"Cyber-shot" DSC-TX55/TX300V
[ 2012.3.15 up ]

「究極のカメラレス」デザインを求めて

「先進機能をコンパクトボディに凝縮する」「スタイリッシュスリムなデザイン」という2つのコンセプトをもとに今までにないカメラの形を提案し続けてきた“サイバーショット”Tシリーズ。その進化がたどりついたのは、「究極のカメラレスとは何か」という問いに対する革新的なデザインでした。これからのTシリーズの新しい顔となる2つのカメラ、その誕生までの軌跡をご紹介します。

山田 良憲
山田 良憲
ソニー(株)
クリエイティブセンター
シニアプロデューサー
高木 紀明
高木 紀明
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー
中島 賢造
中島 賢造
ソニー(株)
クリエイティブセンター
デザイナー
渡辺 智也
渡辺 智也
ソニー(株)
クリエイティブセンター
デザイナー
畑 雅之
畑 雅之
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/シニアデザイナー
本澤 裕美
本澤 裕美
ソニー(株)
クリエイティブセンター
デザイナー
横関 亮太
横関 亮太
ソニー(株)
クリエイティブセンター
デザイナー
奥村 光男
奥村 光男
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー/デザイナー

Tシリーズの理想型とは何か

山田 良憲

山田:Tシリーズは、「先進機能をコンパクトボディに凝縮する」「スタイリッシュスリムなデザイン」という2つの大きなコンセプトを継承しながら、常に新しいカメラの価値観を提案してきました。そして、もうひとつTシリーズの軸となっているのが、レンズが主張するようなカメラらしい佇まいとは対極の「カメラレス」というデザインコンセプトです。使っていないときはシンプルな表情で、使うときにだけレンズが出てくるONとOFFの2面性です。

そこで「究極のカメラレスとは何か」を突き詰めることからこのプロジェクトがスタートしました。そのプロセスでたどり着いたのが、「究極のスリム」を追求したTX55と、「ワイヤレスによる新しいユーザーエクスペリエンス」を実現したTX300Vです。

Tシリーズのボディサイズはレンズの大きさに左右されてしまうため、今回は小型レンズの開発から始まりました。でも世界最薄を狙うだけでは、ただの薄い板のようなカメラになってしまいます。その薄さの中にどんな魅力をつくるべきか、スタイリッシュさをどう残せるのか、そこでレンズ開発と平行して、高木にデザインを進めてもらいました。

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薄さのなかに魅力を

高木 紀明

高木:今までのTシリーズはフラットな造形が多かったのですが、TX55ではやわらかな曲面を基調としたデザインにしています。表面張力と呼んでいるのですが、張りのある曲面とエッジによって緊張感を出し、12.2mmというサイズ以上の薄さが感じられるような造形にしています。

見てもらうと分かるようにレンズカバーを閉じているときは、ボディとカバーに段差がなくフラットになっていて、撮るときにはスライドしたカバーがボディに乗り上げる仕組みになっています。このふくよかな面を保ったままレンズカバーを可動させるのがとても難しく、中島とエンジニアには相当頑張ってもらいましたね。

オーディオプレーヤーや携帯電話のようなソリッド形状なら、きれいにつくるのは簡単です。しかし、やわらかな曲線を保ちながらスライドする機能性を持たせるのは見た目以上に難しく、ユーザーに伝わるのか不安でしたが、国際的なデザイン賞であるiFの金賞を受賞でき、妥協せずにデザインを突き詰めた成果を認めていただけたのは、すごくうれしいですね。

数字では定義できない曲線

中島 賢造

中島:このデザインは、美しくふくよかな曲面とサイドのシャープなエッジとのコントラストがスタイリングの重要なポイントでした。一見簡単そうに見えるやわらかな曲面ですが、レンズカバーをスムーズにスライドさせるためには、レンズカバーの内側の曲面もうまくコントロールする必要がありました。

そのためアルミをプレスした後に内側をさらに削って、試し、また削ってと何度も試行錯誤を重ねました。そのプロセスはまさに設計者とのせめぎ合いで、0.05mmという寸法単位で交渉を繰り返しました。まさに針の穴に糸を通すような作業です。最終的には全ての曲面が数字で定義のすることのできないスプライン曲線で成り立っています。正面の形状だけでもかなりの数の試作モデルを作成しましたね。

また、TX55は本体の内側にフレームを入れず、アルミの外装だけで強度を保つモノコック構造を採用しています。これにより今までの構造体分の厚みを無くすことができます。この構造もTX55の究極の薄さを実現するために生まれた技術です。

そして、ボディを極限まで薄くするための試行錯誤もそうですが、今回は細部のディテールにもかなり気を使っています。ズームレバーはアルミの切削部品を採用したり、ボディ正面の“サイバーショット”ロゴには色入れをしています。そんな細部へのこだわりがこのモデルの完成度をより高めているのです。

造形と色の純粋なる対話

渡辺 智也

渡辺:ボディカラーは、ニュアンスを含んだ深みのあるものを選び、造形の美しさを生かした「やわらかな面」と「鋭いエッジ」のコントラストを最大限に引き出すカラーリングを目指しました。

当初はカバーを開けたときに色が変わったり、光沢があったりとパーツごとに手法を変えることも検討したのですが、やはり「アルミの塊が持つ素材感」をストレートに出した方が、造形の美しさに加え、TX55を持つ女性像に合った高級感やエレガントさを表現できると思いました。共にカラー&マテリアルを担当した山岡と二人で、その女性像の個性を具体的にイメージしそれぞれのカラーバリエーションとして表現しました。

それから表面にブラスト処理をすることで、色だけでなく手触りやマットな質感も同時に追求しました。アルミ素材を薬品に浸けて調整するのですが、浸ける時間がほんのちょっと違うだけで、色も質感もがらりと変わるため、厳密に時間をコントロールしながら、イメージに最も近いものだけを選んで贅沢に使用しています。今回はプロダクトに合う色を純粋に造形と対話しながら決めることができたと思います。

動作の要素を削ぎ落としたケース

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横関 亮太

横関:基本的にアクセサリーは汎用性が求められるのですが、TX55の薄さを強調するために、専用ケースをつくらせてほしいとお願いしました。 Tシリーズはスタイリッシュにすぐ撮れることも魅力なので、 「手帳」というコンセプトを打ち立て、手帳カバーのように巻く構造にしました 。ゴムを外すとケースがそのままグリップになり、すぐ撮影できるようになっています。

もともとグリップ代わりに使えるケースはあったのですが、撮るまでの動作の要素が多かったため、その要素を削ってよりシンプルにしてみると、手帳の構成が使いやすいというところに行き着きました。カメラを持ち運ぶときも、カバンから出して置いたときも、まるでステーショナリーのようなスタイリッシュなアイテムに仕上がったと思います。

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