Feature Design Organic Light Emitting Diode TV:XEL-1
[ 2007.12.1 up ]

テレビ史に名を刻む、新たな“原型”

2007年12月1日、有機ELパネルを採用した世界初※のテレビがソニーから発売されました。鮮やかな高画質、外装を含めても最薄部約3ミリという薄いパネルが話題です。この先進のデバイスと向き合ったデザイナーたちの言葉に、“原型を創る”というソニーデザインの一例を読み解くことができます。

※2007年10月1日現在、ソニー調べ

横田 洋明氏
横田 洋明
ソニー(株)
クリエイティブセンター
プロデューサー
(プロダクトデザイン担当)
佐々木 佳世氏
佐々木 佳世
ソニー(株)
クリエイティブセンター
デザイナー
(インターフェースデザイン担当)
原 誠氏
原 誠
ソニークリエイティブワークス(株)
デザイナー
(パッケージデザイン担当)

テレビの新しい“原型”を求めて

横田 洋明

横田:はじめて「オーガニックパネル(=有機ELパネル)」を見た時は驚きました。薄さは1mmあるかないか。厚みをほとんど感じないので、本当に宙に映像が浮かんでいるように見えるんです。しかも画質が素晴らしい。そのパネルを採用した世界初の有機ELテレビ、“XEL-1”のプロダクトデザインを担当できるなんて、デザイナー冥利に尽きます。私がはじめてパネルと出会ったときと同じ驚きや感動、新鮮味をダイレクトにユーザーに伝えたいと、スケッチに着手しました。

ところが、スケッチを描けば描くほど、工夫を凝らせば凝らすほど、表現したい薄さ、軽さから離れてしまうんです。液晶ディスプレイならばある程度の厚みがありますから、ベゼルをより美しく、より薄く見せるようにデザインすればいいんですね。しかし、「オーガニックパネル」はそれ自体がきわめて薄いデバイスです。いくらベゼルなどの外装に加飾したところで、薄さを損なう方向にしか作用してくれません。

Organic Light Emitting Diode TV:XEL-1

結局、原点に立ち返り、シンプルで象徴的な形にするのがよいと気がつきました。「このプロダクトが新聞やウェブでどんなに小さな写真で紹介されても、ひと目で“それ”とわかる」のが理想。テレビとして最もシンプルなのは、スタンドがあり、センターにアームがあってパネルを支えている姿です。そこで「オーガニックパネル」の薄さと軽さを表現するためにアームを細くしてみたのですが、どうも新鮮味がありません。センターにアームがある限り、テレビやモニターの見慣れたシルエットになってしまい、既存のアイコンから逃れることはできないんです。そう悟り、思い切ってアームを片側に寄せることにしました。

アームをオフセットさせるデザインは、実は以前から試みたいアイデアのひとつでした。ヒントは、建築やインテリア。空間なら柱を左右非対称にする。椅子なら脚を片持ちにする。バランスを崩すことで、新しい驚きや美しさが生まれることがありますよね。それを自分のデザインにも応用してみたかったんです。

美しいオブジェへの「引き算」

Organic Light Emitting Diode TV:XEL-1

横田: 視聴時に画質の美しさを引き立てるデザインであるのはもちろんのこと、電源OFF時、どの角度から見ても美しいオブジェになるよう配慮しました。「オーガニックパネル」は電源OFF時、液晶パネルにはない独特の艶があるので、光沢のある黒をメインカラーに採用。これは画面とベゼル、本体の一体感を確保するためですが、空間が映り込むことでその場に溶け込ませる狙いもあります。また、“XEL-1”のイメージに合わせてリモコンも新規にデザインしました。せっかくスリムなテレビを楽しむのに、乾電池の入ったぶ厚いリモコンでは興ざめしてしまうでしょうから。

“XEL-1”のデザインを通じて私が自分に課したのは、過剰なデザインをせずにいかにデザインするか。いわば「引き算のデザイン」です。その代わり片持ちのアームという新しいスタイルを実現することで、これまでにないテレビのアイコンを創れたという手ごたえはあります。遠くから見ても、誰が見ても、ひと目で「あれはソニーの有機ELテレビ」とわかっていただけるような。これまでテレビのデザインというと「どこをデザインしているの?」と人に訊かれることもあったのですが、今回は明らかに個性のあるスタイルが表現でき、私としても苦労した甲斐のある仕事になりました。

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