Feature Design Sound Entertainment Player Rolly
[ 2007.10.18 up ]

音楽との新しい関係を生む、“小さなタマゴ”

小気味のよい動きが、音楽を盛り上げる。聴きなれたはずの音楽も、新鮮な感覚で向き合える。オーディオプレイヤーの新しい価値を提案する「タマゴ」、それが“Rolly”です。明らかにソニー製品とわかるクオリティは、デザイナーたちの強い意志のあらわれ。そこに到達するまでの試行錯誤の日々をデザイナーが振り返ります。

沢井 邦仁氏
沢井 邦仁
ソニー(株)
クリエイティブセンター
シニアデザイナー
森澤 有人氏
森澤 有人
ソニー(株)
クリエイティブセンター
デザイナー
菅原 拓氏
菅原 拓
ソニークリエイティブワークス(株)
プロデューサー/デザイナー

コンセプトからのデザインアプローチ

沢井 邦仁氏

沢井:クリエイティブセンターには、まだ事業化されていないプロダクトをデザインの立場から提案する機能があります。私も数多くの開発案件を手がけてきました。社内からいろいろなアイデアが持ち込まれてきますが、“Rolly”もそのひとつです。

3年ほど前、当時“AIBO”に携わっていたエンジニアたちが私を訪ねてきて、デスクに奇妙な「タマゴ」を置いたのです。その物体を手にとろうとした途端、いきなり音を出して小気味よく踊りはじめたのですから驚きました。それが“Rolly”の原型となる試作一号機との出会いでした。

「ひと目でこんなに人を魅了できるモノも多くない。」そう思う一方で、「これをデザインするといっても、どこから手をつければよいのか?」と頭を抱えました。というのも、見れば見るほど、また、説明を聞けば聞くほど、この「タマゴ」が不思議な『何か』を持っているにも関わらず、どう接し、どうデザインしたらよいか混乱したのです。実際に見た人の反応も分かれていました。まったく興味を示さない人とたまらなく面白がってくれる人。

このような状態の提案物を、アイデアで終わらせてしまうのか。それともソニー製品として世に送り出せるのか。その運命を左右するのがコンセプトデザインです。私たちは“Rolly”の原型を改めて見直し、いったい何がその魅力を生み出しているのかを見出すため、原型が持っている要素を丁寧に洗い出すことからはじめました。

不可視の表現テーマを「見える化」する

沢井:コンセプトデザインの構築で行ったことの一つは、潜在化している意味や事象を「見える化」することです。ひたすら開発者と一緒にこの『何か』が何であるのかを議論しました。また、踊る「タマゴ」を見ている人をじっくり観察し、当たり前と思える反応でも、先入観を外して行動の持つ意味をひとつひとつ確認していきました。

Sound Entertainment Player Rolly

「動き」には機械に対する感情移入を引き起こす効果があることは、すでに“AIBO”や“QRIO”で経験しています。これは、“Rolly”にも備わっている最大の特徴です。しかし、“Rolly”の場合、「観ることを前提としたサウンドプレーヤー」であるという、単純な、けれども他のミュージックプレーヤーとは異なる事象を持つことにも気づきました。

これらの気づきがデザインを進めるための突破口となったため、デザインテーマを「動く」と「観る」とし、シンプルな楕円球にこだわりつつ、高級感や質感も満足させる造形と、動きや光を駆使したユーザーインターフェースの創造をしていきました。

まず、第一印象の方向性や形状のディテールをCGでシュミレーションしたり、光らせ方の試作を行いました。使い方のムービーを作るなどして、コンセプトに沿ったデザインを進めていきました。また、開発が進む中でコンセプトを維持できない大きさになりかけたとき、手にとって心地よいサイズ・操作しやすい大きさを実現させるため、設計が逆戻りするのを覚悟で提案を行ったりしました。

そして小型・高音質スピーカーボックスの開発、音を邪魔しない高精度なメカ設計を経て、商品化プロセスに移っていきました。それが約1年前のことです。しかし、ここで私はデザインをあえて別のデザイナーに託すことにしました。申し送りも一切なし。商品としての“Rolly”のデザインを客観的に見つめなおし、もっと自由な発想で完成度を高めて欲しいと期待したのです。

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