平井一夫 社長 兼 CEOからのメッセージ

 2012年4月の社長 兼 CEO就任から1年、私は、ソニーの変革に向けた取り組みを着実に積み重ねてきました。そして、今、ソニーグループ全体に力強さが芽生えていることに確かな手ごたえを感じています。
 これまでに、エレクトロニクス商品の販売拠点から製造事業所、研究開発拠点、エンタテインメントや金融の事業所に至るまで、世界16ヵ国45ヵ所のさまざまなソニーグループの拠点を訪問し、数多くの社員や現地のマネジメントと意見を交わしてきました。また、できる限りの時間を使って、各国の販売店や資材調達先のパートナー会社の方々、そして私たちが一番大切にしなくてはならないエンドユーザーであるお客さまともお会いし、直接お話を伺う機会を得ました。
 多くの方々とお会いすることで、直面する課題を抽出するとともに、これまで行ってきた変革に向けた取り組みがどれだけの影響を彼らに与えたかを理解することができました。そして、ソニーグループが持つ技術やコンテンツ、サービスなどの多様な資産やノウハウを共有し、強い連携を図る“One Sony”としての取り組みが、ソニーの変革を成し遂げていく大きな力になり、ソニーはさらなる成長を実現できるという確信を得ています。
 私はこの1年の間に、ソニーを変えるために世界中の経営陣や社員とともにたゆみない努力を続け、ソニーの歴史の中で、最も多くの変化をもたらしたのではないでしょうか。これは、経営レベルで迅速に意思決定し、それらを着実に実行したことによるものだと考えています。そして、世界中の経営陣や社員一人ひとりのソニー再生に懸ける決意と情熱、また、多くのステークホルダーの皆さまの支えがあったことは言うまでもありません。その結果、2012年度(2013年3月期)の連結業績については、5期ぶりの黒字*を達成することができました。

* 当社株主に帰属する当期純利益において黒字を達成

2012年度の取り組み

平井一夫CEO スピーチ

 2012年4月に新たな経営体制を編成し、私は経営資源の最適化と事業ポートフォリオの見直しに着手しました。同時に、私が直接リーダーを務める全社横断的な変革プロジェクトを立ち上げました。私自身が直接指揮することにより、意思決定と実行の迅速化を図り、エレクトロニクス*事業の再生と成長に向けての事業基盤を構築することを狙いとしたものです。
 これに基づき、マネジメントチームは、新規事業の創出やコア事業の強化を目的とした重要な判断を下しています。CMOSイメージセンサーの生産能力拡大のための投資をはじめとして、米国を拠点にインタラクティブなクラウドゲームサービスの技術を開発・提供するGaikai Inc.の買収、オリンパス株式会社との合弁によるソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社の設立などです。ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社では、今後、革新的な外科用内視鏡などの医療機器の提供やこれまでにない医療機器・映像機器のシステムソリューション事業を展開することを計画しています。
 その一方で、事業ポートフォリオの再編や財務基盤の強化を目的として、ケミカルプロダクツ関連事業などの事業売却やニューヨーク市内の米国本社ビルなどの資産売却を実施しました。また、経営基盤の強化を図るための構造改革の一環として、先進国の販売部門などにおいてスリムで機動的な体制への移行、国内製造オペレーションの一層の効率化を目的とした生産拠点の統廃合、ならびに組織の簡素化と業務の効率化にともなう本社および間接部門の人員削減も実施しました。
 注力するエレクトロニクス事業再生に向けては、コア事業であるモバイル事業、イメージング関連事業、ゲーム事業の強化を図るとともに、テレビ事業の再建と新興国での事業拡大に努めました。

* エレクトロニクスは、イメージング・プロダクツ&ソリューション分野、ゲーム分野、モバイル・プロダクツ&コミュニケーション分野、ホームエンタテインメント&サウンド分野、デバイス分野およびメディカル事業とネットワーク事業の合計を指します。

新規事業創出・コア事業強化のための戦略的な投資と財務体質・経営体質強化のための施策

発表日 完了日 施策
2011.11.11* 2012.6.29* 米国EMI Music Publishing の買収
2012.5.24 2012.6.20 シャープ(株)との大型液晶パネルおよび液晶モジュール製造・販売事業の合弁解消
2012.6.14 2013.3.20 インドでのテレビネットワーク事業運営会社「マルチスクリーンメディア」の持分追加取得
2012.6.22 2013年度上期 積層型CMOSイメージセンサーの生産能力増強
2012.6.25 2013年内予定 パナソニック(株) と次世代有機EL パネルの共同開発の合意
2012.6.28 2012.9.28 ケミカルプロダクツ関連事業の売却
2012.7.2 2012.8.10 米国Gaikai Inc.の買収
2012.8.9 2013.1.1 ソネットエンタテインメント(株) を完全子会社化
2012.9.28 2013.2.22 オリンパス(株) との資本提携合意に基づく第三者割当(払い込み)完了
2012.9.28 2013.4.16 オリンパス(株) との業務提携合意に基づく医療事業合弁会社設立
2012.10.19 2013.3.31 製造拠点の統廃合および組織構造の最適化と事業ポートフォリオの変革にともなう人員減
2012.11.14 2012.11.30 2017年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行
2013.1.17* 2013.3.15* Sony Corporation of America本社ビルの売却
2013.2.20 2013.2.25 エムスリー(株) の株式の一部売却
2013.2.28 2013.2.28 「ソニーシティ大崎」の敷地・建物売却
2013.3.4 2013.3.7 (株)ディー・エヌ・エーの株式の売却

* 米国東部時間

 また、すでに安定的に収益に貢献しているエンタテインメントと金融の両事業においてはさらなる収益の拡大を図ることができました。エンタテインメント事業では、映画分野で「アメイジング・スパイダーマン」やジェームズ・ボンド・シリーズの最新作「007 スカイフォール」のような世界的なヒット作を数多くリリースしたことや、テレビ番組の制作事業やテレビネットワーク事業の拡大を積極的に推し進めたことが業績に貢献しました。また、音楽分野でも、2012年度に世界デビューして一躍トップアーティストの仲間入りを果たしたワン・ダイレクションなどの新たなアーティストの発掘や育成をし、世に送り出すことが、市場シェアと収益性の確保に結びついています。金融事業でも、生保や損保、銀行それぞれの事業における、顧客満足度の高い商品・サービスの提供により、金融ビジネス収入と営業利益が拡大しています。
 2012年度の連結売上高は、Sony Mobile Communications AB**(ソニーモバイル)を100%子会社として連結対象とした影響、為替の好影響、ならびに金融事業における増収分が主要エレクトロニクス製品の販売数の減少や事業売却によるマイナス影響を補ったことで、前年度比4.7%増加の6兆8,009億円となりました。
 連結営業利益は2,301億円となり、673億円の損失を計上した2011年度(2012年3月期)から大幅に改善することができましたが、これは主に資産売却にともなう利益の計上や、テレビ事業やデバイス、金融、映画の各分野における収益性の改善効果によるものです。
 こうした営業利益の改善などにけん引されて、当社株主に帰属する当期純利益は5期ぶりの黒字となる430億円となり、4,567億円の損失を計上した2011年度から大幅に改善しました。

** ソニーは2012年2月15日にTelefonaktiebolaget LM Ericsson(エリクソン)が保有していたSony Ericsson Mobile Communications AB(ソニー・エリクソン)の持分50%を取得し、ソニー・エリクソンをソニーの100%子会社にしました。これにともない、社名をソニーモバイルコミュニケーションズに変更しています。

連結業績

次なるステップ

平井一夫CEO スピーチ

 2012年度の連結業績につきましては純損益の黒字化を達成することができた一方で、エレクトロニクス事業の営業損益の黒字化は残念ながら未達成となりました。私たちは2013年度(2014年3月期)も引き続き積極的な施策を実行しソニーの変革を推し進め、エレクトロニクス事業の真の復活を実現し、ソニーの成長を確固たるものにする決意です。
 2013年5月22日開催の経営方針説明会において、私は、「エレクトロニクス事業の強化」、「エンタテインメント・金融事業の収益力の一層の強化」、「継続的な財務体質の強化」を2013年度の3つのソニーグループ基本方針として発表しました。

2013年度の基本方針

エレクトロニクス事業の強化

  • ● 3つのコア事業(モバイル、イメージング関連、ゲーム)の変革を加速
  • ● テレビ事業の黒字化
  • ● グループの総合力を生かした新興国での成長戦略を加速
  • ● 持続的な成長のための新規ビジネス(メディカル、セキュリティなど)の強化
  • ● 事業ポートフォリオのさらなる見直し
エンタテインメント・金融事業の収益力の一層の強化
継続的な財務体質の強化

エレクトロニクス事業の強化

 エレクトロニクス事業の強化に向けては、ソニーのモバイル、イメージング関連、ゲームの3つの重点事業領域に注力するとともに、テレビ事業の黒字化をめざします。

  • モバイル事業

     モバイル事業領域を構成するスマートフォンおよびタブレットの事業は、今後も市場の継続的な成長が見込まれています。ソニーが誇るユニークかつ最先端の技術や顧客体験を取り入れた商品の開発を加速し、タイムリーに市場投入することで、事業の拡大と収益性の向上を図っていきます。高い評価を得ることができたスマートフォン・Xperia™ Zやタブレット・Xperia™ Tablet Zを足がかりに、世界各国の主要オペレーターとの関係強化と販売網の拡大を図ることにより、主要なモバイル市場で確固たるポジションを確保していきます。
     また、PC事業についてはまずは収益を重視し、2013年度に黒字化することを目標とします。
  • イメージング関連事業

     イメージング関連事業には、プロフェッショナル向けとコンスーマー向けの製品および、最先端技術で市場をリードするイメージセンサー事業が含まれます。
     イメージセンサー事業においては、プロフェッショナル、コンスーマー双方の製品に向けて機能を差異化できる新たなセンサー技術の開発と事業化を進め、また、引き続き設備投資を行うことで今後の大きな需要に応えていきます。
     プロフェッショナル向けデジタルイメージング事業では、4K対応カメラを注力領域に据えて、高い市場シェアを確保している業務用カメラのラインアップを引き続き強化していきます。また、社内リソースの再分配を行い、セキュリティやスポーツ、メディカルといった領域において、ソニーが持つデジタルイメージング技術を拡大することで、さらなる成長をめざします。
     コンスーマー向けの領域では、急激に変化する事業環境の影響を受け市場が縮小している一面もありますが、ソニーは付加価値の高いデジタルスチルカメラの販売拡大を推進しています。2012年度は、新開発の35mmフルサイズのCMOSイメージセンサー・Exmor™を世界で初めてデジタルスチルカメラに搭載したサイバーショット™ DSC-RX1が、数多くの賞を受けました。この実績を足がかりに、今後もソニーが誇る最先端のイメージセンサー技術力を活用し、小型軽量化などを追求した高付加価値商品へのシフトを進めていきます。
  • ゲーム事業

     発売7年目を迎えた「プレイステーション 3(PS3®)」については、ハードウエア、ソフトウエアともに安定した売上を堅持し、確実に利益貢献をする事業として引き続き強化していきます。特に、ネットワークを通じたデジタルコンテンツやサービスの売上は、昨年、「PlayStation®Store」を刷新した効果に加え、定額制サービスパッケージである「PlayStation®Plus」の内容を充実させたこともあり、着実に増加しています。
     「PlayStation®Vita(プレイステーション ヴィータ)」については、ハードウエアの販売施策と強力なタイトルの導入によって売上と利益の確保に努めていきます。
     2013年の年末商戦から発売を予定している次世代プラットフォーム「プレイステーション 4(PS4™)」では、専用機ならではの質の高いゲーム体験をお届けします。昨年買収した米国Gaikai Inc.が持つクラウド技術を活用したストリーミングでのゲームの提供により、ユーザーが多様なデバイスで「プレイステーション」を楽しむことができる環境を2014年より提供し、さらなる事業機会の拡大に取り組んでいきます。
  • テレビ事業

     2012年度は、テレビ事業を黒字化させるという2013年度の目標に向けて大きく進展しました。引き続きコスト削減施策を実施するとともに、2013年度は、販売台数を拡大するために、より一層の商品力の強化と、付加価値の向上を図ります。具体的には、独自の4K対応超解像エンジン・4K X-Reality™ PROや広色域を実現するトリルミナス™ ディスプレイの搭載により4K対応液晶テレビやフルハイビジョン液晶テレビの画質や音質の向上を図り、ラインアップを強化していきます。
     また、今後も市場の成長が見込まれる新興国地域に向けては、現地のニーズに合わせた商品を投入する方針です。これらの商品力強化の施策を通じた販売の拡大とともに、引き続き固定費やオペレーションコストの削減を進めることで、テレビ事業における黒字化の達成をめざします。
  • メディカル事業

     中長期的に成長が見込まれるメディカル事業については、オリンパス株式会社との合弁会社であるソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社を2013年4月に設立しました。さらに、ライフエレクトロニクス事業や医療用キーデバイス事業の強化と育成にも取り組む方針です。ソニーでは、メディカル事業をコア事業に成長させることをめざし、2020年度(2021年3月期)における年間売上高2,000億円規模を目標として掲げています。

エンタテインメント・金融事業の収益力の一層の強化

 エンタテインメント事業の映画分野においては、ソニーは世界中での人気が高まることが期待される多様なジャンルの映画やテレビ番組の制作や買付に注力しています。また、テレビネットワーク事業については、インドなどの成長著しい市場を中心にさらなる拡大に努めていきます。さらには、既存の配信ビジネスを最大限活用しつつ、新しいデジタル配信ビジネスの展開も追求しています。
 レコード音楽事業と音楽出版事業を展開する音楽分野においては、新たなアーティストを育成して世に送り出すとともに、有力な音楽配信プラットフォームへの楽曲提供などの新たな事業機会を追求することにより、市場シェアの拡大とさらなる成長の実現に努めます。
 音楽出版事業では、合弁会社のSony/ATV Music Publishing(Sony/ATV)が、2012年6月にソニーが投資家グループと共同で買収したEMI Music Publishingが持つ世界トップクラスの音楽カタログの管理を開始しています。現在200万を超える楽曲の著作権を管理するSony/ATVは、世界最大の音楽出版社となりましたが、さらに効率的で創造性に富んだ経営を行うことで、業界トップの地位を強化するとともに安定した収益を生むと考えています。
 金融事業については、引き続きお客さまに安心してご利用いただける質の高い商品・サービスを提供することにより、高い顧客満足度を維持し、安定的な成長をめざします。

継続的な財務体質の強化

 これまでに述べた施策を一つ一つ着実に実行していくことにより、2012年4月に設定した経営数値目標を達成できると、私は考えています。2014年度(2015年3月期)の経営数値目標については、グループ連結で売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE10%をめざしています。エレクトロニクス事業においては、売上高6兆円、営業利益率5%の達成をめざします。

2014年度の経営数値目標

グループ連結
売上高 8兆5,000億円
営業利益率 5%以上
ROE 10%
エレクトロニクス事業
売上高 6兆円
営業利益率 5%

持続的な成長を実現させるために

 私たちが誇りを持って製品やサービス、コンテンツに冠するS・O・N・Yの四文字は、大切なお客さまに対して、その期待を超えた価値をお届けするというたゆまぬ努力を象徴するものであり、これまで世界に先駆けて魅力ある製品やサービスを生み出すことにチャレンジし続けてきたソニースピリットを象徴するものです。
 このお約束は、お客さまに加えて、株主の皆さまや、お取引先や地域社会の方々、またグループ社員を含めたすべてのステークホルダーの皆さまに対しても向けられており、私たちは健全かつ責任ある事業の遂行によって、継続的にソニーグループの企業価値の向上を図っていきます。企業市民としての責任を果たすことは、事業活動の成功を支える基盤であり、私たちが事業を営む地域社会にとって直接的にも間接的にも影響を及ぼすためです。
 ソニーはこの地域社会への影響をよく認識して、社会課題や環境課題への対応や、地域社会への貢献活動を行っています。そして、これらの活動を通して、誠実な事業運営とグループ全体で取り組むCSR(企業の社会的責任)ロードマップの実現をめざしていきます。
 CEOとしての私の役割は、ソニーグループ各社が持つユニークな可能性や、世界のソニーグループ社員一人ひとりが持つ情熱と、創業以来脈々と受け継がれてきた新しい価値創造への挑戦の意志と行動といったソニーのDNAを充分に引き出して、ソニーグループ全体の資産として可能性を高めていくことです。ソニーのDNAを受け継ぎ、多様な才能とバックグラウンドを持つ社員こそが、ソニーの成功を持続させるカギです。この多様性を尊重し合うソニーの企業文化をさらに深めていきたいと考えています。
 ソニーは2012年度、再生に向けて大きく前進しましたが、エレクトロニクス事業の黒字回復という最重要課題は残されています。しかし、現在進めている大胆な戦略に沿って、同じ危機感と変革の意識を共有する世界中の経営陣や社員と心を一つにして課題に取り組む限り、お客さまの期待を上回る魅力的な製品やサービス、コンテンツを生み出せると確信しています。そして、このソニーの結束力こそが、世界中の人々の好奇心を刺激し感動をもたらすというソニーのミッションを実現させ、時代の先駆者たるソニーの真の復活に向けた力強い歩みになっていくと確信しています。
 ソニーの経営陣と社員を代表し、株主とステークホルダーの皆さまの変わらぬご支援を心よりお願い申し上げます。

平井一夫

2013年6月20日
代表執行役 社長 兼 CEO
平井 一夫
平井 一夫