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空間そのものを活用して体験を創出する「Life Space UX」。
ソニーはさまざまな活動を通して、その体験の場を提供しています。

Life Space UX

蓮沼執太とグラスサウンドスピーカーの出会いから生まれた深淵な音楽体験

AMIT2016 丸の内アンビエント

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[ Report ] 2016.04.12
AMIT2016 丸の内アンビエント

もっと良い音で音楽を聴きたい、もっと響きを感じたい――それは、音楽を愛する人たちに共通する思いではないでしょうか。

2月28日、ワンデイ・イベント「AMIT2016」にて、音楽家の蓮沼執太さんがグラスサウンドスピーカーを用いたライブパフォーマンス「丸の内アンビエント」を行いました。それは、いろんな人の「もっと音楽を聴きたい」という思いを満たしてくれるようなパフォーマンスでした。

蓮沼執太 音楽家。蓮沼執太フィルを組織し、国内外でのコンサート公演、映画、舞台芸術、音楽プロデュースなど領域横断的表現を多数制作する。近年では、作曲という手法を様々なメディアに応用し、映像、サウンド、立体、インスタレーションを発表し、個展形式での展覧会やプロジェクトを活発に行う。主な個展に「作曲的」(2015年 国際芸術センター青森)など。2月3日にアルバム『メロディーズ』をリリース。 Photo : Takehiro Goto

「AMIT2016」は、都市とテクノロジーとアートが出会う1日限りの芸術祭。
2014年に始まり、今年で3回目を迎えます。東京・丸ビル1階のアトリウムを舞台に、最新のテクノロジーとアートの動向を、展示/トークセッション/ワークショップ/ライブなど、さまざまなアプローチで紹介していました。
ここでは、ライターの宮越が当日の模様をレポートしていきたいと思います。

音楽とアンビエンスのはざまを歩く

会場となったアトリウムは丸ビルのエントランスでもあり、1階から6階までを貫く吹き抜け空間となっています。
その広大なアトリウムにアーティストの石田尚史さん、やんツーさん、石毛健太さんなどの作品が並び、その真ん中でライブパフォーマンスが行われました。

ガラス張りの空間は、高さ・幅・奥行きがそれぞれ30m。
人通りも多く、音が分散してしまいそう……と少々心配になるほどの広さです。

アトリウム周辺には洋服屋さんが並び、休日を楽しむお客さんでにぎわっていました。
やんツー+石毛健太『カーゴ・カルト』 電動玩具や家電製品によって絵画が構成されていく "エレクトリカル・オートマティック・ライブ・ドローイング・インスタレーション "。真夜中におもちゃたちが勝手に動き出し、絵を描き始めた……といったような世界観。通行人も足を止め、興味津々で見ていました。

ライブの開始時刻が近づくにつれて、お客さんが増えてきました。人の輪のなかには点々とグラスサウンドスピーカー15台が並べられ、中央にシンセサイザーが置かれています。
上を見上げると、ホールを見下ろす2階、3階の手すりにもお客さんがぎっしり!

オーディエンスの身長を想定し、さまざまな高さに備え付けられていたグラスサウンドスピーカー。蓮沼さんが音響エンジニアの葛西敏彦さんと共にスピーカーの配置を考えました。

開始時刻の19時。熱い視線がそそがれるなか、蓮沼さんがリラックスした、飄々とした面持ちで登場。

蓮沼 こんにちは、蓮沼執太です。今日はここに並んでいるグラスサウンドスピーカーというものを使ってライブパフォーマンスをするんですけれど、このスピーカーは、有機ガラス管自体が振動し、音を出しているんですね。普通のスピーカーは前に音が迫ってくるんですけど、これは360度に音が広がり、音が上に上がっていくという感じをイメージしてもらえるといいと思います。なので、もしかすると今日は2階や3階で聴いている人の方が、空間的にいい音を聴けるかもしれません。(会場にざわめき)いや、1階の音が悪いということではないですよ(笑)。どこで聴いても自由、ということです。スピーカーからはそれぞれ違う音が聴こえてくるので、近くに寄れば固有の音が聴けるし、上に居ればミックスされた音が聴けるという感じです。

この日のライブは、オーディエンスが会場を自由に歩き回って聴けるようになっていました。
続いて蓮沼さんは、近年続けてきたプロジェクト「アンビエント・シリーズ」について説明。

蓮沼 アンビエント・シリーズというのは、ここのように普段音楽が立ち上がらない所で、空間に溶け込むようにパフォーマンスをするというプロジェクトです。こういった公共空間でパフォーマンスをすると、いろんなノイズがあります。今日は、そういったアンビエンス(周囲の環境)と一緒に楽しむ音楽もあるんだということに気づいてもらえるようなパフォーマンスになればいいなと思っています。なので、いろんな場所で聴いてもらえたらおもしろいんじゃないかな、と――では、始めたいと思います。

演奏が始まると、シンセサイザーの音や微細な電子音が、空気のように空間に広がり始めました。そしてホワイトノイズや遠くで木琴が鳴っているような音などが混ざりながら、徐々にボリュームが上がっていきます。

音響:葛西敏彦 映像:河合宏樹

ライブの途中では、蓮沼さん自身がセットを離れ、階上へ音を聴きに行くという場面も。
オーディエンスも最前列で演奏を見守る人、スピーカーに耳を近づける人、上と下を行ったり来たりする人などと、さまざまでした。

やがて、短い旅を経て、静かに日常に戻っていくかのように演奏が終了。
微細な音に耳を傾けている間に身体と頭が心地よい感覚に包まれていく感じは、何ともいえない体験でした。

演奏の様子

会場に来ていた方に話をうかがったところ、こんな感想を語ってくださいました。

僕は上で音を聴いていたのですが、終わった瞬間にふっと音が無くなり、こんなに音に包まれていたんだ、と驚きました。これがアンビエントか、と。今までにない体験ができて楽しかったです。(学生 小田さん)

蓮沼さんのインスタレーションは見たことがあったのですが、ライブは今回が初めてです。ここはとても大きなスペースなのに、親密な雰囲気が感じられて良かったです。スピーカーや木の台とも雰囲気が合っていて、とてもきれいな音でした。(アンスティチュ・フランセ東京 文化プログラム主任 サンソン・シルヴァンさん)

1階と上で聴きくらべてみたのですが、上の方が音が良かったです。Life Space UXのコンセプトは、僕が提唱しているデジタルネイチャー(コンピュータと非コンピュータリソースが親和することで再構築される新たな自然環境)の概念にも通じるところがあり、おもしろいと思いますね。(筑波大学図書館情報メディア系助手 デジタルネイチャー研究室主宰 落合陽一さん)

演奏の後、蓮沼さんにインタビューさせていただきました。次ページでは蓮沼さんのインタビューをお届けします。