザーたちです。

従来の業務用カムコーダーを見せると、必須要素であるはずのハンドルからして「なぜ、こんなものが必要なのか」「ごく稀にしか使わないから、着脱できればよい」といった疑問や意見が出てきます。逆にデジタル一眼レフカメラを動画撮影にどう使っているかというと、必ずしもハンディさが利点になっているわけではありませんでした。手ブレ、カメラブレを防ぐため、しっかりした三脚やスタンド、ホルダー、スタビライザーなどを使って保持していますし、サードパーティ製のアタッチメントを使ってピントを操作しています。ということは、デジタル一眼レフカメラは、動画撮影に関してまだ完成されたカタチではないということです。けれどもみんな使っていますよね。

では、どういったプロダクトが適切なのか。私たちは、液晶モニターや操作部材などの基本構成の段階から、さまざまなサンプルを用意し、映像クリエイターたちと意見交換を重ねました。

一方、全体的な造形に関して私がディレクションしたのは「ハイブリッドデザイン」の一点だけ。これは、柔らかいものと硬いもの、異素材、さまざまな表面処理などをぶつけ合ったり、組み合わせたりして、従来にはない造形や印象を生み出すという発想です。

たとえばEマウントシステムの場合、“α”NEX-5では「円筒+板」。“ハンディカム”NEX-VG10は、その「板」を縦にしたもので基本的な発想は変わりません。それに対して、今回は液晶モニターがメインではないため、「円筒+箱」という単純な形態をイメージしました。それを宮下に解釈してもらったのが、NEX-FS100の原点となっています。

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