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Life Space UX ニュース

空間そのものを活用して体験を創出する「Life Space UX」。
ソニーはさまざまな活動を通して、その体験の場を提供しています。

Life Space UX

Life Story event report : 5 ― 茶道 meets Life Space UX

[ Report ] 2015.12.03

闇から光へ、深い味から淡い味へ、低い音から高い音へ―。
先日、そんな様々なもののあわいを行き来するようなお茶会「茶道 meets Life Space UX」を体験してきました。

Life Space UXのプロダクトでしつらえた茶の湯の空間

会場は、Life Story展の一角に突如現れたお茶室。
亭主と呼ばれる茶事の主催者は、裏千家茶道准教授・SHUHALLY(しゅはりー)代表の茶人、松村宗亮さん。
茶の湯の空間をLife Space UXのプロダクトでしつらえ、茶道と音・光・映像が交錯する、未来的なお茶会が実現しました。

お客さんは普段からお茶をたしなむ方や、茶道初体験の方など、10名。
私、ライターの宮越も、まったく新しい体験に驚かされました。
ちょっと大袈裟かもしれないですが、お茶室が本当に日常から隔絶された異空間のように感じられたのです。
ここでは、当日の流れに沿って「茶道 meets Life Space UX」の模様をお伝えしていきたいと思います。

現代の技術と茶道が織りなす「もてなし」と「しつらえ」

お茶室

当日会場へ行くと、待合いスペースにお客さんが集まり、寛いでいらっしゃいました。
会場の奥へ目をやると、この日のためにつくられたお茶室が完成しており、何やらいつもと雰囲気が違うようです。
キャビネットのような4K超短焦点プロジェクターの前には正方形の畳、四方には、ガラス管を振動させて360°に音と光を届けるシンフォニックライトスピーカー、天井の真ん中にはLED電球スピーカー。
いつもの展示室に、まるで結界が張られたような緊張感が漂っていてびっくり・・。

開始時刻になると、スピーカーからボーンという銅鑼(どら)の音や金属が響くような音が聴こえはじめ、さらに神秘的な空気に包まれていきました。
案内が始まり、シンフォニックライトスピーカーをもったお客さんが先頭に立ち、一列になって歩いていくと、茶室の側に、やはりシンフォニックライトスピーカーをもった松村さんが立っています。
ここで、双方のライトの交換が行われました。

ライトの交換

何だか儀式のような、おごそかな雰囲気!でも、堅苦しい感じではありません。むしろ、これから何が起きるんだろうとドキドキしてきました。

畳の周りに全員集まったところで、松村さんからご挨拶。

松村 本日はようこそおいでくださいました。松村宗亮と申します。私は大学生の頃にヨーロッパを放浪し、日本人でありながら日本文化を知らないことに気づかされまして、帰国後に京都の裏千家の学校に入り、茶道を始めました。それまでは茶道というと敷居が高いイメージがあったのですが、いざ勉強してみると、千利休さんをはじめとするお茶人たちが、それまでの意識を180°変えるほど革新的な活動をしていたことがわかり、本当に面白いと思いました。ですから、今日はLife Space UXのある空間でお茶会をさせて頂くんですけれども、こういった最先端の機器を使ったお茶会というものも、本来のお茶のかたちに近いのではないかと感じております。というわけで、今日はあえてクラシックなテーマで、本来のお茶の様式にのっとって進めて参りたいと思います。

続いて「趣向」と呼ばれるお茶会のテーマが明かされます。

松村 本日のテーマは「陰陽五行」でございます。陰陽五行というのは、陰の気・陽の気の交わりと木火土金水(もっかどごんすい)※1の要素が絡みあうことによって宇宙が生成され、流転していくという東洋思想です。お茶の世界には、この陰陽五行が多分に入っています。たとえば、先ほど亭主とお客様で光の交換(※2)をさせていただきましたが、あれもお茶の様式を踏襲したものでして、光を交わすことによってお客様の陰の気と亭主の陽の気を交換させるという作業なんです。また、音にも陰陽があります。たとえば銅鑼の音であれば陰の音、短くて高い喚鐘(かんしょう)の音は陽の音、などといった決まりがあるんですね。今日は音楽家のカンガルー鈴木さんに陰陽に基づいた音楽をつくって頂きましたので、それを流しながらお茶会を進めていきたいと思います。

五行棚

じつはこの日のレイアウトは、すべて陰陽五行にのっとって配置されていました。
まず、畳と五行棚と呼ばれる茶道具を収める棚は、亭主が北を向いてお茶をたてられるよう、北向きにセット。
東西南北にシンフォニックライトスピーカー、天井の真ん中にLED電球スピーカーを設置。各スピーカーから方位に応じた五行の音を流し、茶室に五行の音が降りそそいで宇宙を構成するというしつらえになっていました。

会場に漂っていた緊張感は、こうしたしつらえから生まれたものだったんですね。
陰陽五行ってすごい・・!とひたすら感動。

全員が席につくと、懐紙にのせられたお菓子が配られます。
お菓子を用意して下さったのは、和菓子作家の坂本紫穂さん。

坂本 今日のお菓子の名(めい)は「白秋」といいます。秋は木火土金水の金に当たる季節でして、象徴される色が白なんです。そこで、私なりの秋のイメージを真っ白なお菓子にしてみました。どうぞお召し上がりください。

白秋

こちらのお菓子、光があたることによって、その日の月の形が浮かび上がるようになっていました。何とも風流です。そして、とても上品な甘さ。

お菓子を食べ終わる頃、松村さんが五行棚の中に置かれた釜から柄杓でお湯をすくい、茶碗を清め始めました。
お茶会の前半では、亭主が濃茶(※3)と呼ばれる抹茶を練ります。

抹茶を練る様子

松村さんが集中して抹茶を練り始めると、茶筅(ちゃせん)が椀に触れる音とスピーカーから聴こえてくる音だけが響き、時を忘れるような感覚に陥っていきました。

この時、ポータブル超短焦点プロジェクターは松村さんの手元の映像を壁に映し出し、普段は間近で見ることができない手元の様子が見えるようになっていました。

ポータブル超短焦点プロジェクターが手元の映像を映している様子。また、今回は「他社比社」という映像ユニットの方が金さんの作品をモチーフにして映像を制作し、その映像をポータブル超短焦点プロジェクターで畳の上に投影していました。

濃茶は、一つの茶椀をみんなでまわし飲みします。お客さんが大きな碗を傾け、一口頂くと「お味はいかがですか?」と松村さん。するとお客さんは一言、「濃いです(笑)」。
お茶会というと「結構なお点前(てまえ)で」などと言わなくてはいけないのでは、と緊張していたのですが、少し安心。
みなさん「甘みがありますね!」「クリームのよう」などなど、自由に感想を述べていました。

ここで松村さんは、金理有(きむりゆう)さんという陶芸家の方を紹介。
じつは会場に入った時から気になっていたのですが、4K超短焦点プロジェクターの上に兜のような形の花入れが置かれていました。こちらを手がけたのが、金さん。

金理有さんによる花入れ。力強い存在感!

金さんは自身の作品における「虚」と「実」について語ってくださいました。

※1 木火土金水(もっかどごんすい):中国古来の自然観における木・火・土・金・水の5要素。五行説は、この要素によって自然と人事のいっさいを解釈しようとする思想のこと。
※2 光の交換:夜噺(冬の夜に開かれるお茶会)では、正客が手燭(燭台)をもって足元を照らして連客を導きながら進み、迎付に出てきた亭主と正客が手燭を交換し挨拶に代えるという場面がある。
※3 濃茶(こいちゃ):多量の抹茶を少量の湯で練る、どろりとした茶のこと。もともとお茶の世界では、お茶といえば濃茶のことを指していた。

うつろい、明けてゆく時間

薄茶(うすちゃ)の時間

濃茶の後は、薄茶(うすちゃ)と呼ばれるお茶の時間です。
松村さんによると、濃茶は亭主が集中して静かに練るのに対し、薄茶は話しながらたてても良いとのこと。
前半と比べ、明るくくだけた感じで楽しむ時間帯なのだそうです。

また後半に入ってからは4K超短焦点プロジェクターが世界の街や自然の映像を映し出していました。
まるで大きく開かれた窓から、夜明けや夕暮れの景色を眺めているよう。
陰陽は、陰から陽へ、陽から陰へと変化していくものなんです。なので、今日は映像で日のうつろいをお楽しみ頂けたら」と松村さん。
こうした時空間を行き来するような仕掛けも、宇宙的な空間をつくることを手伝っていました。

4K超短焦点プロジェクターによる映像

薄茶の時には、干菓子が出されます。今度は「エレメント」という名の、五行の色に合わせてつくられたお菓子。

エレメント

薄茶が入ると、今度はお客さん一人に一つずつ、茶碗が配られました。
手渡されたのは、底に兎が描かれた椀や、お尻の形の椀など、風変わりなお茶碗たち。
茶道具の説明を聞くのも楽しいです。

それから、茶の湯における陰陽五行の話も。
昔の人たちが陰陽五行を日常に取り入れ、宇宙の流れを感じながら生活していたというのは、驚きに値する話でした。

茶道具たち

あっという間に時間がたち、終了の時刻になりました。
最後に、松村さんとソニーTS事業準備室の戸村朝子さんから、ひとこと。

松村 茶道の体験というものは、亭主とお客様が共有している時間の中にしかないものです。たとえば利休さんのお茶会がどんな空気感だったのか、利休さんがどんなお点前だったのかということは、その時代、その瞬間に消えてしまうものなんですよね。そういった意味では、茶道もある種、UX(User experience=ユーザー体験)なのではないかと思いました。今日は短い時間ではございましたが、皆様とご一緒できて楽しかったです。ありがとうございました。

戸村 みなさん、いかがでしたでしょうか。私たちは、空間のしつらえをそのまま生かし、新しい体験を創出するLife Space UXというコンセプトを元に活動しています。今日はお茶室が時空を超えるような体験をみなさまとご一緒でき、とても嬉しく思いました。私たちはこれからも、究極の居心地の良さについて考えながら、みなさまに新しい体験をご提案していきたいと思っております。ありがとうございました。

終了後は茶道具を手にとり、ゆっくり見せて頂きました。本来のお茶会では、お客さんに茶道具を見て頂く「拝見」という時間もあるのだそう。松村さんへさまざまな質問が寄せられ、話が尽きませんでした。

拝見の様子
ポータブル超短焦点プロジェクターで映像ユニット「他社比社」による映像を投影している様子。これも、畳の上に光と闇を配するという陰陽五行にまつわるしつらえの一つ。

松村さんは、日々伝統文化に関わる人として“何を守り、何を変えていくのか”ということを自問自答しているのだそう。
400年前に革新的な茶道を実践していた利休さんも、そうやって新しいことに挑戦し続けていたのかもしれません。
Life Space UXのコンセプトも、日常空間に新しい体験を創出するというもの。冒頭で松村さんが「最先端の機器を使ったお茶会も本来のお茶のかたちに近いのでは」とおっしゃっていましたが、そのことを証明するようなお茶会でした。

Life Story展を舞台に展開してきたイベントも、この日が最後。
伝統と最先端の技術が融合した「もてなし」と「しつらえ」が実現し、最後に相応しいイベントだったように思いました。

Life Space UXでは、これからも新しい体験をお届けする予定です。
ぜひ、Facebookホームページから最新情報のチェックを!

茶道 meets Life Space UX

開催日 2015年10月29日(木)

ゲスト

松村宗亮(茶人・裏千家茶道准教授、SHUHALLY代表)

音楽

カンガルー鈴木

和菓子

坂本紫穂

茶器と映像

金理有(陶芸)、他社比社(映像)

企画/運営

VOLOCITEE Inc.