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Life Space UX ニュース

空間そのものを活用して体験を創出する「Life Space UX」。
ソニーはさまざまな活動を通して、その体験の場を提供しています。

Life Space UX

テクノロジーと心地よさが共存する空間とは?

アルフレックスショップ東京にてポータブル超短焦点プロジェクターとグラスサウンドスピーカーの発売記念イベントを開催

[ Report ] 2016.03.01
グラスサウンドスピーカー

気のおけない人たちと集うひと時、光のうつろい、心地の良いしつらえ――これまでの家電は、そうした調和のとれた空間に違和感を生み出してきたのではないか?そんな問いかけからはじまり、空間そのものを生かすさまざまなプロダクトを発表してきたLife Space UX。2016年2月、新たににポータブル超短焦点プロジェクターとグラスサウンドスピーカーが発売され、発売記念イベントが開催されました。

会場は"上質な快適"を提案するライフスタイルファニチャーブランド「アルフレックス」のアルフレックスショップ東京(渋谷区・恵比寿)。

会場の様子:ベッドルーム
会場の様子:リビング

広い店内には、ダイニングやリビング、書斎、ベッドルームなどといったさまざまな生活のシーンが展開し“人に寄り添う”ことを追求された家具が並んでいます。その空間のいたるところにLife Space UXコンセプトのプロダクトが置かれ、鮮やかな映像や透き通るような音色、温かい光を添えていました。それらのプロダクトが、まるであつらえたように空間に溶け込んでいたことには、驚かされました。

窓の映像を壁に投写しているポータブル超短焦点プロジェクター。まるでそこに、本当に窓があるようです。コンパクトなボディに小型の超短焦点レンズを搭載し、ぽんと置くだけで22インチから最大80インチの映像を映し出せます。本体は、電源ボタン以外をすべて排除した、シンプルなデザイン。
柔らかい光を灯していたグラスサウンドスピーカー。置いてあるだけなら、誰もスピーカーと気づかないはず。有機ガラス管を震わせ、透き通るような音色で空間を満たします。その音の臨場感は、まるで誰かが目の前で歌っていると錯覚するほど。

当日は、アクシス取締役/多摩美術大学情報デザイン学科教授の宮崎光弘さん、takram design engineering代表の田川欣哉さん、ジャーナリスト/コンサルタントの林信行さんによるトークや、新製品のデモンストレーションなども行われました。ここでは、ライターの宮越が当日のレポートをお届けしていきたいと思います。

“あの風景を、この場所に”をコンセプトとする風景プラットフォーム「LandSkip」の美しい景色を映していた4K超短焦点プロジェクター。圧倒的な没入感が新しい映像体験へと誘います。

家電って違和感を感じませんか?――きっかけは、ひとつの問いかけ

アルフレックスショップ東京
会場に集まるお客様 会場に集まるお客様

会場にデザイナーやテクノロジスト、クリエイター、プレスの方などが集まり賑わってきたなか、新商品発売記念イベントが始まりました。まずはじめに、ソニー・TS事業準備室の斉藤博さんよりご挨拶。

ソニー 斉藤博さん

斉藤さんは挨拶の言葉を述べた後、会場へ向かってこう問いかけました。

斉藤 ここで皆さんにお伺いしたいのですが、家電ってどこか違和感を感じませんか?

少々唐突な、家電の前提を覆すような質問!Life Space UXチームの考える家電の違和感とは、家電にあわせて自らが移動しなければならないなどの目に見えない多くの制約や、見た目が空間に馴染んでいないといった、家電と人との間に距離感を感じることなのだとか。

Life Space UXのコンセプトは、この「家電って違和感を感じませんか?」という問いをきっかけにディスカッションを重ねるなかから生まれてきたのだといいます。

斉藤 議論を重ねていくうちに、家電の違和感を払拭するには、従来の家電を改善するというアプローチだけでは難しいということに気づきました。そこで私たちは、もともとある空間に人が求めている映像や音や光をどう配置していくか、どう馴染ませていくかというアプローチでいった方が、より自然で新しい体験を生み出せるのではないかと考えました。そこからLife Space UXのコンセプトが形づくられていったのです。

“空間そのものを生かす”というアプローチは、いかに自然に映像や音や光を体験するか、ということへの挑戦から始まったものだったんですね。

続いて、ソニー・TS事業準備室の谷村秀樹さんから新商品の説明と、会場協力いただいたアルフレックスさん、バレンタインイベントにLife Space UXのプロダクトを活用いただいた星野リゾート軽井沢ホテルブレストンコートさんなど、パートナー企業の紹介が。

会場はゲストで満員。関心度の高い方が多く、実際にプロダクトにふれて試している方もたくさん見られました。
こちらのチーズタルトは“お菓子のスタートアップカンパニー”BAKEさんのもの。当日、会場に届けてくださいました。4月には“お菓子に新しい価値を”を切り口にしたLife Space UXチームとのコラボレーションイベントを予定しているそうです!

スピーチの後は、グラスサウンドスピーカーのデモンストレーションが行われました。
会場のあちこちに置かれた6台のグラスサウンドスピーカーから虫の声やチェロの音色が聞こえてくると、辺りがざわざわしていたのにも関わらず、会場の隅々にまでクリアな音が聞こえてきました。

グラスサウンドスピーカー

音色が響きわたる秘密は「バーティカルドライブ技術」というスピーカーの駆動方法にあるのだとか。
このことについては、この後に行われた設計開発担当者によるトークのなかでも語られました。

トークセッション1:Life Space UXのタスクに技術でこたえる

トークセッションの様子

この後、アクシス取締役/多摩美術大学情報デザイン学科教授の宮崎光弘さんをファシリテーターに迎え、ポータブル超短焦点プロジェクターの設計開発担当者・松田幹憲さんとグラスサウンドスピーカーの設計開発担当者・鈴木伸和さんによるトークが行われました。

宮崎光弘さん アートディレクター/株式会社アクシス取締役/多摩美術大学情報デザイン学科教授。デザイン誌「AXIS」のアートディレクションの他、同社のデザイン部門を統括するディレクターとして、様々な企業と組織のブランディングやデザイン開発を行う。多摩美大では「感情や感覚に働きかけるデザイン」の研究と指導を行っている。最近の主な仕事に、21_21DESIGN SIGHT 企画展「コメ展」企画、国連防災世界会議の公式ブック制作など。NPO団体「Think the Earth」理事。

もともと光デバイスの開発に関わっていたという松田さん。新規事業の取り組みの一つとして小型プロジェクターの投写モジュールを開発してきました。松田さんは、お客さんが“自分の好きな場所で新しい映像体験をする”というコンセプトに応え、従来の小型プロジェクターの使い方を変えたいという思いで技術開発を行ってきたと語ります。

ポータブル超短焦点プロジェクターの設計開発担当者・松田幹憲さん

松田 光源にレーザーを用い、ソニーが培ってきた光学技術を組み合わせることで、超短焦点で映像を映すということに挑戦してきました。こだわったのは、画質の良さ、約8cm幅というコンパクトサイズ、そしてシンプルなデザインと操作感です。たとえばこのプロジェクターには、ボタンが電源ボタンひとつしかありません。フォーカスを合わせるにしても、壁際やテーブルの上にぽんと置くだけで、自動的にピントが合う。また、スマートフォンを主体とした操作感にこだわることにより、専用アプリからワイヤレス操作できるなど、従来の小型プロジェクターの使い方を変えるという目標を実現できたと思います。

ポータブル超短焦点プロジェクターを身近な存在として、壁投写やテーブル投写をぜひ体験いただき、家の中の好きな空間で新しい映像と音を楽しんでいただければ、私たち設計者としても嬉しいです。

ポータブル超短焦点プロジェクターによるテーブル投写

一方鈴木さんは、以前、グラスサウンドスピーカーの前身ともいえるスピーカーの開発を行っていました。

グラスサウンドスピーカーの設計開発担当者・鈴木伸和さん

鈴木 今から10年ほど前に“音の噴水”をイメージしたサウンティーナというスピーカーを開発しました。それは、1メートルぐらいある筒状の有機ガラスが振動することで360°全方向に音が広がるというものでした。その後、Life Space UXのコンセプトと出会い、より多くのお客さんにその体験を届けたいと思ったことから、サウンティーナをワインボトルほどのサイズにまで小さくすることに挑戦し、完成したのがグラスサウンドスピーカーです。

一番こだわったのは、透明な有機ガラス管に音像が浮かび上がり、そこから360度に拡がる透明感のある音づくりですね。“バーティカルドライブ技術”という駆動方法を採用したことにより、音の出る方向に対して垂直に振動を加えて音波を発生させ、有機ガラス面全体に隅々まで振動が伝わり、離れた距離でも音の減衰が少なく、全方向にクリアな音を広げることができます。

鈴木さんはもともとインテリアに興味があり、「インテリアのオブジェから音がならせたら」と考えていたときに“音の噴水”のようなイメージを想起したのだとか。そんなクリエイティブな発想で設計開発が行われているとは、驚きでした。

グラスサウンドスピーカー

トークセッション2:Less is more――ものがない方が幸せな時代

続いて、前半に引き続き宮崎さんがファシリテーターを務め、takram design engineering代表の田川欣哉さん、ジャーナリスト/コンサルタントの林信行さんと共に「音と光と空間の可能性と、体験のデザイン」というテーマでトークセッションを行いました。

田川欣哉さん デザインエンジニア/takram design engineering代表/英国Royal College of Art, Innovation Design Engineering客員教授。ハードウェア、ソフトウェアからインタラクティブアートまで、幅広い分野に精通するデザインエンジニア。LEADING EDGE DESIGNを経て現職。主なプロジェクトに「RESAS -地域経済分析システム-」のプロトタイピング、NHKEテレ「ミミクリーズ」のアートディレクションなど。日本語入力機器「tagtype」はニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選定。
林 信行さん ジャーナリスト/コンサルタント。最新技術やデザインが人々のライフスタイルや社会をどう変えていくかを新聞、雑誌、テレビ、Web等で紹介。2007年からはメーカーや通信事業者向けに講演やコンサルティング活動を開始。スマートフォンなどの普及が教育や医療分野にもたらす変化について執筆や講演を行う。ベンチャー企業数社の顧問/取締役も兼任。著書は「iPadショック」、「ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した」など多数。

さまざまな角度からものを見ること・つくることに携わってきたみなさん。どんな話が聞けるんだろうとわくわくしていると、林さんから意外な言葉が飛び出しました。

林 最近“Less is more”(※)という言葉を聞きますけれど、僕自身も、ものがない方が幸せだと思うんです。僕は最近引っ越したばかりなのですが、新しい家には収納スペースがたくさんあるので、ものをすべて収納したら、ものがない状態が最高に幸せなんですよ。そういったところから“Less is more”ということが人を豊かにしてくれるという気がしていて。それから、僕は天気が良いと六本木ヒルズの屋上へ夕陽を見に行くのですが、夕陽を見るだけでも、豊かな気持ちになれる。最近は生活のなかの“豊かさ”が物質から別のものへ移行してきているという気がしています。

家電の違和感と、ものにあふれているというストレス。この二つは今、現代人の生活に浮上してきている問題なのかもしれません。

※ Less is more:建築家のミース・ファン・デル・ローエが提唱した“より少ない方がより豊かである”という考え方。近年では“持たない暮らし”を実践するミニマリストたちの座右の銘になっている。

トークセッションの様子

つくり手としてものに関わってきた田川さんは、Life Space UXの興味深い読み解き方を語ってくださいました。

田川 僕はつくり手なのでつい深読みしてしまうのですが、Life Space UXのプロダクトを見ていて、今は家電が“もの”の形を脱ぎ始めている時なのかなと思いました。どういうことかというと、デザイナーが新しいテクノロジーをデザインする時に、従来のものの形を継承するという話があるんです。たとえば車が発明された時に、デザイナーはそのテクノロジーの本質をデザインできないから、馬車の形に似せてデザインをする。家具調のテレビなんかもそうですね。ところが最近は、スマートフォンやインターネットが生活に浸透し、人ともの、人とメディアの距離感が変わり、僕らのプロダクトに対する認知がバージョンアップされている。そして、今まで僕たちは従来のものに似た形をしていないと家電の機能を理解できなかったのですが、もはやその必要がなくなってきている。

それで今は、家電が従来のものの形を脱いでいく時代になってきたのかな、と思ったんです。それと同時にテクノロジーも進化してきて、工業製品の構成要素が解体され、ぽろぽろとこぼれ落ちていっている。ただ、ハードは人やソフトにくらべ遅れをとっていて、そうした進化をまだフォローしきれていないと思うんですよ。でもここには、家電のスピリチュアルな部分が幽体離脱をして、次の依り代を見つけかけているものたちがある――という気がしました。

また、田川さんはLife Space UXの製品に表や裏がないことに気づいたといいます。

田川 家電は電源ケーブルがあるから背面にケーブルがくるとか、そういった“しょうもないこと”でデザインを決められてしまう。でも、Life Space UXの製品には背面・裏面・側面がない。こういった全方位からアプローチできる家電は、今までにあまりなかったと思います。でも、インテリアに馴染むというコンセプトをちゃんと技術に落とし込むのは大変なこと。そういうことに丁寧に取り組んでいるプロジェクトだと思いました。

林さんも「だからどこにでも置けるんですよね」と同意。
宮崎さんは「ここにある家具にも、表や裏がない。それと同じことですよね」とコメントしました。

スケッチブックにイラストを投射するポータブル超短焦点プロジェクター

その日の朝、自宅にポータブル超短焦点プロジェクターが届いたという林さんは、箱を開けた時にLife Space UXの新しさを感じたといいます。

林 箱を開けてプロジェクターの電源を入れたら、いきなり机の上に映像が投影されたんですよ。そこには、QRコードつきで“このアプリをダウンロードしてください”などといったインストラクションが書いてある。これは新しい時代の製品だなと感じました。今後は、家電にも機能性や便利さだけではなく、もっと“豊かさ”というものが重視されていってもいいと思う。Life Space UXは、20世紀の家電とは明らかに異なるプロダクト。こうした製品がもっと開発されて、僕にとっての夕陽の代わりになるようなものがつくられていくといいですね。

話は盛り上がってきましたが、あっという間にトークの終了時刻に。最後に宮崎さんがLife Space UXのデザインについて語ってくださいました。

宮崎 最近、デザインの世界では“もの”のデザインから“こと”(体験)のデザインへ、ということがよくいわれます。“もの”をつくるだけではなく“こと”をデザインすることが大切であると。でも、“こと”をデザインしていく時には、やっぱり“もの”も大切なんですね。うまくいっているデザインは“こと”をつくっている“もの”のクオリティが非常に高い。そういった“もの”と“こと”の関係をうまくデザインしているのが、Life Space UXなんだなぁと思います。今、Life Space UXからは4つの製品が出ていますけれど、毎回まったく違うタイプのものが発売されています。これからどんな新しい製品が出てくるのか、とても楽しみです。今日は貴重なお話が聞けて楽しかったです。みなさん、ありがとうございました。

イベントの様子

この後、アルフレックスジャパン社長の保科卓さん、星野リゾート 軽井沢ホテルブレストンコートの功力さんからも言葉が寄せられ、イベントは幕を閉じました。

「家電って違和感を感じませんか?」という問いかけから始まったこの日のイベント。
Life Space UXのコンセプトが、誰もが当たり前のように思っていた“違和感”について考えることから始まっていたということに驚き、登壇者のみなさんの未来を見る視点にもわくわくさせられました。
従来の“もの”の形を脱いだ家電たちはどこへ向かってゆくのでしょうか?今後の展開もますます楽しみになってきました。

ポータブル超短焦点プロジェクター
グラスサウンドスピーカー
新商品発売記念イベント

日時:2016年2月10日(水)
会場:アルフレックスショップ東京
主催:ソニー株式会社

トークセッション「ポータブル超短焦点プロジェクター、およびグラスサウンドスピーカーに関する商品説明、今後の展開、および開発ストーリー」について
登壇者(順不同、敬称略)
  • 宮崎光弘(株式会社アクシス取締役、多摩美術大学情報デザイン学科教授)
  • 松田幹憲(ポータブル超短焦点プロジェクター設計開発担当者)
  • 鈴木伸和(グラスサウンドスピーカー設計開発担当者)
トークセッション「音と光と空間の可能性と、体験のデザイン」について
登壇者(順不同、敬称略)
  • 宮崎光弘(株式会社アクシス取締役、多摩美術大学情報デザイン学科教授)
  • 田川欣哉(takram design engineering代表)
  • 林信行(フリーランスジャーナリスト、コンサルタント)
会場提供、および撮影協力

アルフレックスジャパン

コンテンツ提供協力

LandSkip